ホンダ・CBR400R FOUR E-Clutchの基本情報


国内向けに発表されたCBR400R FOUR E-Clutchは、Honda E-Clutchを標準装備した単一モデルである。
メーカー希望小売価格は119万9,000円で、国内年間販売計画台数は2,500台である。ボディカラーは、「ベータシルバーメタリック」「マットバリスティックブラックメタリック」の2種類が設定されている。
ベータシルバーメタリックは無機質で未来的な印象に仕上げられ、マットバリスティックブラックメタリックはフルカウルのシルエットを強調する配色となっている。それぞれに専用グラフィックが採用されているが、車両価格は共通である。
主要諸元
| 項目 | CBR400R FOUR E-Clutch |
| 車名・型式 | ホンダ・8BL-NC70 |
| 全長 / 全幅 / 全高 | 2,055mm / 760mm / 1,125mm |
| 軸距 / 最低地上高 | 1,405mm / 135mm |
| シート高 | 780mm |
| 車両重量 | 187kg |
| 乗車定員 | 2名 |
| 燃料消費率(WMTCモード値) | 23.1km/L(クラス3-2)1名乗車時 |
| 最小回転半径 | 2.9m |
| エンジン型式・種類 | NC70E・水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒 |
| 総排気量 | 399cm³ |
| 内径×行程 / 圧縮比 | 55.0mm×42.0mm / 12.3 |
| 最高出力 | 43kW〈58PS〉/11,500rpm |
| 最大トルク | 38N・m〈3.9kgf・m〉/9,750rpm |
| 燃料供給装置形式 | 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉 |
| 始動方式 / 点火装置形式 | セルフ式 / フルトランジスタ式バッテリー点火 |
| 潤滑方式 | 圧送飛沫併用式 |
| 燃料タンク容量 | 14L |
| クラッチ形式 | 湿式多板コイルスプリング式 |
| 変速機形式 | 常時噛合式6段リターン |
| タイヤサイズ(前・後) | 前:120/70ZR17M/C(58W) / 後:160/60ZR17M/C(69W) |
| ブレーキ形式(前・後) | 前:油圧式ダブルディスク / 後:油圧式ディスク |
| 懸架方式(前・後) | 前:テレスコピック式(倒立サス) / 後:スイングアーム式(プロリンク) |
| フレーム形式 | ダイヤモンド |
ホンダ・CBR400R FOUR E-Clutchの魅力
CBR400R FOUR E-Clutchの魅力は、400cc直列4気筒エンジンの回転上昇やサウンドを楽しめるだけでなく、フルカウルモデルらしい車体との一体感や、Honda E-Clutchによる扱いやすさも備えている点にある。
市街地からワインディング、高速道路まで対応する動力特性を持ちながら、ライディングモードやスマートフォン連携機能なども採用し、スポーツ性と日常での利便性を両立している。
新設計の直列4気筒エンジンとツインラムエアダクト

搭載されるNC70E型エンジンは、新設計の水冷直列4気筒である。低・中回転域では市街地で扱いやすい力強さを発揮し、ワインディングや高速巡航では最高出力回転域まで滑らかに到達する特性を目指している。
吸気系には、左右のヘッドライト下部から走行風を取り込むツインラムエアダクトを採用した。取り込んだ空気をスロットルボディへ導くことで、中・高回転域におけるシャープな回転上昇と吸気音を演出する。
排気系には、4本のエキゾーストパイプを2本、1本へと集合させる4-2-1方式を採用している。二重構造のエキゾーストパイプに合わせて排気ポートを調整し、マフラー内部の連通管の径や長さも最適化することで、直列4気筒らしい伸びやかな連続音をつくり込んでいる。
スポーツ走行を補助するHonda E-Clutch

Honda E-ClutchをONにした状態では、発進、変速、停止時にクラッチレバーを操作する必要がない。ギアはライダーがシフトペダルで選択するため、変速する楽しさを残しながら、クラッチ操作の負担を軽減できる。
シフトダウン時には、スロットルバイワイヤがエンジン回転数を制御し、回転差を短時間で吸収する。路面の段差や急減速によって後輪が跳ねる可能性を検知した場合は、半クラッチ制御を介入させ、車体挙動の安定にも寄与する。
システムはOFFにできるほか、ONの状態でもクラッチレバーを握れば一時的に手動操作へ切り替えられる。通常のマニュアル車と同じように、ライダーが自分で半クラッチを使いたい場面にも対応可能だ。
車体との一体感を重視したライディングポジション

