メットイン全盛期に “走り一本” !【ホンダ・Gダッシュ】

6.8psエンジン、左右油圧ダンパー入りテレスコピックフォーク、Φ160mmディスクを装備。収納よりも走りを優先した潔さが光る50ccスポーツスクーター

HONDA Gダッシュ|1989年発売

1989年(平成元年)1月に登場したGダッシュ(ジーダッシュ)は、ひと言でいえば“スクーター版レーサーレプリカ”。シート下収納がスクーター選びの大きな魅力になりつつあった時代に、収納力よりもパフォーマンスを優先した作り込みが魅力的なモデルだ。

エンジンは、49cc空冷2ストローク単気筒で、最高出力6.8ps/7000rpm、最大トルク0.73kgm/6500rpm。吸・排気効率と燃焼効率を煮詰め、中高回転域まで気持ちよく伸びる特性を実現している。1140mmというショートホイールベースを活かしたコンパクトな車体に、前後80/90-10のハイグリップタイヤ、高剛性ホイールを組み合わせ、運動性能を重視した構成となっていた。

足周りも本格的。フロントには左右とも油圧ダンパーを内蔵したテレスコピック式サスペンションを採用し、アルミ製ボトムケースまで投入。特にフロントブレーキは、放熱性を高めた160mmの孔あき油圧ディスクローターを採用するなど、パワフルな車体をしっかり支える装備が与えられている。車両重量は63kg、乾燥重量なら59kgという軽さも武器だった。

そして何よりカッコよかったのが、そのエアロフォルム。ブリスター形状のサイドカバーやアンダーカウル、後部のエアアウトレットフィンなど、走行風まで意識したデザインとなっている。デュアルヘッドライトや大容量マフラーも含め、見るからに“速そう”な雰囲気が漂っていた。

ここからは2度ほどGダッシュを所有した筆者Sの印象。まずフロントフォークは路面追従性が高く、ハイグリップタイヤを履かせてもフレームが負けることなくしっかりと応えてくれた。またコンパクトでスリムなシートは身体を動かしやすく、膝を擦るような場面でも非常にフィット。かち上がったマフラーは、深いバンク角を確保する方向に効いていて、かなり本気でコーナーを攻められたのを覚えている。

純正アクセサリーにゼッケン風のステッカーやステップ周りの滑り止めまでレーシー度を高めるアイテムが用意されるなど、ここまで“走るための雰囲気”をメーカー自身が用意したスクーターは珍しかった。エアロフォルムも含め、とことんスポーツへ振り切った潔さがGダッシュの魅力だろう。

総排気量:49cc
エンジン:空冷2ストローク単気筒
最高出力:6.8ps/7000rpm
最大トルク:0.73kgm/6500rpm
全長×全幅×全高:1585×650×1005mm
重量:63kg
燃料タンク容量:3.6L
タイヤ:80/90-10/80/90-10
発売当時価格:14万3000円

キーを回せばスタンドが立つ!【ホンダ・タクト・スタンドアップ】

キー操作だけでメインスタンドを掛けられる、量産市販車世界初の電動式オートスタンドを採用。メットインや4.8Lタンクも備え、日常での使いやすさを徹底的に高めた

HONDA タクト・スタンドアップ|1989年発売

いっぽう、同じ1989年(平成元年)にタクトが進めたのは“もっと便利に”という方向。最大のトピックは、市販量産車として世界初となる「電動式オートスタンド」。メインスイッチのキーを押して回すだけで専用モーターがメインスタンドを作動させ、スタンド掛けを自動で行うという画期的な仕組みだった。

買い物帰りで荷物を持っているときや、狭い駐輪場でスクーターを止めるとき。毎日繰り返すスタンド掛けを少しでも楽にしたい、という発想から生まれた機構で、荷物を積んだ状態でも作動できるよう設計されていた。電動機構を使わず、従来どおり足でスタンドを掛けることも可能となっている。

もちろん、便利なのはスタンドだけではない。メットインスペースの容量を拡大し、燃料タンクも4.8Lへ大型化。新型5ポートシリンダーを採用した49cc空冷2ストローク単気筒は6.0ps/6500rpmを発揮し、低〜中速域で扱いやすいパワー特性へ仕上げられている。

足周りにはタクト伝統のトレーリングリンク式フロントサスペンションを採用し、左右に油圧ダンパーを装備。フロントブレーキのドラム径も95mmへ大径化され、チューブレスタイヤまで採用するなど、毎日の足としての安心感もしっかり高められていた。

そして広告キャラクターには小泉今日子を起用。Gダッシュが若者の“走りたい気持ち”へ真正面から応えたモデルなら、タクトは幅広いユーザーに向けてスクーターの便利さをさらに一歩進めたモデルといえる。走りも便利さも、それぞれ別の方向から本気で追求していたのが1989年のホンダだった。

総排気量:49cc
エンジン:空冷2ストローク単気筒
最高出力:6.0ps/6500rpm
最大トルク:0.70kgm/6000rpm
全長×全幅×全高:1655×640×995mm
重量:71kg
燃料タンク容量:4.8L
タイヤ:3.00-10/3.00-10
発売当時価格:15万4000円

※この記事は月刊モトチャンプ2025年12月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】