もはやオリジナル車両! はとバスを代表する魔改造バスも『トミカ』になっています。

東京観光でおなじみの顔も『トミカ』に! トミカ × リアルカー オールカタログ / No.42 はとバス

発売から50年以上、半世紀を超えて支持される国産ダイキャストミニカーのスタンダードである『トミカ』と、自動車メディアとして戦前からの長い歴史を持つ『モーターファン』とのコラボレーションでお届けするトミカと実車の連載オールカタログ。あの『トミカ』の実車はどんなクルマ?
No.42 はとバス (希望小売価格550円・税込)

『トミカ』の2022年6月現在のNo.42の商品名は『はとバス』となっています。ご存じの方も少なくないとは思いますが、はとバスは車名ではありません。

はとバスは、戦後まもない1948年8月、「観光事業を通じて多くの日本人に夢を、外国の人々には新生平和日本の真の姿を紹介したい」という理念のもとに新日本観光株式会社として創業された定期観光バスおよび貸し切りバス事業を軸とした会社で、1949年3月に東京都から遊覧バス事業を譲渡され、1963年に現在の社名、株式会社はとバスとなりました。2022年6月現在では観光バス事業、路線バス受託事業、不動産事業、ホテル事業の4つの事業を柱としていますが、やはり最も有名なのは創業当初から続き、社名にも反映されている観光バス事業でしょう。

東京駅丸の内口のバス乗り場に集結する、はとバスの2階建てバス群。東京駅のおなじみの光景だ。(PHOTO:はとバス)

その観光バス事業の中でも看板とも言えるのが1949年3月、上野公園や皇居前、浅草寺などをまわる『都内半日Aコース』から出発した定期観光バスです。以来、時代のトレンドや新たな名所などを取り入れた多彩なコース展開で70年以上にわたって親しまれ、つねに“今”の東京を発信し続けています。この定期観光バスの車体には平和のシンボルである鳩が描かれており、利用者や都民から「鳩バス」と親しまれていたことから「はとバス」の愛称が車体に書かれるようになり、それが1963年に社名となったのだそうです。

はとバスは1958年4月に、乗り心地の良いエアサスペンションを装備した車体に冷暖房や回転いすを装備した『走るパーラー』と名付けられた貸切用豪華バスを皮切りに、1963年4月には後席に行くほど劇場のように階段状に着座位置が上がり後席からでも景色が見える『スーパーデラックスバス』、1965年7月にはオープントップにして抜群の開放感を誇る『オープンバス』といった特殊改造バスを次々と導入して好評を博し、1982年12月には外国製の2階建てバス(ダブルデッカー)を導入して話題をさらいました。

『トミカ』』の『No.42 はとバス』のモデルとなっている、はとバスの2階建てオープンバス『’O Sola mio(オー・ソラ・ミオ)』。(PHOTO:はとバス)

以後、2001年4月の完全オーダーメイドの特別車両『はとまるくん』、翌2001年4月の座席を3列28席に変更した豪華仕様車『ピアニシモ』と2003年10月に導入されたエスプレッソ・コーヒーメーカーを搭載した僚車『フォルテシモ』、2009年4月の化粧室付3列シート『ピアニシモⅡ』を経て、はとバスが伝統的に追求してきた圧倒的な開放感と豪華さを兼ね備えた、観光バスの決定版とも言える2階建てオープンバス『’O Sola mio(オー・ソラ・ミオ)』が2009年11月に登場し、2022年現在も現役で活躍しています。

『トミカ』の『No.42 はとバス』は車体の横に書かれている通り、この、はとバスを代表する2階建てオープンバス『’O Sola mio(オー・ソラ・ミオ)』をモデルとしています。『’O Sola mio(オー・ソラ・ミオ)』は三菱ふそうの2階建て観光バス『エアロキング』をベースとして仕立てられていますが、2階席は開放感抜群のオープントップ仕様とされ、それに伴った各種改造が多々施されているため、ベースの『エアロキング』とはかなり異なったものとなっており、はとバスのオリジナル車両と呼んでも過言ではないでしょう。はとバスを代表する車両であることと、はとバスのオリジナル車両と呼べるほどの改造バスであることから、『トミカ』のNo.42は単に『はとバス』という商品名にしているのではないかと思われます。

『’O Sola mio(オー・ソラ・ミオ)』のベースとなっている三菱ふそう エアロキング BKG-MU66JS型 実車フロント/リヤビューと車内。

『’O Sola mio(オー・ソラ・ミオ)』のベースとなっている三菱ふそうの『エアロキング』は残念ながら現在では新車生産されていませんが、1984年にデビューした2階建てバスです。当初は2階席の眺めの良さに注目されて観光バスとして重宝されましたが、2階建てということはジャンボジェット機のように着席人数も多くなるという点に注目され、後には大人数対応の長距離高速路線バスとしても重宝されるようになりました。ディーゼルエンジンの排気ガス規制に対応してその都度改良されましたが、基本的には1984年にデビューしたモデルから大きな変化は有りません。

『’O Sola mio(オー・ソラ・ミオ)』のベースとなっている三菱ふそう エアロキング BKG-MU66JS型 車内透視図。

『’O Sola mio(オー・ソラ・ミオ)』のベースは『エアロキング』の最終型である2008年4月に発売されたBKG-MU66JS型で、排気ガス規制の「新長期規制」に対応するべくエンジンを従来のV型8気筒から、より環境性能に優れた直列6気筒ターボディーゼルの6M70型に変更したのが大きな特徴で、NOxとPMを10%低減した「低排出ガス重量車認定 」を取得するとともに平成27年度重量車燃費基準値も達成し、当時、最高水準の環境性能と経済性能を実現していました。また、このエンジン変更に伴ってホイールベースが短縮されてリヤオーバーハングが長くなったためリヤデザインを変更、大型1枚式エンジンリッドを採用することで整備性を向上するとともにリヤバンパー内にリヤランプ類を設置しスタイリッシュな新しいリヤスタイルとしています。また、エンジンリッド上部のガーニッシュにハイマウント ストップランプとターンシグナルランプを装備し安全性を向上させていました。

現在でも東京の名所観光に活躍している「はとバスの顔」と言っても過言ではない『’O Sola mio(オー・ソラ・ミオ)』を再現した『トミカ』の『No.42 はとバス』は、コレクションの中でも抜群の存在感を示すことでしょう。

■三菱ふそう エアロキング BKG-MU66JS型(2008年モデル) 主要諸元 (『トミカ』モデル車種と同一規格ではありません)

全長×全幅×全高(mm):11990×3780×2490

ホイールベース(mm):5500

トレッド(前/後前/後後・mm) :2035/1840/2065

車両重量(kg):16970

エンジン形式:6M70(T4)型 直列6気筒ディーゼルターボ

排気量(cc):12882

最高出力:309kW(420ps)/2000rpm

最大トルク:1810Nm(185kgm)/1100rpm

トランスミッション:6速MT(OD付)

サスペンション(前後):エアサスペンション

ブレーキ(前後) :エアブレーキ(ドラム式)

タイヤ:(前後): 12R22.5-16PR

キーワードで検索する

著者プロフィール

MotorFan編集部 近影

MotorFan編集部