電子プラットフォーム共通化がもたらすユーザーメリットとは何か

ホンダ、日産自動車、三菱自動車の3社が、次世代SDV(Software Defined Vehicle:ソフトウェア・デファインド・ビークル)時代を見据え、車両制御を担う電子プラットフォームの共通化に向けた協業を進めていることが明らかになった。

ホンダ Super-One

対象となるのは車載ECU(電子制御ユニット)を中心とした次世代アーキテクチャで、将来的にはソフトウェア基盤まで含めた協業へ発展する可能性もあるとみられている。

これは単なる部品の共通化ではない。クルマの性能や機能をソフトウェアによって進化させるSDV時代に向け、「クルマの頭脳」ともいえる電子プラットフォームを共同で整備しようという取り組みである。

SDV時代は「ハード」から「ソフト」へ

従来の自動車は、エンジンやブレーキ、エアコンなどの機能ごとに個別のECUを搭載する分散制御が一般的だった。しかし、ADAS(先進運転支援システム)やコネクテッドサービス、OTA(Over The Air)アップデートなどを前提とするSDVでは、より高性能なコンピューターが車両全体を統合制御するアーキテクチャへの移行が進んでいる。

ホンダ プレリュード

こうした電子プラットフォームは、車両開発コストだけでなく、ソフトウェア開発や継続的なアップデートにも大きく関わる重要技術だ。メーカー各社にとって競争力を左右する分野であり、単独で開発を続ける負担は年々大きくなっている。

そこでホンダ、日産、三菱の3社は、電子プラットフォームの標準化を進めることで開発効率を高め、SDV時代への対応力を強化しようとしている。

狙いはコスト削減だけではない

ホンダ・パスポート

電子プラットフォームを共通化する最大のメリットは、開発費や調達コストを抑えられる点にある。しかし、その効果はそれだけではない。

共通基盤を採用することでソフトウェア開発を効率化し、新機能の追加やアップデートを迅速に行なえるようになるほか、品質向上やサイバーセキュリティ対策の強化も期待できる。

特に現在は、BYDをはじめとする中国メーカーやテスラが、ソフトウェアを武器に急速な進化を続けている。こうしたライバルに対抗するには、ハードウェアだけでなくソフトウェア開発のスピードを高めることが不可欠であり、日本メーカーも新たな開発体制への転換を迫られている。

経営統合はなくても協業は深化

ホンダと日産は一時、経営統合に向けた協議を行なったものの、最終的には実現しなかった。しかしその後も電動化や知能化技術を中心とした協業は継続しており、三菱自動車も加えた技術連携は着実に広がっている。

今回の取り組みも、企業統合ではなく、それぞれのブランドや商品開発の独立性を維持しながら、共通化できる領域では積極的に協力するという「実利重視」の戦略の一環といえる。

また、電子プラットフォームの共通化に続き、将来的にはSDV向けソフトウェアや車載OSの協業へ発展する可能性も指摘されており、日本メーカーの開発体制は新たな段階へ進む可能性がある。

現在のところ、標準化された電子プラットフォームを採用する市販車の具体的な投入時期は正式発表されていない。ただし、一部では2029年頃以降の実用化を見込む見方もある。

SDV時代では、車両性能は購入時だけで決まるものではなく、ソフトウェアのアップデートによって進化し続けることが前提となる。そうなれば、自動車メーカーに求められる競争力も、エンジンやシャシーだけでなく、ソフトウェア開発力や電子アーキテクチャへと大きくシフトしていくことになる。

ホンダ、日産、三菱が進める電子プラットフォームの共通化は、単なるコスト削減策ではない。日本メーカーがSDV時代を勝ち抜くための基盤づくりであり、「クルマの頭脳」を巡る競争は、今後ますます激しくなっていきそうだ。