CBR400R FOUR E-Clutchは、プラットフォームを共用するCB400 SUPER FOUR E-Clutchよりも、スポーツライディングを意識した前傾姿勢を採用している。
幅を抑えたセパレートハンドルと前方へ寄せた乗車位置によって、前輪への荷重を高め、加減速やコーナリング時に車体との一体感を得やすい構成とした。フルカウルは、高速走行時にライダーが受ける空気抵抗を抑える役割も持つ。
前後のシートはセパレート式で、ライダー側のシートは荷重移動を行いやすい形状となっている。燃料タンク後端とシート前端の幅を絞ることで、スポーティーなポジションを採用しながら足着き性にも配慮されている。
軽快感と安定性を両立した車体
車体には、新設計の鋼管ダイヤモンドフレームを採用した。各部の軽量化と配置の最適化によってマスの集中化を図るとともに、適度なたわみと減衰性を持たせ、軽快感と安定感の両立を目指している。
スイングアームにはアルミキャスト構造を採用し、部位ごとに板厚を調整している。ライダーの操作に対して素直に反応し、路面の状態を把握しやすい特性を追求している。
フロントサスペンションにはKYB製の直径41mm倒立カートリッジフォーク、リアにはプロリンク式サスペンションを採用した。幅広い速度域で路面からの衝撃を吸収しながら、スポーティーな走行にも対応する設定である。
フロントブレーキは、NISSIN製対向4ポットラジアルマウントキャリパーと直径296mmのダブルディスクを組み合わせる。リアには直径240mmのシングルディスクを採用し、ABSも標準装備している。
走行環境に合わせて選べるライディングモード
ライディングモードは、「STANDARD」「SPORT」「URBAN」の3種類に加え、ライダーが設定を保存できる「USER1」「USER2」を備えている。
STANDARDは走行場面を限定しない基本モード、SPORTはスロットルレスポンスを高めた設定、URBANは反応と出力特性を穏やかにしたモードである。
USER1とUSER2では、エンジン出力、HSTC、エンジンブレーキの各制御レベルを任意に組み合わせられる。市街地では穏やかな設定、ワインディングでは反応を重視した設定にするなど、走行環境や好みに応じた調整が可能だ。

メーターには、5インチのTFTフルカラー液晶を採用している。画面表示は3種類、背景色は2種類から選択できる。
Honda RoadSyncを利用すると、スマートフォンとBluetoothで接続し、ナビゲーションや天気情報などをメーターへ表示できる。別売りの対応ヘッドセットを組み合わせれば、音声案内や音声操作、通話、音楽再生などにも対応する。
このほか、USB Type-Cソケット、盗難抑止機構のH・I・S・S、アシスト&スリッパークラッチも標準装備している。
ホンダ・CBR400R FOUR E-Clutchの気になるポイント
CBR400R FOUR E-Clutchを検討する際は、Honda E-Clutchがオートマチックトランスミッションではないことを理解しておく必要がある。
クラッチ操作は電子制御されるが、走行中のギア選択はライダーがシフトペダルで行う。スロットル操作だけで自動変速するDCTやスクーターとは仕組みが異なるため、シフト操作そのものを省略したい人が想定する機能とは異なる。
現在発表されているCBR400R FOURの国内仕様はHonda E-Clutch搭載車のみであり、システムを搭載しない通常仕様は設定されていない。システムをOFFにすればマニュアル操作は可能だが、購入時にE-Clutchの有無を選ぶ構成ではない。

