プロユースを見据えた唯一無二のモデルと好対照をなすクロスオーバーSUVたち スズキ・ジムニー×ジムニーシエラ×日産ジューク×ジープ・レネゲード〈ライバル車比較インプレッション〉
- 2018/12/18
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MotorFan編集部
その外観こそ、同じようなカテゴリーに属する類似のフォルムに見えるかもしれないがジムニー/ジムニーシエラ(SUZUKI JIMNY)とほかのモデルは走行性能やユーティリティに関して、実に大きな違いがある。ラダーフレームとモノコック、エンジンレイアウトの違いが生む個性を明らかにしていこう。
REPORT●佐野弘宗(SANO Hiromune)
PHOTO●佐藤宏治(SATO Hiroharu)/平野 陽(HIRANO Akio)/中野幸次(NAKANO Koji)/宮門秀行(MIYAKADO Hideyuki)
ライバル不在とも言える孤高の存在であるジムニー
世界中を見渡しても、新型ジムニー/ジムニーシエラ(以下、シエラ)と直接競合するクルマは、今はちょっと思い当たらない。事実、今回の商品企画や開発作業で、その性能や機能、商品力を比較検証した他社製品は「一台もありませんでした」と、開発陣も断言している。
ただ、「同じプロのための道具という意味で、参考に観察・試乗したクルマ」と唯一車名が挙がったのがトヨタ・ランドクルーザー70だった。なるほど、ジムニーとランクル70には技術的共通点も多いし、ともに忠実な支持層を抱える世界屈指のワークホースである。しかし、両車のボディサイズや価格を考えれば、いわゆる競合車とは言い難い。
もっとも、50年近いジムニー史上ではライバルもいくつか存在した。記憶に新しいのは、1994年から2013年まで販売された三菱パジェロミニ/パジェロジュニア/パジェロイオ、それと同時期のダイハツ・テリオスキッド/テリオス、そしてテリオスの後継たるビーゴ……だが、それらも結局はすべて姿を消し、その後の新規参入もない。
ジムニー/シエラには先代モデル最末期でもグローバルで年間4万台を売り上げる地盤で支えられているが、かといって今のSUVブームを機にそれ以上に拡大するといった兆候も見られない。昨今のSUVブームを支えているのは、あくまで「大径タイヤでちょっと背高の乗用車」といった雰囲気モノであって、ジムニーのような本物のオフローダーではないのが現実である。軽SUVでも実際の台数がさばけるのは、同じスズキのハスラーである。
つまり、ジムニー/シエラは軽自動車(以下、軽)界でも国内外SUV界でも、もはや孤高の存在なのだ。その支持基盤は良くも悪くも、発売が古い新しいすら超越して安定しきっている。そこは「今後も継続していくべき堅固な地盤」であるものの、同時に「新しいバリエーションをどんどん増やしたり、他社が積極的に参入できるほど大きくない」とは、今回の開発陣の説明である。
新型シエラ(海外でのジムニー)のエンジンは選択肢がいくつかあったはずだが、実際は最新の1.5ℓ自然吸気エンジンが選ばれた。発売前のスクープ記事では1.0ℓ3気筒直噴ターボとも囁かれて、近年のダウンサイジングブームや日本の税制を考えれば、1.0ℓターボという選択はとても説得力があるように思えた。しかし、実際は違った。
これまたスズキの開発陣によると、「先進国市場だけならそれも有力な選択肢でしたが、ジムニーはアフリカや中南米、東南アジアでも普通に使われますので、グローバルでの燃料事情やサービス体制を考えると、現時点では直噴ターボに踏み切れる状況ではありませんでした。それも含めてトータルで考えると現時点では1.5ℓが最良」とのことだ。同時に、ジムニー/シエラの市場が複数のエンジンを取り揃えるのは得策とはいえない程度の規模でしかないのは、前記のとおりである。
……というわけで、孤高のジムニー/シエラに対して、今回あえて連れ出したのが日産ジュークの1.5ℓ車と、ジープ・レネゲードの「トレイルホーク」だ。ただ、繰り返しになるが、どちらにしてもジムニーもしくはシエラと一般的な意味で競合車と言い切れるクルマではない。
まずは日産ジューク。今、日本で正規入手可能な非スズキ車で、軽を除いた最小SUVが実はジュークである。日本で手に入る(白ナンバー登録車の)現行SUVで、ジュークより小さいクルマは3台あるが、そのすべてがスズキなのだ。最小は今も昔も軽の全幅/トレッドを拡大しただけのシエラであり、そこにイグニスとクロスビーが続く。
つまり、これらスモールスリーに続いて小さな現役SUVがジュークになる。そうはいってもジュークの全長は3番目に小さいクロスビーより約30㎝も長く、全幅は堂々たる3ナンバーサイズである。シエラを含むスズキのスモールスリーは「5ナンバーSUV」という意味でも、今やとても貴重な3台というわけだ。
もう1台のレネゲードは、ジムニーを含めた世界のオフロード四輪駆動車すべての元ネタにして、「ジムニー=JIMNY」という車名の語源ともいえそうな「JEEP=ジープ」の末っ子である。ジムニー/シエラと並べると圧倒的に立派な体躯だが、それでも輸入SUVでは屈指に小さい部類に入る1台である。
オフローダーの元祖を自負するジープにおいて、ジムニーに比肩する「ホンモノ」枠を担うのはレネゲードの兄貴分たるラングラーだろう。それと比較すると、横置きFFレイアウトのモノコックボディに四輪ストラットサスペンションを持つレネゲードは、形式的にはいまどき乗用SUVの典型にも見える。ただ、実際の格は最初からSUVを前提とした堅牢設計の「スモールワイド4×4アーキテクチャー」であり、しかも今回の「トレイルホーク」はジープの名に懸けて悪路性能を追求した特別グレードである。トレイルホークの最低地上高はノーマルFFモデルからさらに30㎜増しの200㎜で、ジムニー/シエラとも大差なし。さすがは名門ジープの作だけに、そこいらのカジュアル系SUVとは一線を画す仕立てである。
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