ちょうどいいサイズのミッション車だった

2001年に登場したホンダ・エイプの魅力は、まずサイズ感にある。モンキーほど小さすぎず、NS-1などフルサイズのミッション車ほど構えずに乗れる。50ccらしい気軽さを残しながら、ちゃんとバイクに乗っている感覚が味わえる。その“ちょうどよさ”が、長く愛される存在にした。

そんなエイプは『The Basic Fifty』をキーワードに、バイクの基本的な素材を重視して開発。搭載されたのは、直立型の空冷4ストロークOHC単気筒50ccエンジンと、リターン式5速ミッション。シフトチェンジを楽しめる原付スポーツとして、50ccでも“操る楽しさ”をしっかり味わえるように作られていた。

デザインも、人気を支えた大きな理由だ。縦型エンジンが見えるオーセンティックなスタイル、シンプルなタンク、幅広のバーハンドル、1灯メーター。余計なカウルで隠すのではなく、エンジンやフレーム、足周りを見せる構成が、いかにも“バイクらしい”。まさに素材としての余白があったのだ。

クラシカルホワイトのエイプは、シンプルな車体構成がより分かりやすい。直立したエンジン、細身のタンク、むき出しのフレームが、「さあ、どこからイジろう!」という気持ちにさせる。

NSR50と同じ「12インチ」という、足周りがカスタム欲を刺激した

エイプがカスタムベースとして人気を集めた理由のひとつが、前後12インチの足周りだ。ホイール径はNSR50と同じなため、「タイヤの選択が広い!」とユーザーからも大好評。タイヤやホイール、足周りをいじる楽しさがあった。

Z2スタイルやトラッカー仕様にしたり、サーキットで走らせたり。シンプルな車体だからこそ、方向性を決めやすい。ノーマルのまま乗ってもよし、ガラッと自分色に染めてもよし。そんな自由度の高さが、エイプの大きな武器だった。

バリエーションの広がりもおもしろい。2002年には燃料タンク、フレーム、外装色を選べるプランが登場し、2008年にはディスクブレーキ仕様も追加された。さらに後期型ではキャブレターからインジェクション化され、環境規制対応のためにエンジン関連にセンサーが追加されていく(100ccモデルは最後までキャブレター仕様だった)。シンプルな素材系バイクでありながら、時代に合わせてちゃんと変化していたのだ。

プラス1万5000円で可能になるカラーオーダープラン。燃料タンクを7色設定/フレームを3色設定/フェンダー・サイドカバー・ヘッドライト周りのセットを2色設定。Hondaのホームページ上でシミュレーションが出来、容易にカラーの組み合わせを確認することが可能となっている。

兄弟車としてはXR50モタードも忘れられない。モタード外装の好みは分かれるが、スイングアームが長くて乗りやすく、前後の足周りはエイプへ移植されがちだったという話もエイプらしいポイント。エイプ100やNSF100をベースに、モテ耐などのレースやアップマフラー系カスタムが盛り上がった時代もあった。50ccのエイプは身近な素材、100ccはもう少し本格派。サイズ感を大きく変えずに世界を広げたところも、エイプらしい魅力だった。

当時のカタログでは、エンジン、足周り、灯火類、構成パーツを“素材”のように見せるユニークな中面も掲載。まるでエイプ自身が「好きに染めてくれ」と言っているような見せ方だった。

ベンリィCL50、YB-1、コレダも“実用車以上”だった

エイプが登場する少し前から、50ccの世界では実用車っぽさをおしゃれに楽しむ流れも生まれていた。若者を中心に趣味が多様化し、バイク選びの幅も広がった時代。いわゆるビジネスバイク的な素朴さを逆手に取ったモデルたちが、じわじわと存在感を増していった。そうしたモデルが地盤を固めてくれたおかげで満を持して登場できたというわけだ。

その代表が、ホンダ・ベンリィCL50、ヤマハYB-1、スズキ・コレダスクランブラー50あたりだろう。どれも速さや豪華装備で勝負するタイプではない。古くからある実用車の雰囲気をうまく活かし、ちょっとおしゃれで、ちょっとスポーティに見せていた3台だ。

1996年に登場したスズキ・コレダスクランブラー50は、大昔のスクランブラーを思わせる雰囲気が魅力。K50をベースにしながら、独特のタンク形状やアップマフラーでオフっぽさを演出していた。2ストのポロポロした音も含めて、今見るとかなり味がある。中古車がなかなか見つからないという声も納得だ。

ヤマハ・YB-1は、YB50をベースに1996年に登場。SR400風のネオレトロ感が人気で、マルチメーターの中に燃料計も備えていて便利だった。2ストモデルはサブフレームも付き、スカスカに見えないルックスが大事なポイント。細いけど雰囲気はしっかりある、そんな1台だった。

1997年に登場したホンダ・ベンリィCL50は、CD50系の実用感をベースにしながら、アップマフラーを備えたスクランブラー風のスタイルが魅力。1968年発売のモデルと大きく変わらないデザインを思わせる懐かしさもあり、カブ系エンジンにクラッチ付き4速という構成はカスタム好きにも刺さった。女性ウケが良かったという声もうなずける。

エイプ、ベンリィCL50、YB-1、コレダスクランブラー50。方向性はそれぞれ違うけれど、共通しているのは“シンプルだから楽しめる”こと。実用車っぽいのに、いや、実用車っぽいからこそ映える。そんな50ccの楽しみ方が、90年代後半から2000年代にかけて広がっていったのだ。

SPECIFICATIONS|HONDA APE(2001)

全長×全幅×全高:1710×770×970mm
ホイールベース:1185mm
シート高:715mm
車両重量:80kg
エンジン種類:空冷4スト単気筒
総排気量:49cc
最高出力:3.7ps/7500rpm
最大トルク:0.37kgm/6500rpm
燃料タンク容量:5.5L
燃費:90km/L(30km/h定地走行)
変速機形式:5速リターン
ブレーキ:前ドラム/後ドラム
タイヤ:前120/80-12/後120/80-12
価格:19万9000円
※スペックは2001年モデル

※この記事は月刊モトチャンプ2025年3月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】