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内燃機関超基礎講座 | 「圧縮比」って何? ミラーサイクルと過給の相性がいい理由

  • 2021/04/11
  • Motor Fan illustrated編集部
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ユーノス800/マツダ・ミレーニアに搭載された世界初のミラーサイクルエンジン(PHOTO:MAZDA)

圧縮比とは必ずカタログに載せられている用語。ではその理屈は。ミラーサイクルの権威・畑村博士に解説してもらおう。
TEXT:畑村耕一(Dr.HATAMURA Koichi)

圧縮比とはなにか

オットーサイクル(Illust:熊谷敏直)

オットーサイクル・エンジンは、吸入行程で空気を吸い込んでゆき、下死点で吸気バルブを閉じる(当然、排気バルブも閉じられている)。そこから上死点に向かってピストンが上昇してゆくにつれて、空気は徐々に圧縮されてゆく。吸い込んだ空気量を10として、上死点で1にまで圧縮されれば、圧縮比は10:1となるわけだ。

次に、上死点(の直前)で点火プラグに電気火花を飛ばすことで混合気に着火し、膨張行程に入る。吸/排気バルブとも閉じたまま下死点までピストンが下がってゆき、燃焼ガスは上死点と比較すると10倍に膨張したことになる。当然ながらそれ以上に膨張行程が続くことはない。下死点から再度ピストンが上昇するタイミングに合わせて排気バルブを開き、排気行程に移ることになる。

遅閉じ式ミラーサイクル(Illust:熊谷敏直)

一方、吸気バルブ遅閉じによるミラーサイクルでは、吸入行程を経て下死点に至り、ピストンが上昇を始めても、吸気バルブは開いたままの状態を保つ。その間シリンダ内の混合気は吸気管に逆流して圧縮されることはない。すなわち、吸気行程と圧縮行程が短縮されたのと同じ効果が生まれる。

ある程度までピストンが上昇してから吸気バルブが閉じ、実際の圧縮が始まるので、実ストロークよりも圧縮行程が小さくなる。オットーサイクルの例にならって言うなら、上死点の燃焼室容積を小さくして下死点までに14倍に膨張するようにしても(つまり容積比=幾何学的圧縮比14の場合)、実際に圧縮されるのは1/10(ノッキングの制約)に設定できる。といったように考えればいい。

マツダZJ-VEM型。2007年のデミオ・マイナーチェンジで登場したミラーサイクルエンジン。(FIGURE:MAZDA)

ミラー×過給の相性がいい理由

この作動を考えればお気付きになる方も多いと思うが、ミラーサイクル・エンジンは、同じボア×ストロークを持つオットーサイクルに比べて、シリンダ内に閉じ込める空気の絶対量が少なくなる。つまり、排気量が小さくなったのと同様の効果が生じてしまうため、トルクが低下してしまう。これを補うため、量産車として世界で初めてミラーサイクル・エンジンを搭載したユーノス800(マツダ・ミレーニア)では、石川島播磨重工と共同開発した機械式過給器「リショルム・コンプレッサー」によって狭義のミラーサイクルを実現した。また、機械過給で吸気圧力が排気圧力より高いので、吸排気オーバーラップ中に上死点に残った燃焼ガスが掃気されるので、アトキンソンの完全排気の思想も受け継いでいる。

ユーノス800に搭載された、外部過給機、インタークーラー、ミラーサイクル・エンジンによるシステム構成図。過給機で圧縮された空気は高温となるが、インタークーラーで冷却できる。この冷たい空気を吸入することで、圧縮上死点の温度は大幅に低下する。これによって、さらに過給度を高めて高出力を発生させられる。

実は、ミラーサイクルをインタークーラー付き過給機と組み合わせることには特別な意味がある。図のように過給ミラーサイクルでは通常ピストンで圧縮する一部を外部過給機で代わりに圧縮する。外部過給機で圧縮した高温の空気はインタークーラで冷却することができる。冷却後の空気を吸入して残った圧縮をピストンで行えば、圧縮上死点の温度は大きく低下する。これは、矢印のように逆をたどれば、外気より冷たい空気を吸入したのと同じである。すなわち冷凍サイクルそのものであり、言い換えればクーラー付きエンジンなのでノッキングしないし、Pmaxも排気温度も低下して、より過給度を高めて高出力を発生できる。

ミラーサイクルを自動車用ガソリンエンジンに適用するメリットはこれだけではなかった。実はおまけがついてくるのである。それがポンプロス低減効果と言われているものだ。小さなトルクしか必要でない定常走行では燃料噴射量を減少するが、普通のガソリンエンジンは空気と燃料の比率を常に一定にしなければならない(ディーゼルやリーンバーンは一定ではない)ので、燃料に合わせて空気も減少させなければならない。そのためにスロットルバルブを使って、吸気管内を負圧にして空気を吸いにくくしている。

負圧のところから空気を吸い込むので、当然ピストンは一生懸命仕事をしなければならない。これがポンプ損失で、ガソリンエンジンの部分負荷では最も大きな機械損失になっている。先に書いたように、ミラーサイクルは排気量が小さくなったのと同じ効果があるので、同じトルクを出すには部分負荷でのスロットルの開度を大きくして、吸気管圧力を大気に近づける必要がある。その結果ポンプ損失が減って燃費が良くなるという理屈だ。

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