住友商事: 「EVバッテリー・ステーション浪江」の完工について

住友商事は、日産自動車との合弁会社であるフォーアールエナジーと共同で、電気自動車(EV)のリユース蓄電池を大規模な電力用途に適用する技術開発を進め、福島県浪江町のフォーアールエナジー事業所内に「EVバッテリー・ステーション浪江」を完工した。今後は、本技術を再生可能エネルギーの普及に課題を抱える地域に広く展開し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する。

本技術は、福島県実用化開発補助金のサポートを受け、浪江町と連携して開発を進めているもの。従来、EVに搭載されるバッテリーは、大規模な洋上風力発電やメガソーラーなどを安定化する電力用途に利用するためには、蓄電能力や管理技術に課題があった。住友商事は、フォーアールエナジーと共同で高出力・大容量化を実現するためのスケールアップ制御技術を開発した。さらに経済性や安全性の高いシステム化を実現し、本設備に採用している。

EVの普及拡大に伴い、今後数万台規模のリユース蓄電池が回収されると予想される。「EVバッテリー・ステーション」は、回収したリユース蓄電池を保管し性能を管理すると同時に、蓄電センターとして電力系統向けの需給調整サービスなどを提供する循環型の事業モデル。今後、住友商事は様々なパートナーと連携を深めながら、フォーアールエナジーと共に、この持続可能な事業モデルを広く社会に普及させる考え。

本設備は2022年4月より本格的な運用を開始し、本技術の設計や有用性・信頼性の検証を行ったうえで、2024年には需給調整市場(注)向けの大型蓄電事業を立ち上げる計画。また、福島県の浪江町周辺エリアは、電力会社の送電線が混雑している地域であり、大規模な再生可能エネルギーが開発されても、現在のレベル以上送電線に接続できない状況が続いている。住友商事は浪江町と連携協定書を締結し、本設備をさらにスケールアップした複数の大型蓄電プロジェクトを周辺地域において検討している。リユース蓄電池を活用した大規模蓄電事業によって、電力会社の送電線空き容量に過度に依存しない、地域での再生可能エネルギー利活用(地産地消)促進にも取り組んでいく。

住友商事は、2010年に日産自動車と合弁で、EVのリユース蓄電池の再製品化を行うフォーアールエナジーを設立した。大阪市夢洲ではEVのリユース蓄電池システムを世界で初めて実用化し、薩摩川内市甑島では再生可能エネルギーの導入拡大を目的とした蓄電センターの実証事業を行うなど、EVのリユース蓄電池を活用した蓄電事業の知見を培ってきた。今後は、大型蓄電池事業を軸としたエネルギー・マネジメント事業の展開に取り組み、エネルギー需給の最適化やカーボンニュートラル社会の実現に貢献していく。

(注)需給調整市場
電力需要の変化に合わせて発電所などで需要と供給を一致させるために必要な電力である「調整力」を取引する市場。従来は各地域でライセンスが与えられた一般送配電事業者が「調整力」の調達を担っていたが、様々な事業者が一つの市場に参加することで、価格競争の促進が期待されている。2024年度からは全ての商品が需給調整市場で取引されるようになる。

事業概要

補助事業:福島県実用化開発補助金 2021年度採択案件(三か年事業)
「地域への再エネ導入拡大に貢献するリユース蓄電池システムの
大規模化技術の開発」

事業地:福島県浪江町 藤橋産業団地 フォーアールエナジー敷地内

設備所有者:住友商事

連携協定:浪江町と住友商事の連携協定
・ 水素の利活用や再エネの地産地消に関する取り組み
・ 本事業の実施に関する協力・支援

蓄電池システム:「EVバッテリー・ステーション浪江」
(第一期)600kW X 約1,600kWh(リユース電池84台分を収納)
・スケールアップ(高出力・大容量化)のための制御技術
・ 電池交換式
・ 短工期、安全設計を実現する筐体構造

太陽光発電:併設する太陽光発電設備(屋根置きソーラー発電)
(第一期)150kW
・ フォーアールエナジー浪江事業所のゼロエミッション化
・第二期以降の制御システム開発に活用

事業目的:
① 大規模蓄電事業のためのスケールアップ技術開発
② フォーアールエナジー浪江事業所内の電力ゼロエミッション化
・電気代抑制

図 1 「EVバッテリー・ステーション」のコンセプト
図 2 フォーアールエナジー浪江事業所に設置する本設備・屋根置き太陽光発電
図 3 「EV バッテリー・ステーション浪江」の外観

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