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  • 2019/05/21
  • 遠藤正賢

【試乗記:スバルWRX STI】マルチモードDCCDはまさにランエボのACD! 内外装と走りの質感はエボリューションモデルの域から脱却したが……

ライバル不在後のあり方に対する迷いが装備や走りに散見される?

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スバルWRX STIタイプS
かつてWRC参戦のベース車とされていたインプレッサWRXをルーツとする、スバルの超高性能AWDスポーツセダン「WRX STI」。その上級グレード「タイプS」で、都心の一般道から高速道路、箱根のワインディングを経て都心へ戻るルートを走行した。なお、取材時期の関係上、試乗したのは5月14日に発表された一部改良前のE型。メーカーオプションは大型リヤスポイラーにRECAROフロントシート、アドバンスドセイフティパッケージなどが装着されていた。

REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)
PHOTO●遠藤正賢、SUBARU
WRX STIの水平対向エンジン+シンメトリカルAWD

「インプレッサ」の名を冠していた頃のWRX STIは、あくまでもインプレッサという一般ユーザー向けのCセグメントカーをベースとしたエボリューションモデル。EJ20型水平対向4気筒ターボエンジンにシンメトリカルAWDの組み合わせで国産車トップクラスの動力性能を誇っていたものの、内外装や走りの質感についてはその価格よりもベース車の基本設計に準じたレベルに留まっていた。

シンプルな造形ながら質感の高い運転席まわり

 だが、インプレッサから独立した現行VAB型WRX STIには最早、エボリューションモデル特有の安っぽさは見られない。大型のフロントグリルやボンネット上のエアスクープ、エアロパーツで迫力を増しているものの、内外装の基本的な造形は極めてシンプルかつオーソドックス。かえって素材の質感や面構成の巧拙、分割線の多寡が浮き彫りになるものだが、それでも従来より1クラス高いDセグメントのクルマに相応しい水準に進化しているのを、一目見た瞬間から感じさせてくれる。

メーカーオプションのRECAROフロントシート

 しかしながら運転席に座ってみると、「?」マークが脳裏に浮かんでくる。座面が乗降性重視の設計で、超高性能スポーツセダンという性格を考慮すると明らかにサポート性が不足しているのだ。また長さも絶対的に不足しているのか、膝裏から太股にかけてのフィット感にも優れず、ワインディングはもちろん街乗りでも常に身体が落ち着かなかった。

S208のレカロ製セミバケットシート

 しかもテスト車両に装着されていたのはレカロシート。「RECARO」のエンブレムを冠したシートのなかで、これ以上にホールド性・フィット感が不足していたものを、免許取得後23年、自動車業界に身を置いてから約20年程度の筆者は他に知らない。S208などに採用されているセミバケットタイプがオプション設定されることを願わずにはいられない。

前席と同じく黒とチェリーレッドを基調とした後席

 この手の超高性能スポーツセダンでは“オマケ”扱いされがちな後席も、傾向は同じ。ワインディングなどを速いペースで走られたらひとたまりもないであろうことが、容易に想像できるものだった。ただし、ヘッドクリアランスこそ身長176cm・座高90cmの筆者では5cm程度しか残らないもののニークリアランスは15cmほどの余裕があるため、街乗りや高速道路では窮屈な思いをせず快適に過ごせるはずだ。

6速MTと「SI-DRIVE」設定ダイヤル、「マルチモードDCCD」設定スイッチ

 ともあれ、ずっしりと重いクラッチを踏み、重く短いストロークながら旧型では目に付いた渋さが取れスムーズになった6速MTのシフトレバーを1速へ。クラッチをつなぎ走り出すと、3000rpm付近までは明確なターボラグを感じるものの、スロットル特性を3種類から切り替え可能な「SI-DRIVE」を真ん中の「S」にして町中を流す分には過不足なく加速させることができた。

EJ20型水平対向4気筒ターボエンジン

WRX STIのエンジン性能曲線

 なお、「I」ではターボが効き始めるまでの緩慢さが際立つようになり、「S#」では早開きに過ぎてパーシャル域のコントロール性が著しく落ちてしまう。このWRX STIが搭載するEJ20型水平対向4気筒ターボエンジンは最高出力308ps、最大トルク422Nmというハイスペックを誇るうえ、水平対向ならではの回転バランスの良さを利してレブリミット8000rpmまで一気に吹け上がるスムーズさも併せ持つだけに、「S#」時のスイッチのような特性は安全面からも好ましいとは決して言えない。この感覚は高速道路やワインディングでも変わらなかったため、今回のテストではほぼ常時「S」モードで走行した。

WRX STIのボディ骨格

「タイプS」に装着されるビルシュタイン製ダンパー

 では、町中での乗り心地はどうか。こちらもそのエンジンスペックや「タイプS」専用の245/35R19 89Wというファットなタイヤから想像するよりも遥かに快適で、細かな路面の凹凸もキレイにいなす。「タイプS」にはフロントが倒立式となるビルシュタイン製ダンパーが標準装備されているが、それ以上に基本的なボディ・シャシー剛性が先代よりも大幅に高められたことが、功を奏しているのだろう。

 しかしながら、スプリングやダンパー、スタビライザーやブッシュ類なども先代よりハードにセットアップされているにも関わらず、大きなギャップが連続するような場面では特に上下方向の揺れの収まりが悪く、しかも速度が上がるにつれてその傾向は強まっていく。

 イージードライブ志向の「S4」が現行WRXには存在するにもかかわらず、モータースポーツ直系の「STI」が高負荷域での安定性よりも低負荷域での快適性を重視したかのように思えるその方向性は、率直に言ってチグハグな印象を禁じ得ない。

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