隠れた名ラリーマシンを生み出すシュコダ
残念ながら日本市場には参入していないが、シュコダはフォルクスワーゲン・グループを構成する重要ブランドのひとつであり、その高い品質から欧州では高い人気を誇っている。そして、シュコダはチェコが共産国家(チェコスロバキア)だった時代から、モータースポーツに力を入れてきた。フェバリット、フェリシア、オクタビアといったラリーカーは、けして総合優勝に絡らむことはなかったが、WRCにおいて愛すべき存在として人気を集めている。
そんなシュコダは、1999年にオクタビアWRCを擁して、悲願のWRCトップカテゴリーステップアップを果たした。2003年からはコンパクトなファビアWRCにマシンをスイッチ。2005年にはラリージャパンにも参戦し、カタカナで「シュコダ」とボディサイドに描かれたファビアWRCは、大きな話題を呼んでいる。しかし、目立った成績を残すことなく、2005年シーズンを最後にWRCトップカテゴリーから撤退。その後は、S2000/R5/ラリー2といったプライベーターテゴリーに、活躍の場を移すことになる。
特に2015年から投入された、ファビアR5は、最新型のファビア・ラリー2 Evoまで、その堅牢な設計と絶え間ないアップデートにより、あらゆるラリーで高い戦闘力を発揮。シリーズトータルで実に450台以上が販売され、WRC2をはじめ、ERCやAPRCなどの地域選手権、世界各地の国内選手権で1700以上の勝利を積み上げている。
現在、活躍するトップドライバーの多くも若手時代にファビアで経験を積んでおり、例えば、カッレ・ロバンペラは2019年シーズンにファビアR5でWRC3 Proで5勝を挙げてタイトルを獲得。トヨタ抜擢の足がかりを掴んだ。
全日本ラリー選手権には、2021年シーズンから福永修がファビアR5を投入。ターマックを中心にスピードを発揮し、トヨタGRヤリスを駆る勝田範彦と最終戦までタイトルを争った。さらに、今シーズンからはヘイキ・コバライネンもファビアR5をドライブ。6戦中5勝を挙げる圧倒的な強さで、現在選手権ランキングを独走中だ。
そんなファビアも、2022年にベース車両がモデルチェンジ。シュコダはこの4代目ファビアをベースとする「ファビアRS ラリー2」を発表した。ファビアRS ラリー2は、フォルクスワーゲン・グループの2.0リッター直列4気筒TSIエンジンをベースに新規開発された1.6リッター直4ターボを搭載。さらにパワートレーンや電子系統も刷新されている。すでに母国チェコで開催されたボヘミア・ラリーでコースカーとして出走しており、2022年7月中にFIAのホモロゲーションも取得。8月26〜28日に開催されるERC第7戦バルム・チェコ・ラリー・ズリンで実戦デビューを飾る予定となっている。
今シーズンは、欧州のイベントを中心にシュコダ・ワークスがテスト参戦を続けると見られており、ファビアRS ラリー2の本格的な販売は来シーズンからになる見込み。残念ながら今年のラリージャパンにニューマシンが登場する可能性は低いと言わざるを得ない。それでもファビアR5でコバライネンや福永がエントリーを表明している。旧型といえども、その低く構えたレーシーなフォルムは一見の価値アリ、ぜひその目で確かめてほしい。