ホンダらしい“走る楽しさ”を小型EVに注入

ホンダ・Super-ONE

ホンダは2026年5月21日、新型小型EV「Super-ONE(スーパーワン)」を発表した。発売日は5月22日、全国メーカー希望小売価格は339万200円である。駆動方式はFF、乗車定員は4名。グランドコンセプトは「e: Dash BOOSTER(イー ダッシュ ブースター)」で、日常の移動を刺激的で気持ちの高ぶる体験へ変えるEVとして企画された。

スーパーワンは、軽乗用EV「N-ONE e:」のプラットフォームを活用しながら、全幅を拡大した専用シャシーを採用する。ワイドなタイヤを包み込むブリスターフェンダーを備え、軽自動車の枠を超えた登録車として展開されるモデルだ。既存の軽EVの資産を活用してコストを抑えつつ、専用シャシーやワイドトレッドによって走りの楽しさを高めたところに特徴がある。

シティターボIIを思わせるロー&ワイドなデザイン

小型EVクラス最軽量となる1090kgの車両重量。

外観は、低く構えたロー&ワイドなスタンスを強調するデザインとした。フロントとリアには専用エアロとエアダクトを備え、デザイン性だけでなく走行性能を支える機能性も持たせている。発表会では、1983年に登場し「ブルドッグ」の愛称で親しまれたシティターボIIからインスピレーションを受けたことも説明された。往年のホットハッチの記憶を、現代のEVに置き換えたレトロモダンな提案である。

1345mmのトレッドと大軽ワイドタイヤの採用で、安定感のあるハンドリグを実現する。

シャシー面では、N-ONE e:に対してトレッドを40mm拡大。車両重量は1090kgで、ホンダ調べでは2026年5月時点の小型EVクラス最軽量とされる。トレッドは1345mmで、大径ワイドタイヤとの組み合わせにより、旋回時や高速走行時の安定感を高めた。ドライブモードは「ECON」「CITY」「NORMAL」「SPORT」「BOOST」の5段階で、CITYモードではアクセルペダルのみで加減速から完全停車まで行えるシングルペダルコントロールも採用する。

シティターボIIとSuper-ONE

室内装備では、BOSEと共同開発した「BOSEプレミアムサウンドシステム」をホンダの小型モデルとして初めて標準装備した。荷室に置かれる13.1Lの大容量サブウーファーを含む8スピーカー構成で、走りだけでなく車内での音響体験も重視している。9インチのGoogle搭載Honda CONNECTディスプレーも標準装備し、コネクテッド機能を含めた日常性も確保した。

運転に集中できる水平基調のインパネは視界が良い。
9インチのGoogle搭載Honda CONNECTディスプレーを標準装備。
シートはホールド性の高い専用設計のスポーツシートを採用。

BOOSTモードで最高出力は70kWへ拡大

走行面の目玉が、専用開発された「BOOSTモード」だ。通常モードでの最高出力は47kWだが、BOOSTモードでは70kWまで引き上げられる。さらに、7段変速の仮想有段シフト制御と、アクセル操作に応じて車内へ仮想エンジンサウンドを響かせるアクティブサウンドコントロールを連動させる。EVでありながら、エンジン車を操るような加速感や変速感を演出する仕掛けである。

演出は音や加速だけではない。BOOSTモードでは、助手席側のLEDインパネラインイルミネーションとトリプルメーターの表示が青から紫へ変化し、視覚的にもドライバーの気分を高める。EVの滑らかさや静粛性に加え、あえて音、変速感、メーター表示といったアナログ的な要素を取り込んだ点に、スーパーワンの個性がある。

BOOSTモードで表示される3連メーターのグラフィック。

一充電走行距離はWLTCモードで274km。充電時間は普通充電で約4.5時間、急速充電で約30分とされる。急速充電は充電量80%までのおおよその時間である。さらに、ディーラーオプションのAC外部給電器「Honda Power Supply Connector」を使えば、最大1500Wまでの電気を取り出せる。外出先での電源利用や非常時の電源としても活用できる設定だ。

補助金フル活用で東京都なら実質149万円で購入可能

購入時の大きなポイントになるのが補助金である。スーパーワンの車両価格は価格は339万200円だが、国の補助金が130万円、東京都の補助金が60万円に設定されている。両方を適用できる場合、補助額は合計190万円となり、実質負担額は149万200円という驚きの価格だ。東京都以外の地域でも209万200円と、従来の「EVは高すぎる」というイメージを大きく変える価格となっている。ただし、補助金は居住地や申請条件、予算状況によって変動するため、実際の適用可否は購入時に確認が必要だ。

フリーアナウンサーの安東弘樹さん、ホンダからスーパーワン開発責任者の堀田英智さん、エクステリアデザイナーの中島英一さん、タレントの若槻千夏さんが登壇したトークショー。

発表会で本田技研工業 日本統括部長の川坂英生氏は、スーパーワンを通じて国内市場でホンダのスポーツDNAを再構築する考えを示した。国内市場では軽自動車やミニバンが中心となるなか、EVでも「ホンダらしさ」や走る楽しさを前面に出すモデルとしてスーパーワンを位置づける。日本のEV普及見通しについては従来予測より緩やかな普及を見込む一方で、スーパーワンのように「欲しい」と思わせるモデルを投入することで市場を活性化させる狙いを語った。

プレゼンテーションに登壇した、本田技研工業 総合地域本部 日本統括部 川坂英生統括部長

ゲストとして登壇した若槻千夏さんは、紫と黄色のカラーリングについて、自身のアパレルブランドでも注目していたトレンドカラーと重なるとコメントした。レトロなデザインは若い世代にも響くとし、BOSEサウンドシステムについてはライブ会場のような臨場感があると評価。補助金適用後の価格についても、EVは高価という印象が変わる水準だと受け止めていた。

ゲストとして登壇したタレントの若槻千夏さん。本人はクルマの運転も好きだが、HONDAロゴが大好きで、ウエアを何枚も所有していると語った。

先行予約7000台超と好調スタート、50代以上男性から高い支持

発表会では、先行予約が7000台レベルに達していることも明らかにされた。予約者は約9割が男性で、50代以上が半数以上を占めるという。ホンダのスポーツハッチやシティターボIIの記憶を持つ世代に、スーパーワンのデザインや走行演出が強く響いていることがうかがえる。

ホンダは、スーパーワンを日本市場だけにとどめない。発表会では、日本発売後1年以内に英国、アジア、オセアニア地域へ順次展開する計画も説明された。ホンダは軽商用EV「N-VAN e:」、軽乗用EV「N-ONE e:」、乗用EV「INSIGHT」に続いてスーパーワンをEVラインアップへ加え、2028年中にはN-BOXのEV版も投入する予定だ。スーパーワンは、EVの合理性にホンダらしいFUNを重ねた小型ホットハッチとして、日本のEV市場に新しい選択肢を示すモデルとなる。

アナウンサーの安東弘樹さんが初めて買ったクルマは、シティターボIIだったとトークショーのながで語っていた。