新世代ノイエ・クラッセの第一弾モデル。906kmの航続距離を支える新技術の数々

初代ノイエ・クラッセを現代的に解釈した新世代ノイエ・クラッセの第一弾モデルが、プレミアム・コンパクト・セグメントに属するSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)のBMW iX3だ。ノイエ・クラッセ(Neue Klasse)はドイツ語で「新しいクラス」を意味する。オリジナルのノイエ・クラッセは1960年代に中型スポーツセダンの1500を新しいクラスとして打ち出した際に用いられたフレーズ。その1500が2000を経て3シリーズに発展する。

BMW iX3

2023年のジャパンモビリティショーには、BMWの次世代セダンの姿を示唆するビジョン・ノイエ・クラッセが展示された。こっちが先に公開されたこともあるし、オリジナルのノイエ・クラッセはセダンでその後3シリーズに発展したこともあり、筆者の頭の中ではノイエ・クラッセ=セダンの図式が勝手に成立していた。

ビジョン・ノイエ・クラッセ
ビジョン・ノイエ・クラッセ

が、ところがどっこい、ノイエ・クラッセの第一弾はiX3で、第二弾が新しい3シリーズになる模様(2027年に日本にやってくる?)。個人的にどうも納得いかないのは、iX3のキドニーグリルがビジョン・ノイエ・クラッセで採用した、車幅を目一杯使った新デザインではなく旧来のキドニーグリルを継承していること。そのせいで、フロントマスクに関しては新鮮味に欠ける気がする。リヤはビジョン・ノイエ・クラッセを彷彿とさせる新しいデザインを採用してはいるが…。

BMW iX3

筆者個人の思いはともかく、iX3はBMWが提唱する次世代コンセプト「ノイエ・クラッセ」の第一弾モデルなのである。新技術が満載なのは間違いない。車名に「i」が付いていることから推察できるように、iX3は電気自動車(EV)だ。電動システム系はGen6(第6世代)のBMW eDriveを適用しており、高電圧バッテリーは直径46mm、高さ95mmの、いわゆる4695サイズの円筒形セル(三元系リチウムイオン)を直接パックに組み込んだ「セル・トゥ・パック」を採用している。

電動システム系はGen6(第6世代)のBMW eDriveを適用する。

いくつかのセルをまとめてモジュールにし、そのモジュールをいくつかまとめてパックに組み込む構造よりスペース効率が高くなる。同じスペースならよりたくさんセルを積むことができるというわけ。BMWによれば、体積あたりのエネルギー密度は先代比で約20%向上しているという。iX3のバッテリー容量は109.1kWhで、WLTCモードでの一充電走行距離は906kmだ(iX3 50 xDriveの場合。試乗したiX3 50 xDrive M Sportの一充電走行距離は835km)。

一充電走行距離は「国内電気自動車No.1」と販売元のBMW Japanは発表している。これだけの航続距離が確保できているのであれば、「自宅に充電設備がなくても所有できるのでは?」と提案していくようだ。使い方にもよるが、月に1回どこかで急速充電する程度でよく、それならストレスなくiX3と付き合っていけるだろうという読みだ。

フロントフード下にも収納スペースが備わる。

そんな使い方を後押しするのが高い充電性能である。現行EVの一般的なシステム電圧が400Vであるのに対し、iX3は800Vのアーキテクチャーを採用している。高電圧だと高い出力で充電できるのが利点。プレスリリースでは、「BMWグループの電気自動車として初となる最大320kW充電に対応しており、わずか15分間の充電時間にて最大約395km走行相当の電力量を充電可能であり、10%から80%までの充電はわずか26分程度で完了」すると説明している。

課題はインフラの整備だが、整備が進む一例を挙げると、東名高速・海老名サービスエリアに一口最大出力350kWの急速充電器が設置される予定。この充電器を使った場合は15分間の充電で最大約420km走行相当の電力量が理論上は充電可能である。マイカーとの付き合いのなかで無理なくフィットする急速充電器がいつものルート上、あるいは近所にあれば、自宅に充電設備がなくてもiX3を所有できるかもしれない。そう感じさせる一充電走行距離と充電性能をiX3は備えている。

「M Sport」グレードでは21インチホイールが標準装備となる。

セル・トゥ・パックのバッテリーは体積エネルギー密度の面でメリットをもたらすだけでなく、車体剛性やパッケージング面でも貢献している。パック・トゥ・オープン・ボディ方式と呼んでいるが、バッテリーケースを車体の一部として使用。ケース上面がフロアを兼ねており、シートを固定するブラケットが直接接合されている。

この構造がパッケージング面で大きなメリットをもたらしているのは間違いない。iX3の全高は1635mmである。機械式立体駐車場が許容する1550mmはオーバーしているが、SUV的なカテゴリーのクルマとして見れば、それほど背は高くない。SAVを名乗るだけのことはあり、とてもスポーティに見える。

ボディサイズは全長4780mm、全幅1 895mm、全高1635mm。

引き換えに、居住スペースが犠牲になっていないのはパック・トゥ・オープン・ボディ方式の恩恵だろう。試乗車はオプションでパノラミック・ガラス・サンルーフを装備していたが、通常のルーフでも頭まわりが窮屈に感じることはないだろう。頭上スペースを稼ぐためにヒップポイントを低めに抑えているわけでもなく、違和感のない自然なポジションで過ごすことができる(前後席とも)。

