マイナーモデルチェンジでは2026年度から新たな開発手法を適用、フルモデルチェンジについても開発期間の半減へ
ホンダが、次世代車の基盤となるプラットフォーム開発で大きな一手に出たようだ。Bloombergは、同社がインドのエンジニアリングサービス企業「タタ・テクノロジーズ(Tata Technologies)」に、新たな車両開発プログラムを委託したと報じた。

注目されるのは、単純な設計支援にとどまらない点だ。報道によると、タタ・テクノロジーズは「end-to-end」と呼ばれる包括的なプラットフォーム開発を担当するとされている。

新プラットフォームは内燃機関(ICE)、ハイブリッド(HEV)、バッテリーEV(BEV)に対応し、複数の車種へ展開できる設計になると伝えられている。実現すれば、長年にわたって車両開発を自社主導で進めてきたホンダにとって、大きな転換点となる。
もっとも、「タタ」と聞いて自動車メーカーのタタ・モーターズを思い浮かべる人も多いだろう。
今回名前が挙がっているタタ・テクノロジーズは、同じタタ・グループに属するものの、自動車や航空宇宙、産業分野などで設計・開発支援を手掛けるエンジニアリングサービス企業だ。
つまり、ホンダがタタ・モーターズの車両をベースに新型車を開発するわけではない。外部企業の開発力やノウハウを、これまで以上に深く車両開発へ取り込む動きといえる。
一方、このプラットフォームを採用する車種や市場、投入時期などは明らかになっていない。ホンダも競争力強化に向けて外部との提携を常に検討しているとの姿勢を示しているが、今回の個別案件について詳細は明らかにしていない。
では、なぜホンダはここまで踏み込んだ開発改革を進めようとしているのか。
その背景にあるのが、2026年5月の「ビジネスアップデート」で打ち出された「トリプルハーフ」だ。
ホンダは2025年を基準に、「開発費」「開発期間」「開発工数」をそれぞれ半減するという目標を掲げた。マイナーモデルチェンジでは2026年度から新たな開発手法を適用し、フルモデルチェンジについても2028年に開発を開始する案件から開発期間の半減を目指す。
EV市場の成長が当初の想定より鈍化する一方、電動化やソフトウェアへの投資は避けられない。さらに、地域ごとのニーズに対応しながら新型車を短期間で投入することも求められている。
そこでホンダが進めているのが、自社のコア技術と外部リソースを組み合わせる開発体制だ。商品企画や性能目標、ブランドとしての方向性をホンダが握りながら、外部企業のエンジニアリング能力を積極的に活用する。今回の報道は、その新しい開発スタイルを象徴する動きともいえる。
もうひとつ注目したいのがインドだ。
ホンダは北米、日本と並んでインドを重要市場に位置づけ、2028年から全長4m未満のモデルやミッドサイズモデルなど、新たな戦略車を投入する方針を示している。
今回報じられたタタ・テクノロジーズとの車両開発プログラムが、これらインド向け戦略車と直接関係するのかは明らかになっていない。ただ、ホンダがインドでの商品展開を強化するタイミングで、現地に強力な開発基盤を持つ企業との連携が浮上したことは興味深い。
ホンダはこれまでも他社との共同開発や地域ごとのパートナーシップを活用しており、中国では現地パートナーのプラットフォームを利用したNEVの投入も計画している。
そのため、今回の動きを単純な「自前主義の放棄」と見るのは早計だ。むしろ、「ホンダにしかできない領域」と「外部の力を活用できる領域」を明確に分け、開発スピードとコスト競争力を高める方向へ舵を切ったと見る方が実態に近い。
開発費、期間、工数をすべて半減させる「トリプルハーフ」は、従来の開発手法の延長だけでは実現が難しい目標である。
タタ・テクノロジーズとの新たな車両開発が実現すれば、単なるコスト削減ではなく、ホンダのクルマづくりそのものが変わり始めたことを示す象徴的なプロジェクトになる可能性がある。
その新しい開発体制から最初にどんなクルマが生まれてくるのか。そこが今回のニュースで最も気になるポイントだ。





