いすゞ エルガは、いすゞの代表的な大型路線・送迎バスで、様々な路線バスや企業の送迎用に幅広く使われています。新世代にふさわしい路線バスとして2000年にデビューし、2015年に現行2代目モデルのV290系にフルモデルチェンジしました。
この2代目モデルは、開発に際して“次世代ノンステップ・バスの対応”を大きなテーマに掲げていました。そのため、初代モデルよりもノンステップエリア――乗降性を高めるための出入り口との段差をなくした部分――を拡大するために、長さ、通路幅、室内高、および後方段上部の室内高が拡大されています。また、ノンステップエリア拡大のために、ホイールベースの延長とあわせて、フロントタイヤハウス上部への燃料タンクの移設や中扉の後方移設などの様々な工夫や改良が施されています。
ノンステップエリアを拡大することで広々とした室内空間を実現する一方、優先席を前向きにし、伝い歩き棒を新設するなど優先席まわりの安全性も向上させており、これに加えて反転式スロープ板の採用による車いすの乗降性もさらに容易なものとしています。
運転席は圧迫感の軽減と運転スペースの使いやすさを重視した、ドライバーを丸く囲うようなデザインのラウンドフォルムコックピットとなっており、各種スイッチ類が集約され、操作性が追求されています。
また、エンジンには環境・燃費性能の向上を目指して、2ステージターボを搭載した4HK1-TCS型エンジンを採用しています。2ステージターボの搭載により、全回転域において高効率なターボ効果が発揮され、排出ガス中のPM(粒子状物質)を大幅に低減させています。また、EGRクーラーの冷却性能向上と、超高圧噴射化による燃焼状態の均一化で燃費性能がさらに高められています。
さらに、AMT(自動クラッチマニュアルトランスミッション)とATの2種類を設定することで2代目モデルは一段と運転しやすい車両となっています。AMTではクラッチ操作を不要としたアクセルとブレーキの2ペダル方式を採用、ATのようにクリープを利用した微速走行も可能としています。尚、AT車には操作パネルにメンテナンス時期診断機能を追加し、オイルやフィルターの状態をモニターし、最適な交換時期をサービスインジケーターで知らせる機能があります。
また、2代目モデルはノンステップ仕様のみの車型設定となったため、前後オーバーハングを短縮することでアプローチ・アングルとデパーチャー・アングルを増大させ、ノンステップ車でありながらワンステップ車並の走行性を確保しています。
さて、『トミカ』の『No.20 いすゞ エルガ 都営バス』は、東京都交通局が路線バス、いわゆる“都営バス”として使用しているいすゞ エルガをモデルとしています。行先表示が「錦糸町駅」となっていますので、錦13甲または乙など10路線以上が該当しますが、路線を特定するだけ野暮というものでしょう。
現在、都営バスといえばグリーンを基調とした車体カラーでおなじみですが、このグリーン色、実は1982年に都民のアンケートで決定されました。この時、4つの車体カラー案が出されましたが、そのうちの一つは大阪万博会場の太陽の塔などでおなじみの故・岡本太郎画伯が提案されたものだったそうです。ちなみにそれ以前、1968~1981年までは発展した街の色と調和するアイボリー×ブルーが、その後、1981~1982年の1年間だけ視認性の高いイエロー×マルーンが都営バスの車体カラーに使われていました。
また、現在の都営バスの座席には、青地に都営バスのマスコットキャラクター『みんくる』を配した生地が使用されていますが、これは国土交通省が定めた『室内色彩』の基準をもとに決められたそうです。「座席や手すり、通路および注意箇所などは十分な明度差をつけたものにすること」とされているため、天井や壁面、床や通路に用いられているグレー系と十分な明度差のある青色が座席に選ばれたのだそうです。青色系の座席はバリアフリーモデルデザインとして、他社のバスでも多く採用されていますが、都営バスでは、カメラを持っていたり、傘をさしていたり、様々なポーズの『みんくる』が、座り心地のよい座席を楽しく彩っています。
『トミカ』の『No.20 いすゞ エルガ 都営バス』は、この大型路線バスの特徴をよくとらえているモデルだと言えます。路線バスは街中でよく見かける“働くクルマ”だけに、世代や性別を問わず人気が高く、この『トミカ』もまた人気商品となっています。また、都営バスということで、東京土産に購入する人も少なくないとか。このモデルに限らず、バスの『トミカ』は様々な地域の路線バスの仕様で特別品や限定品などが作られていて種類が豊富なため、それ専門のコレクターもいるそうです。
(参考:東京都交通局Facebook)
■いすゞ エルガ 主要諸元 (『トミカ』モデル車種と同一規格ではありません)
全長×全幅×全高(mm):10430~11130×2485×3045(全長は車型による)
ホイールベース(mm):5300~6000
トレッド(前/後・mm) :2065/1820
車両重量(kg):13565~14985(重量は車型による)
エンジン形式:4HK1-TCS型 水冷直列4気筒OHC 直噴 2ステージターボ ディーゼル
排気量(cc):5193
最高出力:184kW(250ps)/2400rpm
最大トルク:735Nm(75kgm)/1600-2300rpm
トランスミッション:6速AMTまたは6速AT
サスペンション(前/後):車軸式エアサスペンション
ブレーキ(前後) :空気式&ドラム(主)/フットブレーキ連動式排気ブレーキ(補助)
タイヤ:(前後):275/70R22.5