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  • 2019/07/13
  • MotorFan編集部

トヨタ アルファード/ヴェルファイア|新型は-高級ミニバンから大容量高級サルーンへ-の大転換

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アルファード/ヴェルファイアの“高級ミニバンから大容量高級サルーンへ” という方針転換は見事に成功した。

この成功を受けて新型モデルでは、さらに高級サルーン路線を邁進する。前回キャリーオーバーだった3.5ℓ V6ユニットを大幅改良。エクステリアの風格を高め、インテリアの豪華さを増した。

中でも最大のトピックスは、遅れ気味だった先進安全装備が大きく進化したことだ。これまで同車にはトヨタセーフティセンスの搭載がなかったが、一気に第二世代版を採用するなど、トヨタ車で最高の性能を得たのである。

REPORT●佐野弘宗(SANO Hiromune)
PHOTO●平野陽(HIRANO Akio)

※本稿は2018年2月発売の「 新型アルファード/ヴェルファイアのすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。

“大空間高級サルーン”というカテゴリーを創出した現行型

トヨタ・アルファード/ヴェルファイアは当然のごとく、ミニバンである。昨年もいくつかのミニバンが生産を終えたことからも分かるように、国内ミニバン市場そのものが縮小傾向にあるのは間違いない。

しかし、アルファード/ヴェルファイアに悲壮感はまるでない。

それどころか、「第二世代トヨタセーフティセンス」の初搭載に加えて、内外装の迫力アップと高級化、上級モデルであるV6パワートレーンの刷新、操縦安定(操安)性や乗り心地の改良、そしてモデルバリエーションのさらなる拡充……と“攻め”というか、使い古された表現を使えば“イケイケ”の勢いさえ感じさせる。

開発責任者をつとめる吉岡憲一は2010年にアルファード/ヴェルファイアの主査となり、先代のマイナーチェンジ、現行型のフルモデルチェンジ、そして今回のマイナーチェンジを率いた「ミスター・アルファード/ヴェルファイア」ともいうべき人物だ。

そんな吉岡主査は次のように語ってくれた。

「少子高齢化もあって、国内のファミリー向けミニバンに逆風が吹いているのは事実。だからこそ、この三代目アルファード/ヴェルファイアではあえて矛先を変えて“大空間高級サルーン”という新しいカテゴリーを創出すべく開発しました。

リヤのダブルウイッシュボーンに代表されるように“高級なミニバン”ではなく“高級サルーンをベースとした大容量車”がコンセプトです。

おかげさまで三代目アルファード/ヴェルファイアは発売初年度の2015年に過去最高の販売台数をいただきました(吉岡主査)」

吉岡主査が言うとおり、アルファード/ヴェルファイアの合計販売台数は2015年に、過去最高にして10万台の大台に限りなく近い9.8万台強を記録。

さらに翌2016年は約8.6万台、2017年が約8.9万台と、二代目より高い水準を維持。

しかも、この三代目は海外でも好評だ。

「現時点ではあくまで国内メインの商品企画で、特別に海外を意識した開発ではないのですが、この三代目からは強度基準や操安なども最初からグローバル市場を意識したつくりにしています。

中国や香港、ロシアなどの海外需要も右肩上がりで、三代目の初年となった2015年の輸出は1.2万台。今はもう少し増えています。

アルファード/ヴェルファイア全体の生産台数が年間で約10万台ですから、今では10〜15%が海外向けという計算になります」

吉岡 憲一(よしおか・けんいち)

CV Company
CV製品企画 ZH主査

1992年入社。グローバルモデルの現地調達部品の開発を経て、2006年に第1トヨタセンターZVにて六代目カムリの製品企画実務(パッケージ、仕様など)を担当。2010年よりアルファード/ヴェルファイアの開発責任者としてプロジェクト全体の取りまとめを担う。今回のマイナーチェンジにあたっても、引き続き開発責任者を務めた。

トヨタの先進安全を担う第二世代TSSを初出し

「海外では1000万円以上の価格なので、日本以上に完全なショーファーカーとして乗っていただいています。

たとえば、お客様のガレージに、メルセデス・ベンツSクラスやマイバッハが一緒に並んでいる光景も珍しくありません(吉岡主査)」

そんなアルファード/ヴェルファイアの生産はミニバンやSUVを得意とするトヨタ車体が担当。

トヨタ車体の製品企画センター主担当員として開発に携わった土屋郁俊は、初代の途中から15年以上も一貫してアルファード/ヴェルファイアを担当。

土屋はある意味で吉岡主査以上に“アルファード/ヴェルファイアを知り尽くした男”である。

「アルファード/ヴェルファイアは国内向けでは台数的に最も多く、収益面でもトヨタ車体の屋台骨であり、最重要車種のひとつです。

しかも、このクルマはとにかく車型が多い(笑)。アルファードとヴェルファイアそれぞれにエアロモデルと標準モデルがありますから、意匠モデルだけで4種類。

膨大な数の試作車を日程どおりに用意して、いかに効率よく開発していくかに苦労しました。とくに今回は開発期間も短縮するということでしたので……」 と土屋。

開発期間の短縮は、世界の自動車産業すべてが取り組む永遠のテーマだが、土屋が今回あえてそこに触れたのには理由がある。

冒頭にも書いたが、今回のアルファード/ヴェルファイアは、トヨタの先進安全システム「トヨタセーフティセンス(TSS)」の第二世代を初めて世に出す役割も担った。

そして、吉岡主査は制御システム畑の出身であり、この種の技術には思い入れが強い。

事実、現行型がデビューした2015年初頭は、ちょうどTSSが市場投入される直前の時期であり、三代目アルファード/ヴェルファイアは従来型システムのまま発売せざるをえなかった。

