水平対向エンジンを磨きながら、将来的なCN燃料の利用を視野に

スバルが、水素を利用する次世代車を視野に入れている可能性が出てきた。

トヨタのFCEV、MIRAI

現在スバルはBEV(バッテリーEV)のラインアップ拡大を進めている。ソルテラに続いてトレイルシーカー、アンチャーテッドを発表し、2026年2月には群馬製作所矢島工場でBEVの自社生産もスタートした。

スバル モーターと水素タンクの位置を示す特許画像

しかし、同社が研究している次世代技術はBEVだけではないようだ。

今回明らかになったのは、水素を貯蔵する高圧タンクを搭載した車両を想定するスバルの特許である。ポイントは水素の生成方法や燃料電池そのものではなく、衝突事故から高圧水素タンクを守るための車体構造にある。

特許図を見ると、車両前方に駆動用モーターを置き、その後方に水素タンクを配置するレイアウトが描かれている。

問題となるのは正面衝突時だ。大きな衝撃を受ければ、車両前方にあるモーターが後方へ押し込まれる可能性がある。その先に高圧水素タンクがある場合、重量物であるモーターとタンクが強く接触する事態は避けなければならない。

そこで考えられたのが、衝突時にモーターとタンクを異なる方向へ逃がす構造である。

一定以上の衝撃が加わると、モーターを支持するリンクの一部が破断。モーターがそのまま後方へ押し込まれるのではなく、前側のマウントを支点として回転する。

さらにモーター後部のマウントがタンク前方の構造に接触すると、モーター後部を上方へ移動させながら、水素タンク側を下方へ逃がす。

簡単に言えば「モーターは上、水素タンクは下」へ動かすことで、両者が正面からぶつかることを避ける考え方だ。

高圧水素タンクはもともと高い強度を持たせて設計されるが、重大事故ではモーターのような重量物との強い接触をできるだけ避ける必要がある。

また、モーターが後方へ大きく押し込まれることを抑えられれば、タンクだけでなく乗員空間の保護にもつながる。今回の特許は、水素を車載するうえで避けて通れない衝突安全を具体的に検討した技術と見ることができる。

では、これが「スバル製FCEV」の登場を意味するのだろうか。

現時点ではそこまで断定できない。自動車メーカーは将来の製品に採用されない技術も含めて幅広く特許を取得しており、今回の特許だけでスバルがFCEVを市販すると判断することはできない。

ただし、水素タンクを実際に車両へ搭載した際の衝突挙動まで検討している点は興味深い。

スバルとトヨタの関係も見逃せない。両社はソルテラをはじめBEVを共同開発しており、2025年には提携開始から20周年を迎えた。2026年からスバルが自社生産を始めたトレイルシーカーもトヨタとの共同開発車である。

さらに2024年5月には、スバル、トヨタ、マツダの3社が電動化時代に向けた新たなエンジン開発を発表した。

3社が掲げたのは、エンジンをモーターやバッテリーなどの電動ユニットと最適に組み合わせるとともに、e-fuelやバイオ燃料、液体水素など多様なカーボンニュートラル燃料へ対応させるというものだ。

スバルも水平対向エンジンを磨きながら、将来的なCN燃料の利用を見据えている。

一方のトヨタは『MIRAI』でFCEVを市販してきたほか、モータースポーツを利用した水素エンジンの技術開発も続けている。

だからといって、今回の特許から「スバル版MIRAI」が登場すると考えるのは早い。

むしろ注目すべきなのは、スバルがBEVやハイブリッド、CN燃料だけでなく、水素を車載する場合の安全技術についても研究していることだろう。

BEVを中心に電動化を進めながら、水平対向エンジンやCN燃料など複数の可能性を残すスバル。その選択肢のひとつに「水素」が加わるのか。今回の特許は、その可能性をうかがわせる材料のひとつである。