パノラミック・ガラス・サンルーフは太陽光85%を遮断、UVは100%カットする。

「BMWパノラミックiDrive」も新世代ノイエ・クラッセの技術的なハイライトのひとつだ。フロントウインドウの下端、AピラーとAピラーの間に渡って設置された43.3インチ(幅約110cm)のディスプレイが「BMWパノラミック・ビジョン」で、これと17.9インチのセンター・ディスプレイで構成されるのがBMWパノラミックiDriveである。BMWパノラミック・ビジョンには車速やシフトポジション、外気温、時間などさまざまな情報を表示させることができ、カスタマイズが可能。通常のメーターより遠方にディスプレイがあるし、文字やグラフィックが大きく表示されるので焦点の切り替えが楽だ。

AピラーとAピラーの間に渡って設置された43.3インチ(幅約110cm)の「BMWパノラミック・ビジョン」と、ダッシュボード中央の17.9インチ「フリーカット・デザイン・コントロール・ディスプレイ」。このふたつで構成されるのがBMWパノラミックiDriveだ。

「慣れてしまえば楽かも」と感じたのは、システムオンとシステムオフの手順だ。ドアのアンロックはリモコンキーでも操作できるが、キーを携帯していれば車両に近づくと自動的にアンロックされ、格納式のドアハンドルが飛び出してくる。iX3にはBMWの他の電気自動車のようなSTART/STOPスイッチは付いていない。運転席に腰を下ろしブレーキペダルを踏むとシステムは起動。ドライブが終了したらP(パーキング)スイッチを押し、クルマから降りるとシステムはオフになり、クルマから離れればドアはロックされる。走り出すときも、走り終わったときも、ひと手間減るわけだ。

フロントシート
リヤシート
184cmの乗員が後席に座っても、ご覧のとおり、膝前には余裕がある。

モーターはフロントとリヤに搭載。駆動方式としては4WDになるが、効率(電費)の観点から、通常走行時はリヤモーターのみで駆動。強い加速を求めたときのみ4WDになる。システム最高出力は345kW、システム最大トルクは645Nmだ。鞭をくれたときの加速力は、ハイパワー電気自動車の常で圧巻である。といって、日常使いでナーバスかというとそんなことはなく、ドライバーの意図に対して忠実に力を出してくれ、ストレスがない。

フロントサスペンション:ストラット式
リヤサスペンション:マルチリンク式

回生ブレーキの強弱は、17.9インチのフリーカット・デザイン・コントロール・ディスプレイ(タッチディスプレイ)上にメニューを呼び出して調節する。強弱は低、普通、高の3段階。アダプティブを選択すると、先行車との車間距離や道路の状況などを検知し、車両が自動で回生ブレーキの強弱を最適化してくれる。センターコンソールのセレクターでBレンジを選択すると回生ブレーキは強くなり、アクセルペダルの戻し側で完全停止まで持ち込むことができる(それ以外のモードではクリープに移行)。このあたりの制御はBMWの他のEVと同じだ。

ADAS(運転支援システム)系での新技術は、「ハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能」の発展版である「ハイウェイ・アシスト」を標準装備したこと。利用可能になるのは11月以降(納車済み車両に関してはプログラムの書き換えで対応)になるが、高速道路上では130km/hまでハンズオフが可能になる。つまり、120km/h区間でも使えるようになるということだ。また、「レーン・チェンジ・アシスト」では、システムがレーンチェンジを提案してきた際、ドライバーはドアミラーを見ることで承認が完了となる(レバーを操作する必要がない)。

ADASなどのセッティングは、中央のディスプレイで操作可能。

新世代ノイエ・クラッセ第一弾モデルのiX3、ノイエ・クラッセ(新しいクラス)を名乗るだけのことはあり、新技術が満載。「どうだ、すごいだろう」と技術を自慢するのではなく、どれもユーザーフレンドリーなところがうれしい。

車種BMW iX3 50 xDrive M Sport
全長4780mm
全幅1895mm
全高1635mm
ホイールベース2895mm
乗員人数5名
車両重量2330kg
駆動方式4WD
Fモーター種類交流誘導電動機
Fモーター最高出力123kW(167PS)/4607rpm
Fモーター最大トルク255Nm(26.0kgm)/0-4607rpm
Rモーター種類交流同期電動機
Rモーター最高出力240kW(326PS)/5500rpm
Rモーター最大トルク435Nm(44.4kgm)/0-5000rpm
システム最高出力345kW(469PS)
システム最大トルク645Nm(65.8kgm)
0-100km/h加速4.9秒
バッテリー種類リチウムイオン電池
バッテリー総電圧698.9V
バッテリー総電力量109.1kWh
最大受電容量(DC)320kW
交流電力量消費率(WLTCモード)150Wh/km
一充電走行距離(WLTCモード)835km
サスペンション前:ストラット式 後:マルチリンク式
タイヤサイズ前後255/40R21
価格1034万円