2025年のコンセプトカーが走り出した! 次世代BEVの技術検証車に試乗

自社開発BEV技術検証台車。デジタル開発1年でできた試作車だ。

スバルは2026年10月17日に栃木県佐野市のスバル研究実験センター(SKC)で「SUBARU 開発戦略 説明・取材会」を開催した。この場では自社開発BEV(電気自動車)で取り入れた開発変革、次世代ADAS、次世代プラットフォーム、次世代パワーソース(新エンジン/BEV)、制御統合ECU/E-Eアーキテクチャーなどの説明と試験車の試乗体験があった。本稿では「自社開発BEV 技術検証台車」の試乗についてレポートする。

「自社開発BEV 技術検証台車」の試乗では完成品として評価するのではなく、「開発変革により従来の2分の1の期間で実車を作った。味つけやチューニングはこれから。その状態で乗ってどれくらいの完成度か体感いただきたい」とのことだった。

新しいプロセスで開発した自社開発BEV技術検証台車は、車両適合前のデジタル開発を中心に開発した「まま」のクルマだ。

いかにも試験車風な姿形をしたBEV試験車の正体は、2025年のジャパンモビリティショー出展車の「Performance-E STI concept」である。このBEVの市販バージョンの試験車が「自社開発BEV 技術検証台車」であり、「毎日使えて、毎日ワクワクできる」「Everyday Supercar」を目指すBEVの開発にあたり、新たな開発手法を取り入れたということだ。

2025年のジャパンモビリティショーで公開されたSUBARU Performance-E STI concept

ではPerformance-E STI conceptとはどんなBEVなのかというと、車体パッケージングは人中心。理想の運転姿勢がとれるのはもちろんのこと、リヤ席を含め乗員スペースを犠牲にしない考え。自社開発のeアクスル(モーター+インバーター+減速機)はフロントとリヤに搭載。徹底的にコンパクトに設計したうえで低い位置に配置する。三元系リチウムイオンバッテリーも自社開発で、軽量・薄型に設計した(個別技術については別レポートで展開)。

低ハイトのバッテリーを採用することで全高を抑えることができ、充分な乗員スペースを確保しながら空気抵抗の低減(電費向上)に寄与する。また、低重心化にもつながり車両運動性能上のメリットにつながる。

プラットフォームも新開発。エネルギーの伝達時間や効率に着目した「Dynamic Stiffness Concept(新車体動剛性コンセプト)」を掲げて開発し、「世界一の安心と愉しさ」の実現を目指す。プラットフォームについての詳細も別のレポートで報告する。

新設計のサスペンションはフロントがハイマウントアッパーアームを持つダブルウィッシュボーン式。リヤはトレーリングリンクタイプではなく、ラテラルリンクのみで構成するフルマルチリンク式だ。掲載はNGだったがのぞき込んで目視することは許してもらえたので確認したところ、前後ともいかにも強度・剛性が高そうなリンク/アーム類が確認できた。アルミ鋳造品を多用している印象だ。タイヤは前後とも245/40R20サイズ。前後ともにごつい対向ピストンキャリパーが装着されていた。

低い着座位置、自然な運転姿勢。乗ってすぐに感じる「スバルらしさ」

被せてあるボディはアウトバックだ。

運転席に乗り込み、ポジションを調整。エンジン車、例えばレヴォーグと同じように、自分が最適だと感じる姿勢に難なく調整することができる。ヒップポイントが高くて落ち着かないとか、尻の位置は低いけど、かかとの位置が高くて体育座りのような姿勢を強いられて落ち着かないというような、気になる点は皆無。頭上にもスペース的な余裕があり、乗り込んですぐ空間に体と気持ちがなじむ。

シフトコマンダーは現行ソルテラで使っているものを流用

シフトコマンダーは現行ソルテラで使っているものを流用。Dレンジに入れてブレーキをリリースするとクリープ走行が始まる。試乗したハンドリングコースは最高で40km/hから80km/hの速度制限があり、丘陵地帯のワインディングロードを走るような感覚だ。フル加速は試していないがイメージどおりに加速してくれることは確認できた。

開発者車両然としたインパネ。

アクセルを戻した際、試乗車はエンジン車のDレンジ相当の減速感が出る設定になっていた。市販バージョンではパドル操作により回生ブレーキの強弱を調節できるようにする方向で検討しているという。

ステアリングの切り込みに対する反応はダルではなく過敏でもなくイメージどおり。ドライビングポジションと同様、少し走ればすぐに体になじむ感じ。エンジン車でいえばWRXを想起させるような、剛性感を感じる乗り味であり、突き上げの面でときおりハードな一面を見せる。ただし「何だろう今の?」と気になるような挙動や音は皆無だった。

開発期間は半分、完成度は7〜8割。デジタル×大部屋開発が変えたものづくり

従来開発プロセスによるできたなりの試験車との比較ができないので、「自社開発BEV 技術検証台車」の完成度が高いか低いかの判断はできないが、何の不自由もなく走るし、なんなら走りを楽しめる、というのが正直な感想である。両者を良く知る技術者に言わせると雲泥の差だそうで、従来開発プロセスによるできたなりのクルマは「とても怖くて運転できない」とか「うるささだけが印象に残る」状態なこともあったそう。とても第三者に「乗ってください」と言える代物ではなかったという。

従来の2分の1の期間で高い完成度を実現できるようになった理由のひとつは、デジタルツールを駆使したこと。もうひとつの理由は分業制をやめ大部屋制にしたことである。実車が最初にできた段階の完成度は旧プロセスで2-3割程度だったが、新プロセスでは7-8割にまで達している。新車の開発期間が同じなら、浮いた時間をスバルらしい走りを実現するための熟成に費やすこともできるし、早く市場に送り出したほうが得策ならそうする。そのあたりは経営判断だ。

スバルは開発の手法そのものを変えたという。従来の約2分の1の時間で仮題開発を実現できるようになったという。

大部屋制の開発はうまく機能しているよう。スバル社内の異なる部署の担当者が大部屋に集まるだけでなく、取引先企業も同じ環境に入り、デジタルツールを使って共通認識で話ができるようにし一体で開発を進める。従来開発では、ある部署が別の部署、あるいはサプライヤーに問い合わせや打診をしたりすると、返答を待つのに場合によっては1ヵ月から2ヵ月を費やすケースもあったという。

大部屋開発ではそれが、「早ければ即日」で解決する。「必要な人が同じ環境にいて、面と向かって話すことができるのが大きい」と、実体験した技術者は話してくれた。

大部屋的な開発はこれまで部分的に行なった経験はあるものの、本格的に取り組むのは、すべてをゼロから開発する自社開発のBEVが最初。エンジン車の場合は伝統の水平対向4気筒エンジンとシンメトリカルAWDという固定要素がある。そのため開発のやり方がある程度固まっていたそう。過去の経緯から守られている暗黙の了解がない、真っさらな状態から開発を始められるクルマなら、新しい発想を持ち込みやすい。そのような背景があった模様。

デジタルと大部屋を融合した開発変革で、「短い期間で完成度を高めることができた」ことは確認できたという。その結果、技術者たちが気持ち良く仕事に取り組むことができるのが大きい。そのほうが、いいクルマができるに決まっているのだから。

「次のスバルは面白くなりそうだ!」開発中の新技術を一挙公開。次世代アイサイト、BEV、水平対向エンジン、そして開発現場の大改革 | Motor Fan|自動車情報のモーターファン

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