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マクラーレンGTで地中海の景色を堪能するドライブ! ピュアスポーツカーばっかり作っているマクラーレンがグラン・ツアラーを作ったらどうなるのか?【マクラーレンGT試乗記】

  • 2019/11/20
  • GENROQ編集部
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McLaren GT

世の中のSUVブームに唯一無関心なマクラーレンが、新たなシリーズとなるGTを送り出した。スーパースポーツカーの高性能とラグジュアリーカーの快適さを両立したというこのクルマは、同社の歴史の中でも最も洗練された1台である。
REPORT●西川 淳(NISHIKAWA Jun)
PHOTO●McLaren Automotive

※本記事は『GENROQ』2019年11月号の記事を再編集・再構成したものです。

 マクラーレン=卓越のミッドシップスーパーカーパフォーマンスを持ちつつも、GT=快適で実用性の高いラグジュアリーカーというキャラクターを有したマシン。マクラーレンGTの誕生だ。

 どうしてマクラーレンに快適なマシンが必要なのか? 実をいうと、より快適なモデルを望むという傾向は他ブランドも含め全世界的なもの。その回答として、あるブランドはSUVを造り、またあるブランドは4シータークーペを造った。

 けれどもマクラーレンといえばこれまで、メタルシャシーのロードカーを造ったことのないピュアスポーツカーブランドだ。今となっては世界で唯一のミッドシップカー専門ブランド(年産1000台以上)でもある。誰もマクラーレン製SUVなど望んではいないだろうし、マクラーレンにもそのつもりは毛頭ない(遠い未来は分からないけれど)。とはいえ、なかにはマクラーレンを愛するがあまり、たとえば妻と2人で行くロングドライブにも快適なウォーキング向けの1台が欲しい、という顧客がいたとしてもおかしくない。

4683㎜という長い全長を持つボディは、GTと言う名にふさわしい優雅なラインを描 く。路面とフロントバンパーの間隔は110㎜もある。

 マクラーレン版コンチネンタル・グラン・ツアラー、と書けばロマンチックではないか。ロンドン郊外に住む紳士と淑女が久しぶりのバカンスに南仏はサントロペまでマクラーレンGTとともに出掛ける。道中の快適さはもちろん、旅先での機能性に南仏の風光明媚なワインディングロードにおけるドライビングファンなど、すべてを兼ね備えたモデル、と書けば、大陸ドライブとは無縁のわれわれ日本人だって食指が動くというもの。

 国際試乗会はサントロペのゲストハウスを起点に南仏を駆け巡るという、正にブリティッシュ・グラン・ツアラーのためのロケーションで行われた。地中海の風を浴びながら、強い陽射しのもとに佇むマクラーレンGTは、これまでのシリーズとはまるで違って、宝石のように煌めいている。シンプルで優美なシルエットと、クォリティの高いボディペイント、精緻なディテールが、従来のマクラーレンモデルにあったアスリート的な匂いを完全に封じ込め、気品さえ漂わせていた。

 大柄である。なかでも幅の広さと前後オーバーハングの長さが印象的だ。ハンマーのようなノーズのアングル、高さともに実用性重視で、ハイトコントロールを使えばスポーツサルーン級の使い勝手となるから、知らない旅先の道でも安心だ。

 大きなガラス製ハッチゲートの下には420ℓものラゲッジスペースがあり、小型のゴルフバッグを飲み込む。その下にエンジンが収まるが、クーリングの工夫もあって、さほど熱くはならない。フロントブートは150ℓで、併せて570ℓ。ミッドシップスーパーカーとしては異例の容量だ。

 とはいえエレガントな容姿のナカミはといえば従来シリーズと同様、アスリートのまま。GT専用に開発されたカーボンファイバーモノコックボディ=モノセルⅡ―Tを起点に基本的にはスーパーシリーズと同様のメカニズムおよび制御系を積んだが、すべてにGT専用のチューニングが施された。なかでも注目はやはりエンジンだ。スーパーシリーズと同じM840Tながら末尾にEを加えた専用仕様で、低慣性の小型タービンを使い、ピークパワーの代わりに実用域でのトルク性能を重視したスペックとした。また、ラゲッジスペースを稼ぐためにエンジン高を低め、新たなエキゾーストシステムを採用する。同様に、シャシーやサスペンション、ステアリング、トランスミッションなどの制御もコンフォート性を考慮した。

