連載

自衛隊新戦力図鑑

ドローンへの対抗手段がなかった兵士

さまざまなドローン(無人航空機)のなかでも、兵士個人にとって脅威となっているのが「FPVドローン(一人称視点ドローン)」と呼ばれる小型ドローンだ。ドローンに取り付けられたカメラの映像を、操縦者が自らの視点(一人称視点)のように操作できる。

操縦者は、ドローンから送られた映像をゴーグルで見ながら操縦する。こうした操縦システムは、映像送信技術の高速化・小型化により実現した(写真/アメリカ海兵隊)

ドローンへの対抗手段がなかった兵士

ウクライナ戦争ではロシア-ウクライナ双方が、このFPVドローンに爆弾を搭載し、車両や陣地、または兵士個人への自爆攻撃に使用している。こうした小型飛行物体に対処でき、なおかつ兵士個人が携行可能な武器は、これまで存在しなかった。そのため、現在さまざまな対策が試みられている。

もっとも普及しているFPVドローンは全長30~40cm程度の4枚ローター型で、低価格かつ量産性の高さを追求した結果、単純なフレームに制御装置やカメラなどを取り付けただけの簡易な構造のものが普及している。胴体上にバッテリー、胴体下に爆弾などを搭載する(写真2点/アメリカ陸軍)

有力な対策のひとつに電波妨害がある。FPVドローンと操縦者のあいだの通信を寸断するものだ。しかし、電波妨害対策として光ファイバー有線誘導型が2024年頃に登場したことで、充分な対策とは言えなくなってしまった。

電波妨害用の機器にはさまざまなものがある。写真は「ドローン・ガン」と呼ばれるタイプで、目標のドローンに向けて使用する(写真/アメリカ陸軍)

物理的にFPVドローンを破壊する

もっとも確実な対策は、物理的に破壊することだ。代表的な手段が散弾銃(ショットガン)だろう。クレー射撃や鳥類の狩猟に用いられている散弾銃は、一定範囲に複数の散弾が広がるため、ライフルのような一発弾より空中の小さな目標を攻撃しやすい。

対ドローン専用の散弾銃も開発された。イタリアのベネリ社が開発した「ベネリAIドローン・ガーディアン」だ。散弾の大きさや広がり具合を対ドローン用に最適化したもので、50m以内で高い迎撃能力を発揮するとメーカーは主張している。

ベネリ社の「ベネリAIドローン・ガーディアン」。弾薬の広がりと威力のバランスを考慮し、直径3.3mmの4号散弾を使用する。さらに銃身の先を絞り、小型ドローン対処に最適な散弾の広がりとなるよう調整されている(写真/ベネリ)

また、ライフルに搭載する特殊な対ドローン照準器も開発されている。イスラエルのスマートシューター社が開発した「SMASH 2000L」型照準器は、高度な追跡アルゴリズムに基づいて飛行物体の未来位置を計算し、最適のタイミングでの射撃を補助する。

歩兵用ライフルの上に載っている、やや大きめの照準器が「SMASH 2000L」(写真/アメリカ陸軍)

ライフル弾そのものを改良するアイデアもある。アメリカのドローン・ラウンド社が開発した対ドローン弾は、同社の説明によれば散弾を内包したライフル弾であり、射程の異なるふたつのタイプ(射程50m/100m)があるようだ。すでにアメリカ陸軍では訓練にも使用されている。この弾薬は散弾銃や照準器と違い、新しく“対ドローン用の専用装備”を追加することなく、弾の交換だけで兵士に対ドローン能力を与えることができる点が優れている。

現時点では、これら対ドローン火器がどれほど有効なのか判断ができない。しかし、各方面でさまざまな歩兵用対ドローン火器の取り組みが行なわれており、現在のようなFPVドローン優位の現状は、今後変化していくかもしれない。

対ドローン弾で破壊されたFPVドローン。メーカーの説明によれば、この弾は8つの散弾を内包した射程50mの「K型弾」と、5発の弾を内包した射程100mの「L型弾」があるようだ。すでに兵士に支給されているM4ライフルに、そのまま使えることは大きなメリットだ(写真/アメリカ陸軍)

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