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内燃機関超基礎講座 | キャブからインジェクターへの転換、そしてスロットルバイワイヤーへ

  • 2021/01/25
  • Motor Fan illustrated編集部
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(PHOTO:伊倉道男)

スロットル・バイ・ワイヤーが生まれたのは、エンジン制御とは無関係の理由だった。だが、その本質的な理由は、キャブレターからインジェクションへという、燃料供給の流れに潜んでいたのである。

ガソリンエンジン黎明期に、燃料供給の方法には様々な試行錯誤があったが、キャブレターというきわめてシンプルで合理的な装置が開発されると、自動車の世界では以後70年近く、それが使われ続けてきた。使用目的によっていくつかの種類があったが、基本的な動作は同じで、それは十分な信頼性を持ち、何より安価だったのだ。しかし、ある時期、キャブレターは突然その限界を迎えることになる。

キャブレターの機構上の最大の特徴は、スロットル操作に対して燃料供給が一定比例であるということにある。それは空燃比が常に一定に保たれるということと同義に見えるが、冬と夏では気温が違い、始動直度と高速運転時ではエンジン内の温度も違う。燃料であるガソリンも、気温によって気化のしやすさ≒密度が違ってくる。つまり状況によって空気と燃料の体積は同じでも密度は変わり、実際の空燃比を一定に保つには、状況によって燃料の供給量を変えなければならない。だが、チョークや加速ポンプ等、便宜的に空燃比を変える機構があるだけで、キャブレターには燃料供給量を自在に調整する機能はないのだ。だから、エンジン始動時にアクセルを踏みすぎるとカブる、標高が高い場所に行くとカブる、冬場はエンジンがかかりにくい等の欠点が存在した。

【キャブレター】
キャブレターとインジェクションとの最も大きな違いは、キャブレターは空気の流入量だけを可変するというところにある。スロットルペダルを踏むと、バタフライ・バルブが開き、空気がインテークに流れ出す。するとバレルに負圧が発生してフロートから燃料を吸い出す。バタフライの開角が増えると負圧も燃料供給量も増える。燃料供給は通路断面積と経路があらかじめ固定され、流入する空気量に対する燃料供給量の増減は常に一定を保つ。通路断面積はスクリューで調整可能だが、走行中に変えることはできない。スロットルを急激に開けた時には、燃料の吸い出しが追いつかなくなるので、加速ポンプと呼ばれる燃料を一時的に増量する装置で対応する。多気筒エンジンではひとつのキャブレターで低速から高速までの変化に対応するのは難しいので、複数のキャブレターを備えるか、大小ふたつのバレルを設けて要求される空気流入量によって切り替えて使う。

キャブレターの例。ホーリーの2バレル×2の4バレル式。

現実の運転場面はともかく、是が非でも空燃比を一定に保つ必要が出てきたのは、1970年代の排ガス規制であった。紆余曲折の結果、三元触媒方式に収斂した排ガス浄化装置にとって、空気と燃料の過不足は御法度であり、理論空燃比を厳密に守るため、酸素量(空気量ではない!)に対して燃料供給を緻密にコントロールできる、センサー類を備えた電子制御インジェクションは絶対必要条件となっていった。小型バイク等の例外を除き、自動車用燃料供給装置としてのキャブレターの使命は、この段階で終わりを告げる。

【電子制御キャブレター】
排ガス規制に対応すべく電子制御化されたインジェクションは、登場時にはまだ高価であり、廉価な小型車に採用するのは難しかった。そこで、キャブレターの基本構造はそのままに、電子制御インジェクションのセンサーとフィードバック回路を流用し、運転状況によって燃料供給量を可変できるシステムが作られた。排気管に設けられたO2センサーで排気中の酸素の残存量を読み取り、その偏差によって燃料供給量を増減する制御を、燃料供給経路中にあるジェットに組み込まれたソレノイドバルブを通じて行なう。仕組みはキャブレターのままなので、インジェクションほどの緻密な燃料制御はできず、点火時期調整との連携など高度な機能は持たない。80年代後半から90年代にかけての、インジェクションのコストが下がって一般化するまでの過渡的な装置である。

電子制御キャブレターを装備した日産CA18S(PHOTO:NISSAN)
VG30ET型のキャブレター(PHOTO:NISSAN)

キャブレターでは空気量の調整は、スロットル・ペダルから延びたケーブルで直接バタフライを開閉して行なう。初期のインジェクションも同じ手法を採っていたが、これではドライバーが加速しようとしてスロットル過度にスロットルを開き過ぎ、エンジンの回転が上がらないうちから燃料を多く吹いてしまうケース等、ドライバー要求とエンジン要求が一致しないケースに対応できない。それはドライバビリティと燃費の悪化につながるため、スロットルの操作とバタフライの開度、そして燃料供給を個別に制御する必要が出てきた。

そのため、スロットル・ポジション・センサーが装備され、速度やエンジン回転数などを参照して、スロットル開度とは無関係に、ドライバーの加速要求に見合った燃料供給を行なうようになる。初期段階ではバタフライの開閉はまだケーブル操作であったが、より緻密な制御を行うためには、ケーブルを廃して、スロットル、バタフライ、燃料供給の3つを完全に独立させた方がよい、ということになる。

【電子制御インジェクション】
インジェクション機構の特徴は、空気量の調整と燃料供給機構を独立させて、より緻密な空燃比制御ができることである。初期のものは、燃料供給量の決定をスロットルとの機械的連動により、吸気管に仕込まれたフラップで空気量を計測するといった、きわめてプリミティブなものだったが、ボッシュが開発したDジェトロニック以降、O2、空気流量、スロットル開度、クランク角など、多くのセンサーからきた情報を適宜判断して、最適な燃料供給ができるようになっていった。また、燃料の噴射もエンジン動力によるものから、専用の燃料ポンプやプランジャーで加圧を行なうようになり、インジェクターの多孔化と併せて、より微細な燃料を噴射して効率よく燃焼させ、排ガス浄化だけでなく燃費の低減にも貢献できるようになっていった。現在では過給器やVVTなどのデバイスの他、トランスミッションとも連携して、より高度な制御を行なう。

スロットルボディの例(PHOTO:NISSAN)

かくしてスロットルをアクチュエーターで操作する、スロットル・バイ・ワイヤーが実現することになった。現在のスロットル・バイ・ワイヤーは、空気と燃料供給だけでなく、可変バルブタイミングや、点火時期調整、EGR量のコントロール、過給圧制御など、エンジン制御に関わる多種多様な制御フローの入り口となって、内燃機関にとって必要欠くべからざる装置となったのである。

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