テクノロジー企業として初めてビジョン グランツーリスモに参加したシャオミ

シャオミ(Xiaomi)が開発した電動ハイパーカーのコンセプトモデル「シャオミ・ビジョン グランツーリスモ」が、10月15日に配信された『グランツーリスモ7』のSpec IVアップデート第1弾で収録された。今年3月にスペイン・バルセロナのMWC 2026で実物大モデルを公開し、4月の北京モーターショー(Auto China 2026)でアジア初披露を経て、ついにゲーム内で走らせられるようになったわけだ。

シャオミ・ビジョン グランツーリスモ
シャオミ・ビジョン グランツーリスモ

ビジョン グランツーリスモは、『グランツーリスモ』シリーズの発売15周年を記念して2013年に始まったプロジェクトだ。世界の自動車メーカーやブランドが、ゲームのためだけにオリジナルのコンセプトカーをデザインし、プレーヤーはそれをゲームの中で走らせることができる。最初の1台はメルセデス・ベンツで、『グランツーリスモ6』に収録された。これまでに50台が誕生している。

プロジェクトのスタートは2025年6月、ロンドンで行なわれたグランツーリスモ・ワールドシリーズ第1戦だった。この場でシャオミとポリフォニー・デジタルは、高性能EV「シャオミSU7 Ultra」を『グランツーリスモ7』に収録すると発表し、あわせてビジョン グランツーリスモの共同開発も予告した。シリーズのプロデューサーである山内一典氏から、直接招待を受けたのだという。

シャオミはビジョン グランツーリスモに参加した36番目のブランドで、中国ブランドとしてもテクノロジー企業としても初めて。本車両は51台目のビジョン グランツーリスモにあたる。デザインはドイツ・ミュンヘン、北京、上海のチームが共同で手掛けた。シャオミオートのデザイン責任者、ティエンユエン・リー氏は次のように語っている。

「招待されたこと自体が、シャオミがこれまでに成し遂げてきたことへの評価でした。ミュンヘン、北京、上海のチームが協力して限界を押し広げ、制約なしにデザインしたら未来のハイパーカーはどんな姿になるのかを思い描くことができました」

『グランツーリスモ』シリーズのプロデューサーを務める山内一典氏(左)と、シャオミのデザイン責任者であるティエンユエン・リー氏(右)。

デザインテーマは「Sculpted by the Wind」。ティアドロップ形のキャビンを中心に、ボディ全体を空気の通り道としてデザイン

ハイパーカーの空力では、直線の速さを求めてドラッグ(空気抵抗)を極限まで減らすか、コーナリングのためにダウンフォースを最大にするかの選択を迫られる。しかしシャオミは、この電動ハイパーカーではどちらか一方に振り切るのは最適ではないと考え、両者のバランスを追求する道を選択した。

シャオミ・ビジョン グランツーリスモ

そこで掲げたのが「Sculpted by the Wind(風が削り出した造形)」というテーマだ。大型リヤウイングのような後付けの空力パーツには頼らず、各部の造形そのものに空力の機能をもたせている。

サイドから見るとキャビンは浮かんだ水滴のようなティアドロップ形で、骨格となる部材もすべて翼断面に仕上げられた。ボディには切り欠きとエアダクトを設け、ティアドロップ形のキャビンを包み込む構造に。フロントから取り込んだ空気がボディ内の通路を抜け、リヤから排出される。

シャオミ・ビジョン グランツーリスモ
シャオミ・ビジョン グランツーリスモ

ダウンフォースの発生には、航空機の翼と胴体を一体化した機体構造を上下逆にした考え方を採り入れた。床下を流れる空気を加速させることで、パーツを追加せずに大きなダウンフォースを得るというわけだ。シミュレーションによる数値は、Cd値0.29、ダウンフォース係数1.2、空力効率4.1。ドラッグ1に対して4.1のダウンフォースを生む計算だ。

シャオミ・ビジョン グランツーリスモ

シャオミのクルマに共通するデザイン要素も、空力パーツとして機能する。十字形のヘッドライトはボディと一体化され、空気の流れをガイドする役割を担う。リヤのハロー(光輪)形テールランプは大型のエアアウトレットに組み込まれた。

シャオミ・ビジョン グランツーリスモ

テールランプのまわりには、数千もの微細な孔を並べた「AWCS(アクティブ・ウェイク・コントロール・システム)」を配置。車速と姿勢のデータを基に、孔から速度を変えて空気を吹き出し、乱流をリヤから遠ざける。可動式のスポイラーとは異なり、ボディの面を崩さずに後流を整えられるのが特徴だ。

シャオミ・ビジョン グランツーリスモ

ホイールの「Accretion Rims」も目新しい。渦を描くような形状のホイールカバーをタイヤの面とツライチに収め、半透明のカバー越しに内部のタービンフィンが見える。このフィンが空気を引き込んでブレーキを冷却する仕組みだ。さらに磁気を利用した機構により、走行中もカバーは回転せずに静止したまま。回転するホイール面が生む空気抵抗を減らすとともに、ホイールが浮いて見える効果も狙っている。

シャオミ・ビジョン グランツーリスモ

インテリアのテーマは「ソファレーサー」。ダッシュボードからドアパネル、シートまでをひとつの輪でつなぐコクーン形キャビン

コクピットでまず目に入るのは、無限大記号のような形をしたステア・バイ・ワイヤのステアリングホイールだ。各機能の操作を手元に集め、高速走行時にはドライバーの心拍数をステアリングホイール上に表示する。

キャビン全体は、多くのハイパーカーが採用するバケットシートとは異なる考え方でつくられた。ダッシュボード、ドアパネル、シートを途切れなくつなげてひとつのリング状の構造とし、繭のようにドライバーを包み込む。

シート表皮にはスポーツウエアで用いられる3Dニット技術で編んだ天然素材のファブリックを採用し、通気性とサポート性を両立させた。走りに集中することも、リラックスすることもできる空間を目指したという。

シャオミ・ビジョン グランツーリスモ
シャオミ・ビジョン グランツーリスモ
シャオミ・ビジョン グランツーリスモ

Spec IVアップデート第1弾で収録。シャオミSU7 Ultraとともに高性能EVの走りを体験できる

10月15日に配信された『グランツーリスモ7』のアップデートでは、新コース「スポーツランドSUGO」のほか、6台のクルマが追加された。シャオミ・ビジョン グランツーリスモは、そのうちの1台だ。

このアップデートでは、ゲーム内のブランドセントラル(メーカーごとのショールーム)に、ブランドごとのクルマの走りを体験して記録に挑戦できる「エクスペリエンス」も新たに加わった。シャオミのエクスペリエンスでは、シャオミSU7 Ultraとシャオミ・ビジョン グランツーリスモで走り、高性能EVならではの加速、ブレーキング、ハンドリングを体験できる。

山内氏はこのシャオミ・ビジョン グランツーリスモのデザインを次のように評している。

「全体のデザインはシンプルさを保ちながら、言葉にしがたいほど滑らかで、とてもセクシーな曲面を見せています。最も感銘を受けたのは、低ドラッグと高ダウンフォースという矛盾をシャオミがどう解決したかです。この時代のロールモデルになるクルマだと思います」

現在、発売中のカーデザイン専門誌『Car Styling Vol.3』では、このシャオミ・ビジョン グランツーリスモの詳細なデザイン解説に加えて、シャオミのデザイン責任者であるティエンユエン・リー氏のインタビューも掲載している。ぜひ、手にとってご覧いただきたい。