ライディングポジションも確認しておきたい。前述したとおり、新型は車体との一体感を重視した前傾姿勢と幅狭のセパレートハンドルを採用している。ワインディングや高速走行では利点となる一方、市街地の低速走行や長時間の移動では、手首、首、腰などに負担を感じる可能性がある。購入前には、実車で上半身の角度やハンドルまでの距離を確かめたい。
メーカー希望小売価格は119万9,000円で、保険料や税金、登録に伴う諸費用は含まれていない。普通二輪免許で運転できる400ccモデルとしては高価格帯に位置するため、装備やエンジン形式にどこまで価値を感じるかが判断材料となる。
燃料タンク容量は14L、WMTCモード燃費は23.1km/Lである。2026年5月に発売された直列2気筒のCBR400R E-Clutchは、燃料タンク容量17L、WMTCモード燃費28.1km/Lだった。
試験値だけで実際の航続距離は決まらないが、新型FOURは、直列2気筒のCBR400R E-Clutchより給油間隔が短くなる可能性がある。
Honda RoadSyncの使用には専用アプリが必要であり、一部機能では別売りのBluetoothヘッドセットを接続する。すべてのスマートフォンでの動作が保証されているわけではないため、対応OSや端末を事前に確認しておきたい。
ホンダ・CBR400R FOUR E-Clutchの変遷
CBR400Rの歴史は、1986年に登場した初代NC23型まで遡る。水冷直列4気筒エンジンを35度前傾させて搭載し、カムシャフトを歯車で駆動するカムギアトレーンを採用していた。最高出力は59PSで、車体の大部分をフェアリングで覆った「近未来フォルム」も特徴だった。
1988年には、新たなスーパースポーツモデルとしてCBR400RRが登場した。直列4気筒とカムギアトレーンを受け継ぎながら、アルミ製フレームや前後ラジアルタイヤ、アルミ製マフラーなどを採用していた。レーシングマシンを想起させるスタイリングによって一躍人気になったモデルだ。
1990年にはCBR400RRがフルモデルチェンジし、エンジン、フレーム、足回りを新設計した。車体の中心へ重量物を集めるマスの集中化を追求し、ライダーの操作に対して素直に反応する特性を目指している。その後も改良やカラー変更が続けられ、1993年12月発売モデルを最後に、国内の400ccクラスからCBRの車名はいったん途切れた。
CBR400Rが復活したのは2013年である。約20年ぶりに登場したNC47型は、従来の直列4気筒ではなく、新開発の水冷直列2気筒エンジンを搭載した。海外向けCBR500Rと基本構成を共用し、市街地からツーリングまで幅広く使えるグローバルモデルとして開発されている。
2016年には外観を一新し、LEDデュアルヘッドライトや新形状のカウル、マフラーなどを採用した。2019年にはNC56型へ移行し、より前傾したライディングポジションと攻撃的な外観へ変更するとともに、アシストスリッパークラッチなどを採用している。
2022年型では、SHOWA製SFF-BP倒立フロントフォークとフロントダブルディスクブレーキを採用し、足回りと制動性能を強化した。2024年には外観を変更するとともに、HSTC、5インチTFTメーター、Honda RoadSyncを追加している。

2026年5月には、直列2気筒エンジンを搭載するNC65型の「CBR400R E-Clutch」が発売された。同年9月には、直列2気筒のCBR400R E-Clutchとは別に、車名に「FOUR」を加えたCBR400R FOUR E-Clutchが発売される。新設計の直列4気筒エンジンを搭載し、型式はNC70型となる。
「CBR400R」というモデル名で直列4気筒エンジンを搭載するのは、1986年の初代以来40年ぶりである。なお、CBR400RRまで含めた400cc CBRの直列4気筒モデルとしては、1993年12月発売モデル以来、約33年ぶりとなる。
このようにCBR400Rの系譜は、1980年代から1990年代にかけての直列4気筒スーパースポーツと、2013年以降の直列2気筒グローバルモデルへと展開してきた。2026年には直列2気筒モデルが継続される一方、新たに直列4気筒のCBR400R FOUR E-Clutchが加わる。
新型は過去の構成をそのまま復刻するのではなく、Honda E-Clutchやスロットルバイワイヤ、ライディングモードなどを組み合わせた、新世代の400ccフルカウルスポーツとして再構築されたモデルである。
まとめ

CBR400R FOUR E-Clutchは、1980年代のCBR400Rが持っていた直列4気筒という個性を受け継ぎながら、当時のスーパースポーツをそのまま再現したモデルではない。
Honda E-Clutchによってクラッチ操作の負担を抑えつつ、シフトペダルでギアを選ぶ操作は残されている。前傾したライディングポジションやツインラムエアダクト、フルカウルなども含め、日常で乗れることだけでなく、走りに集中したときの高揚感を重視した一台である。
価格や乗車姿勢、燃料タンク容量など、直列2気筒のCBR400R E-Clutchとは異なる判断材料もある。過去のCBR400Rとの共通点だけでなく、新型が目指した走りの方向性が自分の使い方と合っているかを確かめることが重要だ。
CBR400Rの車名を冠する直列4気筒モデルが、現代の道路でどのような走りとサウンドを見せるのか、発売が待ち遠しい。