 モノセルそのものも専用デザインだ。開口部を拡げて乗降性を高めたうえ、リヤにカーボン製のブリッジ構造物を付け加えた。これにより、大きな電動ガラスハッチゲートの装備を可能としている。

他のモデルと同様のカーボンモノコックのシャシーとディヘドラルドア。さらに大きく開くリヤハッチを備える。
ミッドエンジンの搭載位置を100㎜下げ、リヤのラゲッジスペースは420ℓを確保。ゴルフバッグも積載できる。

 開けやすくなったディヘドラルドアを上げ、モノセルを跨いで室内へ。他シリーズとは一線を画すラグジュアリーなインテリアに思わずため息が出る。お馴染みのハンドリングとパワートレインのモードボタンをアクティブにし、コンフォートを選んで走り出す。

 静かに目覚めた4ℓV8ツインターボは低回転域から扱いやすい大トルクをスムーズに発揮する。アクセルワークに自然な反応で実に扱いやすい。軽やかなステアリングパワーと、コントロールしやすいブレーキタッチのおかげで、サントロペの街中を抜ける間はまるでドイツ製スポーツサルーンを駆っているかのよう。スピードバンプでもたいていはリフトを使わずクリアした。

 特筆すべきは乗り心地だ。カーボンモノコックに特有の低周波振動もきれいに取り除かれており、いっそう良くなった乗り心地に上品ささえにじみ出る。

 郊外に出ても、なかなかコンフォートモードから離れられなかった。制限速度を守りつつ、ひらりひらりと意のままに駆けぬけて行く。変速もクルマに任せたままでいい。正確なハンドリングと、息の合った変速が、何とも言えずスウィート。こんなにコンフォートモードから抜けだしたくないスーパーカーなんて初めてだ。

 スポーツもしくはトラックモードで少しばかりサウンドを響かせ、しっとりと重めのハンドルときつめのダンピングを意識しながらのスポーツドライビングは、過去に味わったマクラーレンと同じベクトルにある。やればできる子、というわけで、サーキットでもきっと楽しめることだろう。

 けれども、しばらく攻め込んでいると“もういいか”という気分になって、いま一度コンフォートモードの快楽に浸りたくなる。あえて今、戦わなくてもいいという気分。せちがらい世の中にあって、そうさせてくれる平穏さこそがこのクルマの魅力なのかもしれない。

 それはまたマクラーレンのクルマ造り、モノセル起点のピュアスポーツ哲学、があってこそ生み出された唯一無二の世界観であることを忘れてはいけないだろう。

フィンタイプのホイールもGTによく似合う。ブレーキローターはカーボンセラミックではなくスチールだ。
豪華なインテリアの素材やカラーは豊富な選択肢が用意される。センターコンソールはGT独自のデザインだ。

SPECIFICATIONS マクラーレンGT
■ボディサイズ:全長4683×全幅2095 (ドアミラー含む)×全高1213㎜ ホイールベース:2675㎜
■車両重量:1530㎏(DIN)
■エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ 総排気量:3994㏄ 最高出力:456kW(620㎰)/7500rpm 最大トルク:630Nm(64.2㎏m)/5500~6500rpm
■トランスミッション:7速DCT
■駆動方式:RWD
■サスペンション形式:Ⓕ&Ⓡダブルウイッシュボーン
■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク
■タイヤサイズ(リム幅):Ⓕ225/35R20(8J) Ⓡ295/30R21(10.5J)
■パフォーマンス 最高速度:326㎞/h 0→100㎞/h:3.2秒
■環境性能 CO2排出量:270g/㎞ 燃料消費量(EU複合):11.9ℓ/100㎞
■価格:2645万円(消費税10%)

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