観音開きの後席ドアと堂々たる車体が示す、ショーファーカーとしての新たな方向性

日本では軽EV「RACCO(ラッコ)」で軽自動車市場に参入する一方、中国では超高級車市場への攻勢を強めるBYD。その最高級ブランド「ヤンワン(仰望)」が、新たな大型セダンの開発を進めている。

ヤンワン 最高級セダン 予想CG

今回姿を現したプロトタイプは、全身を厳重なカモフラージュで覆われているものの、その堂々としたプロポーションから、既存の大型セダン「U7」を上回るフラッグシップモデルになる可能性がある。

競合として意識しているとみられるのは、ロールス・ロイス『ファントム』やベントレーの高級セダン、メルセデス・マイバッハ『Sクラス』などだ。

ヤンワン 最高級セダン プロトタイプ

まず注目したいのが、圧倒的な存在感を放つボディデザインである。

プロトタイプは高いボンネットと長く伸びたキャビンを備え、ホイールベースも相当に長いことがうかがえる。フロントマスクには、同ブランドの大型SUV『U8』を思わせる直立したデザインを採用。ヘッドライト内部には複数のLEDエレメントが組み込まれているようだ。

さらに特徴的なのが、後席ドアの構造である。

プロトタイプでは、ロールス・ロイス『ファントム』と同様に、後方へ向かって開く「コーチドア」を採用しているとみられる。Cピラー後方にも大型のウインドウが設けられており、後席乗員の快適性を重視したショーファードリブンモデルとして開発されている可能性が高い。

運転席よりも後席を優先したパッケージングは、従来のヤンワンU7とは異なる方向性を示している。

先進技術についても、BYDの最新システムが投入される見込みだ。

フロントウインドウ上部にはLiDARとみられるセンサーが確認できる。運転支援システムには「DiPilot 600」の採用が予想されており、高級感だけでなく、高度な運転支援機能も新型フラッグシップの特徴となりそうだ。

パワートレインの詳細は明らかになっていないが、注目されるのが次世代バッテリー技術である。

BYDは2026年9月、2027年に全固体電池技術を搭載したモデルを用意する方針を示したと報じられている。

ただし、現時点では搭載車種や一般販売の時期は明らかになっていない。今回の新型セダンが最初の採用モデルになる可能性も取り沙汰されているが、量産車への本格展開については、今後の開発状況を見極める必要がある。

また、プロトタイプはBYDの超急速充電技術「Flash Charging」に関連する設備とともに確認されている。

Flash Chargingは最大1MW(1000kW)級の充電出力を掲げる技術で、BYDは中国市場で対応車両と充電インフラの展開を進めている。

新型セダンがこの充電システムに対応すれば、大容量バッテリーを搭載する超高級EVにとって大きな強みとなる可能性がある。

もっとも、現段階では新型セダンのバッテリー容量や航続距離、最大充電出力などの詳細は判明していない。

ヤンワンは、BYDグループのなかでも最上位に位置する高級ブランドだ。

すでに大型SUV『U8』、電動スーパーカー『U9』、大型セダン『U7』などを展開している。

U8の中国市場での発売時価格は109万8000元、U9は168万元に設定されており、いずれも日本円で数千万円規模となる。

これらのモデルによって、BYDは従来の大衆向けEV市場だけでなく、欧州の高級ブランドと競合する価格帯にも進出している。

今回の新型セダンは、そうしたヤンワンのブランドイメージをさらに引き上げる役割を担うことになりそうだ。

一方、日本市場ではまったく異なる戦略を進めている。

BYDは2026年7月28日、日本の軽自動車規格に合わせて開発した軽EV『RACCO』を発売した。

日本独自の軽自動車市場に対応したモデルを投入する一方、中国ではロールス・ロイス級の超高級セダンを開発するという、対照的な商品展開を進めている。

この両極端な市場への同時進出こそ、現在のBYDの特徴といえるだろう。

軽EVから大型SUV、電動スーパーカー、そして超高級ショーファーセダンまで。BYDは価格帯や用途の異なる市場に向けて商品を拡充しており、新型ヤンワンの登場によって、そのラインアップはさらに広がることになる。