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『さよなら』なの!? 三菱アイミーブ(i-MiEV) 「〜がなかったら」「〜だったら」i(アイ)とi-MiEV(アイミーブ)は違った境遇になったはず。「iとi-MiEVをめぐる秘話」を明かす

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2008年1月のアイミーブ報道試乗会。車両は完成していたが、モーターとLiBの制御プログラムはまだ最終決定前だった。このときは、ステップATのようにややのったりした感触だった。

三菱アイミーブ(i-MiEV)が今年度内に生産終了するというニュースが報じられた。三菱自動車の正式発表ではなく「関係者の話」がネタ元のようだが、否定コメントが出なかったということは、「そのとおり」と考える理由になる。リチウムイオン2次電池を搭載した新世代の量産BEV(バッテリー電気自動車)はアイミーブが世界初だった。2009年6月の発売から現在までの累計販売台数は約2万3000台。この数字をもって「不成功」「売れなかった」と片付けるのは簡単だが、アイミーブはBEVをビジネスにする難しさを世の中に示した。その足取りを振り返る。
TEXT◎牧野茂雄(MAKINO Shigeo)

毎月の第2金曜日、三菱グループ企業の会長・社長が集う親睦会、「金曜会」が開かれる。現在は27社だそうだ(ちなみに三菱鉛筆は旧三菱財閥系の企業ではない)。その昔、筆者が新聞記者として自動車産業を取材していたころ、金曜会のことは三菱グループ企業の役員の方々からいろいろと伺った。いっさい表立って報じられることのない親睦会だった(現在でも)が、この会でBEVの話が出たと聞いたことがある。

この件は、私に話をしてくれた方との約束で詳細は書けない。筆者にとっては墓場まで持ってゆかなければならない類の話(多すぎるのです)だが、いくつかの証言と状況証拠と突き合わせると、その後にアイミーブとなるBEVは三菱グループおよび経済産業省の「雑談」がきっかけだったのだろうとの推測を披露してもいいだろう。

アイミーブのベースとなった「i」は2003年のIAA(フランクフルト・モーターショー)で披露される3年ほど前に先行開発が始まっていた。この件を筆者が聞いたのは、たしか2000年2月だった。当時、筆者は某自動車スクープ誌の編集長だったため、この手の情報は専門だった。「RR(リヤエンジン・リヤドライブ)の小型車について社内でスタディが始まった」と聞いてまず思ったのは、果たしてRR方式の量産車に開発GOサインが出るかどうか、だった。

2000年7月、三菱自動車でリコール隠しが発覚し業績が急変したあと、ダイムラークライスラー(DCX)が三菱自に出資し、このRR小型乗用車のプロジェクトは一度立ち消えになるが、ふたたび発覚した2004年のリコール隠し事件でDCXが三菱自から資本を撤収したあと、短期間で市販できる新商品として量産GOになる。

2008年1月のアイミーブ報道試乗会。このあと盛況になる急速充電器需要には日本の防衛関連企業が関わった。単価が下がらない理由はここにもあった。

余談だが、2000年の三菱「ふそう」トラックの車輪脱落事故は、国内の大型トラックメーカー4社が使っていた共通部品の不具合と、点検項目の削減という道路運送車両法の改正とが重なったことがもたらした不幸だった。この一件にまつわる話は墓場まで持ってゆくつもりはないので、当時の国交省関係者諸氏が定年退職されたら書き残そうと思う。

2005年1月に三菱グループの支援で三菱自は再スタートするが、その時点では「i」の開発は佳境に入っていた。ただし、IAAで発表されたコンセプトカー(全長3516×全幅1505×全高1514mm)をひとまわり小さくした軽自動車規格で、だった。2006年1月に「i」は発売され、その年の10月に「i」のBEV仕様としてアイミーブが発表される。この時点でのアイミーブは官公庁、電力会社、金融機関といったフリートユーザーをターゲットにしていた。

開発のなかで重要な地位を占めたのはリチウムイオン2次電池(LiB)の開発と量産だった。当時はまだ、自動車のような酷暑酷寒と振動や衝撃にさらされる使用環境に耐えるLiBは存在しなかった。同時に、BEVにとって2次電池はパワートレーンの一部であり、専用品の開発およびその量産は「特定の電池メーカーとの間で行なう」と考えられていた。

トヨタはHEV(ハイブリッド・エレクトリック・ビークル)開発に当たりニッケル水素電池をパナソニックと共同開発し、トヨタとパナソニックの合弁会社であるパナソニックEVエナジー(現・プライムアースEVエナジー)が量産を行なっていた。三菱自はGSユアサと組んだ。日産はNECと組んだ。ドイツのVW(フォルクスワーゲン)も2006年に三洋電機(当時)と組んだ。「電池は何でもいい」という時代が訪れるのは、アイミーブのために三菱自/三菱商事とGSユアサが組んだ2007年12月の、さらに10年後である。

2008年1月、開発が最終段階に入っていたアイミーブはメディアに披露され試乗会が行なわれた。そのとき筆者は「もっとダイレクト感があるほうが個人的には好きだ。過敏ではなく、人間がだれでも感じるレスポンス、いわゆるウェーバーレシオ(人間は変化率5%を感じ取るという一般論)程度のレスポンスさえ即座に返せばダイレクト感は伝わるはず」などと生意気なことを言い、世に出たアイミーブに乗ってみて、そのとおりの味にニンマリとした。しかし、2009年7月にまず官公庁と法人向けのリースが始まったとき、こうしたドライバビリティはほとんど評価されなかったようだ。

2007年の東京モーターショーに参考出品されたアイミーブ派生モデル。実際、三菱自はアイミーブ・ベースのSUV的モデルを企画していた。

デビュー当時のアイミーブは車両価格459万9000円。国庫補助が139万円あり、これを使うと320万9000円。それでも「利幅は薄かった」と聞いた。ひょっとしたら利益はなかったかもしれない。GSユアサは電池生産工場の建設のために150億円を超える投資を行なった。現在までの累計2万3000台という生産台数のなかで、初期投資を回収できただろうか。

テスラは18650型というラップトップコンピューターなどに使われていた汎用規格のLiBを使った「汎用品を使ったところに先見の明がある」とも言われるが、テスラはパナソニックにテスラ専用セルの開発・製造を依頼した。この点では電動車に手を染めたほかの自動車メーカーと同じである。

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