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中国「2035年にエンジン車禁止」の本当の内容「中国はエンジンを使うハイブリッド車については“熱烈歓迎”なのだ」

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ロードマップ1.0が中国汽車工程学会から発表された2016年は、中国政府がNEV規制を実施する以前だった。筆者は昨年、中国政府に近い関係者からこんな話を聞いた。

「NEV規制導入の前、中国政府はこの規制が国家に浸透し、NEVが売れ、産業構造の転換を達成できると思っていた。海外の自動車メーカーも中国国内でNEVを生産し、中国企業製のLiB(リチウムイオン電池)が大量に売れ、中国は電動車分野での価格リーダーになる。NEV価格は量産効果によってどんどん下がる。HEVをNEVにカウントしない理由は、HEVは半分がICEであり、ICE技術が必須だからだ。この分野はどう逆立ちしても日欧米に中国はかなわない。だからHEVを排除した。ところが、思ったようにNEVは売れなかった。とくに補助金を減額して以降はNEVの売れ行きがふるわない。こうなるとは思っていなかった」

「当面はHEVに頼るほうが賢明」という判断

すでに昨年夏からNEVの売れ行きはガタ落ちだった。理由は補助金の大幅カットだった。その結果が今回のロードマップ2.0には反映されている。中国として石油消費を抑えるためには、当面はHEVに頼るほうが賢明であるとの判断である。

じつは、中国政府が描いた電動化へのプランは、あちこちで失敗している。まずは「中国政府が認定した企業から中国製のLiBを購入して搭載しないとNEVのプラスクレジットは与えない」という規制。これは約1年半で白紙撤回された。その次に打ち出した「中国版テスラ育成計画」であるBEV新興企業の育成策は、国内外の投資家の厳しい選択眼から継続が困難になり、一時は80社以上あった新興メーカーは、NIO(蔚来汽車)や小鵬汽車などほんの数社を除いて全滅した。ほとんどの企業が未完成の(言い換えればいい加減な)デジタル設計図しか持っていなかったため、量産に必要な投資を集めることができなかった。

コロナ禍前の北京。10年間で2億3000万台以上という新車急増は世界のどの国も経験したことがない。中国の国土は広大だが、自動車需要の8割以上が沿岸部の都市に集中しており、北京や上海などの交通渋滞は東京や大阪の比ではない。

こうした失敗の経験がロードマップ2.0には反映されている。当初の目標である「NEV普及」というカンバンを降ろすことなく、つまり習近平政権のメンツは保ったままで石油消費を削減するには、ロードマップ2.0に示された内容の実施がもっとも現実的。そういう判断なのだろう。

もうひとつ、筆者は中国の研究者からこんな話も聞いている。

「中国はCO2が温暖化など気候変動の理由のすべてだとは思っていない。森羅万象はそんな単純なものではない。中国科学アカデミー会員のある熱力学専門家は、太陽活動の影響のほうが人為的CO2排出よりもはるかに影響が大きいと試算した。ただし諸外国からCO2排出で非難されないような行動オプションは政府内でつねに考えられている」

非常に現実的であり、かつ科学的な発言だ。ロードマップ2.0がICE廃止を謳っていない点も現実的だ。石油消費削減は中国の国家財政と安全保障に関わる問題であり、諸外国の環境論議に巻き込まれることなく自己完結したい。そんな意思が伝わってくる。

ただし、実現のためには海外のHEV技術が欲しい。トヨタが昨年4月にTHS(トヨタ・ハイブリッド・システム)の特許2万3740件を2030年末までの期限で無償開放した件で、いま中国メーカー数社が動いている。中国版THSが生まれる可能性が高まっていると筆者は見る。

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