忘れもしない高校一年、16歳の冬。
あるとき友人が「いいモノ見せてやるから来いよ」と待ち合わせの場所に行くと、アンダーパスの向こうからビーン、ビーンとセミが鳴くような甲高い音が近づいてくる。壁に共鳴する2ストの乾いたサウンドと目に染みる白煙と焼けたオイルの匂い。ノーヘルに長髪をなびかせながらニッと笑った彼の得意げな顔が今でも忘れられない。それがホンダ・MB50との運命的な出会いだった。
MB50はホンダ初の2ストスポーツバイクとして一世を風靡したマシン。同時代のホンダの4スト、CB50に対して車重で5kg 軽く、最高出力で0.7ps勝るなど、軽量&ハイパワーな2ストマシンの強みをいかんなく発揮した。また先行したヤマハ・RD50やスズキ・RG50が昔ながらのスタイルだったのに対し、MB50は尖がったフォルムにセパレートハンドルそして軽量バックボーンフレームをいち早く取り入れ時代を先取りしていた。
話しを戻すとその後、友人から譲ってもらったMB50が佐川少年初のマイバイクになった。
原チャリといっても今とは時代が違う。当時はノーヘル(ヘルメットを被らないノーヘルメットの略)OKだし、最高速はメーター読みで90km/hに達したほど高性能。涙がチョチョ切れながら根性でアクセルを開け続ける緊張感は、あの頃の自分にとってCBR1000RRR並みだった。ピストンの大きさなんてエスプレッソカップぐらいしかないのに、少しの燃料で日本一周だってできてしまう原チャリは偉大だと思う。あれから45年。ずっと自分の人生に寄り添ってきたバイクの原点がMB50なのだ。

ケニー佐川
国内外で活躍するモータージャーナリスト。モトチャンプではメインテスターを担当。原付からスーパースポーツまでジャンルを問わず精通している。株式会社モト・マニアックス代表取締役、ライディングアカデミー東京校長。
1979年登場のホンダMB50はどんなバイクだった?

1979年に登場したホンダMB50は、ホンダ初の2サイクル50ccロードスポーツ車。新設計の空冷2スト単気筒エンジンは最高出力7.0ps/9000rpmを発揮。1軸1次バランサーを採用して2ストエンジン特有の振動を低減。また車体も先進的で、X型バックボーンフレーム、フロント油圧式ディスクブレーキ、T型クロームメッキリムのコムスターホイールなどを採用していた。エンジン、燃料タンク、電装品などの重量物を重心位置付近に配置する設計によって軽快な操縦性を生み出している。当時のホンダには4ストエンジンのCB50JX-Iもあり、そこへ2ストエンジンのMB50が加わったことで、50ccロードスポーツの選択肢はさらに広がった。


主要諸元|1979年 ホンダMB50
型式名:AC01
全長×全幅×全高:1880×655×980mm
ホイールベース:1215mm
車両重量:87kg(整備)/78kg(乾燥)
エンジン:空冷2サイクル単気筒
総排気量:49cc
最高出力:7.0ps/9000rpm
最大トルク:0.56kg-m/8000rpm
燃料タンク容量:9.0L
燃費:65km/L(30km/h定地走行)
変速機:5速
ブレーキ(前・後):油圧式ディスク・機械式リーディングトレーリング
タイヤ(前・後):2.50-18・2.50-18
価格:13万6000円
1980年にはセミアップハンドル仕様が登場

MB50デビューの翌年、1980年6月には、ハンドル位置を上げたセミアップハンドル車が登場。市街地や長距離走行にも楽な乗車姿勢が得られ、余裕ある走行が楽しめるようになった。便利な小物入れも新設された。
※この記事は月刊モトチャンプ2025年3月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】