内燃機関超基礎講座 | 樹脂製シリンダーヘッドカバー、裏側はどうなっているか
- 2021/06/04
- Motor Fan illustrated編集部

トヨタ紡織の手がける樹脂製シリンダーヘッドカバー。軽く作るためのさまざまな工夫をその構造から眺めてみる。
TEXT:松田勇治(MATSUDA Yuji)
樹脂化が進められているシリンダーヘッドカバー。トヨタ紡織では、1999年のトヨタ1N型ディーゼルエンジンの補給用からヘッドカバーの生産に着手、2002年からは設計・生産にも対応した。樹脂化のおもな目的は、やはり軽量化と、製造工程で機械加工が不要なことによる低コスト化だが、成形自由度の高さを活かしてさまざまな新機軸も投入されている。トヨタ1NR-FE型エンジン用樹脂製ヘッドカバーの内部構造を見ていこう。

まず、樹脂化によってアルミ成形部品比で40%の軽量化を実現している。素材は樹脂インマニと同様のナイロン(ポリアミド)系で、この製品では「PA66」にガラスファイバーを混ぜて強度を高めたものを使っている。課題となったのは、同エンジンは可変動弁系機構VVTを搭載するため、その油圧制御部品であるOCV(Oil Control Valve)をヘッドカバーに保持しなければならなかったことだ。
従来、この手の部品を樹脂製ヘッドカバーに搭載した例はなかった。樹脂と金属では熱膨張に差があるため、OCV嵌合部の油密を保つことが困難だったことがその原因だ。対策として、OCV本体は専用のアルミ製ホルダーによって保持し、ヘッドカバーとの間をガスケットでシールする構造によって解決した。

また、カバー裏側にはPCV(Positive Crankcase Ventilation)と名付けた機構を備える。これには大きく、2点の特徴がある。
まず、クランクケース内のブローバイガスをヘッド内部に導いた後の経路に新気を導入することで、クランクケース内の換気を促進すること。また、ブローバイガスの流路を、複数の壁を設けたラビリンス構造とした。これにより、ブローバイガスに含まれるオイルミストを壁面に付着させて分離することで、吸気側への流出を防ぐ。これによってオイルの消費量を低減し、オイル自体はロッカーフォロアーやカムの潤滑に使いながらオイルパンへ戻すことで、オイルの劣化も防止する。


|
|

自動車業界の最新情報をお届けします!
Follow @MotorFanwebおすすめのバックナンバー
これが本当の実燃費だ!ステージごとにみっちり計測してみました。
日産キックス600km試乗インプレ:80km/h以上の速度域では燃費が劇...
BMW320d ディーゼルの真骨頂! 1000km一気に走破 東京〜山形往復...

日産ノート | カッコイイだけじゃない! 燃費も走りも格段に洗練...
渋滞もなんのその! スイスポの本気度はサンデードライブでこそ光...
PHEVとディーゼルで燃費はどう違う? プジョー3008HYBRID4とリフ...
スズキ・ジムニーとジムニーシエラでダート走行の燃費を計ってみた...
会員必読記事|MotorFan Tech 厳選コンテンツ

フェアレディZ432の真実 名車再考 日産フェアレディZ432 Chapter2...

マツダ ロータリーエンジン 13B-RENESISに至る技術課題と改善手法...

マツダSKYACTIV-X:常識破りのブレークスルー。ガソリンエンジン...

ターボエンジンに過給ラグが生じるわけ——普段は自然吸気状態

林義正先生、「トルクと馬力」って何が違うんですか、教えてくだ...

マツダ×トヨタのSKYACTIV-HYBRIDとはどのようなパワートレインだ...
3分でわかる! クルマとバイクのテクノロジー超簡単解説

3分でわかる! スーパーカブのエンジンが壊れない理由……のひとつ...

3分でわかる! マツダのSKYACTIV-X(スカイアクティブ-X)ってな...

スーパーカブとクロスカブの運転が楽しいのは自動遠心クラッチ付...

ホンダCB1100の並列4気筒にはなぜV8のようなドロドロ感があるのか...

ホンダ・シビック タイプRの謎、4気筒なのになぜマフラーが3本?
