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Toyota Prius THSⅡ TOYOTA HYBRID SYSTEM トヨタ・プリウス 熱効率40%への道程(上)ディテールの改良の積み重ね[2/2]

  • 2019/05/11
  • Motor Fan illustrated編集部
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初代から現在の4代目まで、プリウスに搭載されたエンジンの最大熱効率推移を示したグラフ。エンジン/電動モーター/発電機を使って出力バランスを得るという電気CVT的な発想のため、もともと効率の良い領域を多用できる環境にある。(FIGURE:TOYOTA)
新型プリウスへの搭載に当たって2ZR-FXEエンジンに施された改良はこの表のとおりである。新しい項目は「高速燃焼」だけであり、そのために燃焼室まわりは一新された。意外にもほかの部分は「地道な改良」であり、飛び道具に頼った設計ではない点が興味深い。直噴化という選択肢も考えなかったと言う。(FIGURE:TOYOTA)

 熱効率改善のための手段は「急速燃焼」の促進、クールドEGRの活用、機械損失(フリクションロス)低減といったあたりである。従来型2ZR-FXEをベースに急速燃焼のための改良を施し、EGR量を増やし、機械損失を減らした。結論はこれである。しかし、完成した新エンジンは80%の部品が刷新されている。まさに個々の部品についての改良、その積み重ねとしての熱効率40%である。

 そのなかで、最後の最後に40%へと導いた部品がウォータージャケットスペーサー(WJS)である。シリンダーに接する冷却水路に組み込み、水の流れを制御する部品だ。

「黒い部分はエクスパッドという発泡ゴムで、熱を加えると厚みが約4倍になります。一度エンジンを始動させて冷却水を循環させるとその状態になり、あとはずっと形状が保持される不可逆性の発泡ゴムです。このゴムを水路内にしっかり固定するためにステンレス性の枠があります。樹脂製のWJSでは隙間ができてしまうので、ステンレス製の部品でしっかりと水路に密着させています」


シリンダーブロック両側の冷却水路に対し、ウォータージャケットスペーサーはこのように取り付けられる。組み付けはジグを使って人力で行なわれる。左側が吸気ポート側、右側が排気ポート側である。排気側のスペーサーのほうが高さがあるが、その理由はシリンダーボア壁面を保温することで機械損失を抑える点にある。

 プレス成形されたステンレスの薄板でエクスパッドをはさみ、水路内に位置決めするための板ばね形状が等間隔で並んだ、手の込んだ造りである。排気側と吸気側とではエクスパッド面の高さが違う。吸気側のほうが低い。


「吸気側のシリンダー壁面は、なるべく圧力損失を小さくするようエクスパッドで押さえる範囲を狭くし、冷却水が流れるようにしてあります。排気側はボア上部だけ冷却水を流し、中下部は保温しています。吸気側と排気側でWJSの形状が違う理由はここにあります」


 素朴な疑問は、水路そのものをあらかじめ必要な深さに加工できないのだろうか、という点である。搭載車種ごとにシリンダーブロック内の水路形状を変えるとなると、エンジン組み立てラインでの対応が必要になるから、それを嫌ったのだろうか。

「ウォータージャケット形状を浅くしてしまうとボア変形が心配になります。オープンデッキ形状なので、ヘッドボルトで締めるボアが変形しやすくなります。できるだけ吸気側も排気側も対象な水路を成形し、変形を抑えるための深さを確保し、流れる水の量と速度は詰め物でコントロールする。そういう考え方です」

 言われてみればそのとおりである。このエクスパッド付きWJSを使ったことで、排気側上部の冷却水流れを確保してノッキングを抑制できたという。

エクスパッド(EXPAD)を保持する面の裏側に、このような縦(上下)方向の壁がある。画面斜め左下にある小さな壁とともに、ボア間の冷却性能を高めるための整流板である。この壁にそって水流が上昇しボア間の水路への水の滞留を確保する。この加工を行なったことで最大熱効率が40%に届いた。
ステンレス材の曲げ加工であり金型で対応できるだろうが、加工の手間は増える。それでも採用した加工である。ちなみにエクスパッドそのものは、水路への「詰め物」がもたらす効果をずっと研究していた人がいたそうだ。「ノッキング抑制に効く」と言われ、太田ユニット主査はアイテムに取り入れた。こうした引き出しの多さが日本の自動車産業の強味である。

「それと、ものすごく細かいことなのですが、この形状が最後の最後で効きました」

 ステンレス製のエクスパッド保持板の裏側、シリンダーボアと反対側のボア間になる部分に壁が立っている。折り曲げ加工を施して、大きな壁と小さな壁が立っている。

「ボア間を冷却してノッキングを改善するための壁です。施策の最後で追加しました。WJSの形状を工夫して冷却水の流れを変えればボア間をうまく冷やすことができる......というアイデアはもともとありました。しかし、加工が必要になり、コストが上がってしまいます。じつは開発の最終段階まで熱効率は40%に届いていなかったのです。あと少し、というところでした。この壁形状の加工を施したWJSを試してみたら40%に届いたのです。さまざまな部品についていろいろなアイテムを盛り込みましたが、最後の最後に採用したアイテムがこのWJSでした」

 冷却水の流れをほんの少し変える工夫が最大熱効率40%達成の鍵だったことになる。エンジンを構成する部品のひとつひとつを検証し、効率アップのための改良を施し、最終的には全体の80%を刷新した。それでも届かなかった最後の小数点以下をWJSが救った。そう伺ったとき、冷却損失の改善がいかに効率に効くかという事実とともに、エンジン設計の現場にはいつも何かドラマがあるのだなぁ......という思いを強くした。

プリウス、熱効率40%への道程(下)へ続く

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