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Nissan Pro-Pilot 2.0 ポイントは世界最高レベルの3D高精度地図データ 「精度は、前後方向で1m以内、左右方向で5cm以内」日産プロパイロット2.0を読み解く

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日産の運転支援システム「プロパイロット」が2.0へ進化したことは、新聞やTVの報道でも目に(耳に)していることだろう。「手放し運転が可能になった」ということだが、「運転支援」から「自動運転」へ進化するためのひとつのマイルストーンになる技術である。このプロパイロット2.0をきちんと理解すること非常に重要だ。ジャーナリスト、世良耕太がプロパイロット2.0を読み解く

TEXT◎世良耕太(SERA Kota)

日産プロパイロット2.0のデモ動画

 日産自動車は5月16日、運転支援システム「プロパイロット」の進化形である「プロパイロット2.0」を発表した。2019年秋に発売されるスカイラインが搭載第1号となる。海外のマーケットにも導入する予定だ。

 プロパイロットは高速道路の単一車線で機能する運転支援技術で、渋滞走行と長時間の巡航走行の2つのシーンで、アクセル、ブレーキ、ハンドルの制御を自動で行なう。ドライバーは前方を注視し、ハンドルに手を添えているだけでよく、負担が大幅に軽減される。

 高速道路の同一車線内で機能するのは「2.0」も同じだ。ただし、ハンズオフ(ハンドルを握らなくてもよい)に対応している。「ナビゲーションシステムで設定したルートを走行し、ドライバーが常に前方に注意して道路・交通・自車両の状況に応じ直ちにハンドルを確実に操作できる状態にある限りにおいて」、同一車線内でハンズオフが可能になる。

 すでにプロパイロットと同様の機能、あるいはアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC:日産の呼称ではインテリジェント・クルーズコントロール)を体感したことがあるなら、「ハンズオフ」を成立させるのは技術的なハードルが高いことに想像が及ぶと思う。ACCはドライバーがセットした車速を上限とし、システムがアクセルとブレーキの操作を行ない、車速に応じた車間距離を自動的に保ちながら走行する機能だ。

 この機能はシステムとドライバーとの信頼関係が成立しないと、とても信用できない。前のクルマがブレーキをかけたら、きちんと減速してくれるだろうかとか、車線変更してきたクルマが割り込んできたらすぐに反応してくれるだろうかとか、曲率が小さめのカーブが迫っているけど、車線をはみ出さずに走ってくれるだろうかとか、気を遣うシーンが矢継ぎ早にいくつも現れて「大丈夫?」と心配になる。

 ところがシステムと一定の期間付き合い、「これなら大丈夫」と信頼できるようになると、高速道路での移動の負担は格段に軽減される。プロパイロットでは一定の時間ハンドルから手を離していると、ハンドルを握るよう警告が出る。段階を経て強くなる警告を無視すると、最後には機能が解除される。「2.0」はハンドルから手を離していても警告は出ない。実際に体感していないのでなんとも言えないが、ハンドルを握っている必要がないのは、さらなる負担軽減につながるはずだ。

ドライバーモニタリングシステムがドライバーを監視する。

 ただし、よそ見は許されない。プロパイロット2.0はドライバーモニターカメラを備えており、(機能がオフの状態でも)ドライバーが前方を注視しているかどうか、常に監視している。まぶたが閉じているなどの状況が確認された場合は、警告を行ない、最終手段としは緊急停止する。プロパイロット2.0は、高速道路での移動を自動化するシステムではなく、あくまでもドライバーの負担を軽減するシステムであることに留意したい。

 2016年に発売されたセレナで初めて搭載され、その後、リーフやエクストレイル、デイズに採用が広がっているプロパイロットと、高速道路の同一車線内ハンズオフが可能なプロパイロット2.0でシステム構成上異なるのは、「2.0」が3D高精度地図データを採用していることだ。全国約1万4000kmに及ぶ高速道路の形状をセンチメーターレベルの細かさで3Dデータ化し、車載している。この地図データには、道路の形状だけでなく、すべてのレーンの区分線や速度標識、案内標識の情報も含んでいる。地図データの更新は年に数回を予定しており、テレマティクス(移動体通信システム)を利用し、自動配信により行なう。

各種センサー満載だが、LiDAR(レーザースキャナー)は使わない理由

 プロパイロット2.0を機能させるには、道路上のどのポイントに自車がいるのか、位置を特定する必要がある。まずGPSによっておおよその位置(10m程度の精度)を特定し、実際の画像情報と3D高精度地図データの情報を照らし合わせ、特定精度を高める。精度は、前後方向で1m以内、左右方向で5cm以内だという。プロパイロットは単眼カメラを用いているが、2.0は「トライカム」と呼ぶ、画角と焦点距離の異なる3つのカメラを利用し、左右の広い範囲と遠くを高いレベルで捉え、高性能なプロセッサーで処理し、必要な情報をシステム側に送る。

 トライカムを含め、7個のカメラと5個のレーダー、12個のソナー(超音波センサー)で360度の周囲センシングを行なうのも、2.0の特徴であり、プロパイロットとの相違点だ。「なぜ、LiDAR(ライダー:レーザーを用いたイメージスキャナー)を使わない?」の質問に日産自動車 AD/ADAS先行技術開発部 部長の飯島徹也氏は、「レーダーとソナーは高解像度の最新型を使っています。現時点では、レーダーとカメラの性能を超えるパフォーマンスを与えてくれるライダーは存在しないので、このシステムでライダーを使う必要はなく、使っていません」と答えた。

 プロパイロット2.0の特徴の3つめは、すでにプロパイロットでも定評のあるインターフェイスで、360度センシングで得た情報をリアルタイムに、しかも車線が実線なのか破線なのか黄線なのか、隣の車線のどの位置にどんな種類の車両がいるのか、状況が直感的にわかるよう表示することだ。

 高速道路の同一車線内でハンズオフを可能とするだけでなく、追い越し時の車線変更を支援するのも2.0の特徴だ。この場合、ドライバーはハンドルに手を添える必要がある。システムが前方に遅いクルマを検知すると、「車線変更するか?」とドライバーに問いかけてくる。ハンドル上のスイッチを押せば、システムはドライバーに追い越しの意志があると判断。ターンシグナルを自動点灯し、自動で車線変更を行なう。追い越しが完了すると、同じ手順で元の車線に戻る。

 飯島氏は「プロパイロット2.0はどこをとっても世界最高レベル。とくに、3D高精度地図データと360度センシングは、(センサーで捉えた情報を処理する)人工知能の採用状況を見ても、世界最高レベルの技術。だから、簡単にこれを超えて次のステップに行くことはできないし、時間がかかる」と説明した。

 全国1万4000kmの高速道路をハンズオフで無事に走り切るために想定し、シミュレーションを含めて確認したシーンは1万を下らないという。この先のステップは市街地でのハンズオフになるが、総延長は高速道路とは桁違いだし、高速道路と違って対向車もいれば、歩行者や自転車もいて、それぞれがランダムに動いている。その道のスペシャリストが「簡単ではない」「時間がかかる」と言っている点に注目しておきたい。

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