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  • 2019/03/28
  • Motor Fan illustrated編集部

リレーアタックという盗難手法を知っていますか──安藤眞の『テクノロジーのすべて』第18弾

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(PHOTO:CONTINENTAL)
物理的な鍵を用いずに施錠/開錠が可能な現代のクルマ。その便利さが仇になる盗難の手口が広がりつつある。なぜこのような手段が可能なのか、それを防ぐためにはどうしたらいいか、さらには新しい防犯手段として考えられる方策は。
TEXT:安藤 眞(Ando Makoto)

 自動車盗難の手口が、年々巧妙化している。近年、話題となっているのが、「リレーアタック」と呼ばれる方法だ。
 その背景には、電子キーを携帯しているだけで解錠やエンジン始動が可能になるスマートキーの普及がある。車両と携帯キーの双方に送受信機を搭載しておき、車両から長波帯(30〜300kHz)の電波を定期的に発信。それを受信した携帯キーが極超短波(0.3〜3GHz)で暗号を返信し、一致したときだけ、解錠やエンジン始動が可能になるというシステムだ。

鍵穴を使うことはめっきり少なくなったこのところのクルマ。もはやスタンダード装備とも言える普及である。(PHOTO:SUZUKI)

 使用する電波を変えているのは、その特性を利用するため。波長が短い極超短波はアンテナが小さくできるため、携帯キーサイズに内蔵しやすく、長波は電界強度(≒到達距離)の設定精度が高く、キーの閉じ込みを防ぐことができるからだ。
 車両側から出る長波が届く距離は、70cm〜1mに設定されており、エンジンを切った状態でこれ以上、離れると、「キーを持ったドライバーがクルマから離れた」と認識してドアをロックする。だから第三者が解錠したりエンジンを始動したりするのは不可能なはずだが、リレーアタックはこの電波を増幅して携帯キーに送信し、「ドライバーがクルマに近づいた」と誤認させ、暗号電波を発信させてしまう(キー側から出る電波は30mぐらい届く)。その暗号電波を増幅してクルマに受信させれば、クルマも「ドライバーが近くにいる」と誤認し、解錠やエンジン始動が可能になる、というわけである(※1)。

キーレスエントリーの仕組み。ドアノブ本体のLF(長波)アンテナと鍵本体のRF(Radio Friquency:正確に言えばUHF:極超短波のこと)アンテナ間で電波のやり取りをする。(FIGURE:CONTINENTAL)

 これを防ぐ方法としては、携帯キーの電波を遮断することが推奨されている。市販の電波遮断キーケースも売られているが、金属製の缶に入れたり、アルミホイルで包む程度でも大丈夫とのことだ。
 トヨタ車やスバル車の中には、携帯キーの「節電モード」を設定することで、受信待機機能をカットオフできるようにしているものもある(※2)。これを設定すれば、クルマからの信号を受信しなくなるから、暗号を返信することもなく、リレーアタックを防ぐことができる。
 ただし前者は、クルマから降りるたびにスマートキーをケースに入れる必要があるし、後者はスイッチ操作をする必要があり、「キーを出し入れせずに済む」というメリットが失われてしまう。たとえばレストラン等で食事をするためにクルマから離れる際にも、いちいちキーを出し入れする必要が生じる。

参考:ヒロ・コーポレーションの電波遮断ケース「PROTECT CASE」。車のスマートキーやクレジットカードなどから発せられる微弱電波を遮断する。

 何とかこれを自動化できないか?と考えて思いついたのが、加速度センサーの活用である。
 携帯キーに加速度センサーを内蔵しておき、加速度が0の状態が一定時間(30秒程度?)続いたら、自動的にスリープモードに入るようにしておく。キーを携帯しようと持ち上げれば、必ず加速度が生じるから、それを合図にスリープモードを解除すれば良い。
 加速度センサーを使用したON/OFF機能は、すでに自転車のランプ類で実現しており、技術的にもコスト的にも難しいものではない。キー側を替えるだけなので、使用中のモデルへのレトロフィットも可能だ。
 動画のように、歩いて移動しているところを狙われてしまってはお手上げとはいえ、利用者の利便性を阻害することなくセキュリティを高める方法としては、悪くないアイデアだと思うのだが。

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