レッグシールドからリヤへ! 流れる“S字”がカブの顔
1958年生まれの初代C100から基本デザインが大きく変わらないという、あまりに“スーパー”なスーパーカブだけど、その秘密はS字デザイン、S字シェイプと呼ばれる独自のスタイリングコンセプトにある。
真横から見ると、レッグシールドからリヤフェンダーにかけて描く流れるようなストリームラインが「S」字になっている。開発陣が乗りやすさを最大考慮し、前後ホイール、エンジン、燃料タンクの位置関係を決定。アップライトな楽チンポジションが完成している。

真横から眺めると、低い中央部からリヤへ流れるカブらしいラインがよく分かる。初代から受け継がれてきた基本フォルムだ。こちらは、初代C100のイメージを受け継いだ初のフルモデルチェンジ車「C50」で1966年に発売。OHCエンジンも初搭載された。
見た目より先にあったのは“乗りやすさ”
まず乗降性を考慮してシリンダーを80度前方に寝かせ、さらに防風効果に加えてスカートを履いた女性ユーザーを意識してエンジンを覆い隠すレッグシールドを装備した。
加えてシートの固定を吸盤式とし、そのシート下にガソリンタンクを設置。おまけにチェーンの駆動部分をフルカバードさせて防汚性を高めてロングライフ化を目指した。……なんというか、画期的なアイデアがのっけからてんこ盛りなのだ。
つまり、S字シェイプはスタイリストが先に「この線がカッコいい」と描いただけのものではない。乗り降りしやすく、服を汚しにくく、風も防ぎ、毎日の足として使いやすい。そうした機能をひとつずつ積み重ねた結果、この形になった。
機能を突き詰めたら、美しい形になった。そこがスーパーカブらしいところなのだ。

人が乗った状態で見ると、低いまたぎ部と自然なポジションがよく分かる。S字シェイプは“人が扱いやすい形”でもある。
ついには“形そのもの”が立体商標になった!
そんなカブの車体デザインは2014年に立体商標登録されるという名誉を授かった。
しかもスゴいのは、エンブレムやロゴではなく、車体の形そのものがスーパーカブを示すものとして認められたこと。長年にわたって基本デザインを受け継ぎ、形を見ただけで「あ、カブだ」と分かるほど社会に浸透した証でもある。

景色の中に置いても、ひと目で“カブ”と分かる。形そのものがアイデンティティになっているのが、スーパーカブの強さだ。
60年以上もスタイルが変わらないって……ミュージシャンだったら神格化、プロスポーツ選手だったら殿堂入り。いやいや、そんなヤツはたぶんどこにもいない。そんなのカブだけだって!
※この記事は月刊モトチャンプ2025年8月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】