それでも「全車速追従機能付きレーダークルーズコントロール」や「インテリジェントパーキングアシスト2」など、当時としては可能な限りの最新機能が詰め込まれたのは、吉岡主査の強い意志によるところもあった。

しかし、今回のマイナーチェンジでは、我々ユーザーにとってはもちろん、吉岡主査にとっても、まさに待望のTSS搭載となった。

しかも、今後のトヨタの先進安全を一手に引き受ける第二世代の初出し……という重責である。

「TSSの開発は今から1年半ほど前から試作車をつくって、システムを確認していきました。

アルファード/ヴェルファイアには100以上のコンピューターを積んでいますが、 少なくともパワートレーン、ブレーキ、ステアリングという土台となるプラットフォーム部分のそれはこの段階で完成させて、それ以降は基本的に変えないようにしました。

TSSはその3つをアプリケーションで制御する技術ですから、途中でパワートレーン出力やステアリング特性が変わると、いちいち開発が止まります。

こうしたシステム開発では、プラットフォームとなる部分をまず固定する……というのは、私が制御システム開発部にいたときに提唱した方針なんです。

今回はそもそもTSS第二世代の“頭出し”ですから、土台だけはきっちりと固めて、残った時間を使ってギリギリまでシステムの品質を高めていきました(吉岡主査)」

こうした吉岡主査の信念は、実験を担当した辛島智聡も思わず「そこは本当に強く言われました」と苦笑するほど強かった。だからこそ、トヨタ車体の土屋も、わざわざ「試作車を日程どおりに用意することにこだわった」と語ったわけである。

今回はV6のパワートレーンを刷新して、ボディやシャシーにもスミズミまで改良・熟成の手が入っているが、「ですので、走行性能や操安の開発は基本的に1年半前の段階で仕上げて、それ以降はTSSの開発と熟成にあてました」と辛島。

第二世代TSSは前身のトヨタセーフティセンスPに対して、自動ブレーキ性能の向上、検知対象の大幅拡大、道路標識認識、先行車発進告知などの新機能に加えて、将来的な“自動運転”に直結するレーントレーシングアシスト機能が追加された。

「レーントレーシングアシストの品質にはとくに力を入れました。システム起動をできるだけ速くして、トレーシング性能を引き上げることにこだわりました。

起動が遅いと、車線変更で一時的に解除された後など、トレーシング性能がどうしても落ちてしまいます。今回はとにかく使いやすい安全システムを目標としたんです(吉岡主査)」

「ただ、直進性などの基本性能が高くないと、使いやすく安定したレーントレーシング性能を実現するのは難しい。その点ではボディやシャシーなどの基本部分を進化させたことが効いています(辛島)」

そのレーントレーシングアシスト機能の完成度については、吉岡主査も「自信作です」と胸を張る。

さらに「ステアリングをほとんど操作しなくても車線の中心をキープできます」と吉岡主査が説明すれば、辛島も「ある担当者が走行中に“壊れている?”と勘違いしたほど自然な仕上がり」と付け加えるほどである。

土屋 郁俊(つちや・いくとし)

トヨタ車体株式会社
製品企画センター 主担当員

1980年入社。製造管理室にてトヨタ生産方式の推進に携わった後、1986年に内装設計部第2艤装設計課へ異動。2001年までの間に、三代目ハイエース、十代目コロナ、初代イプサム、初代グランビア/レジアスのワイヤハーネス設計を担当した。以降に製品企画センターへ移り、開発統括として初代アルファードハイブリッドよりアルファード/ヴェルファイアに携わる。今回のマイナーチェンジにあたっては、開発費や法規適合、仕様指示および日程管理を担当した。

辛島 智聡(からしま・ともあき)

CV Company
CV車両実験部 主幹

1989年入社。1990年より車両実験部にてノア/ヴォクシー、ハイエース、プリウスα、アルファード/ヴェルファイアの車両環境、寒冷地における性能実験を担当。2010年より、同部開発推進(まとめ役)としてノア/ヴ ォクシーを、2016年からは同じくアルファード/ヴェルファイアを担当。実験領域の取りまとめを担当した。

最上級グレードでは半数以上の顧客がV6を選択

今回、V6のパワートレーンが完全刷新されたのは、3年前のフルモデルチェンジで唯一V6だけがキャリーオーバーだったからだ。

そして、パワートレーンだけでなく、乗り心地や静粛性、操安を進化させるボディ強化策も入念。

その手法も、ボディの構造接着剤の適用範囲拡大やガラス用高剛性接着剤など、プレス部品の変更こそないが、逆に言うと「それ以外はなんでもやる!」といった執念すらうかがわせる内容だ。

「私個人としては、V6は“次こそ”と、このタイミングで刷新すると決めていました。

長い目で見れば、この種の多気筒エンジンは消えていくのかもしれませんし、社内でも“新しくする意味があるのか”という意見があったのも事実です。

ただ、最上級グレードの“エグゼクティブラウンジ”だと、今もヴェルファイアで6割、アルファードで半分をV6が占めます。

昨今の社会状況から“エグゼクティブラウンジ”は圧倒的にハイブリッドが多いと予想したのですが、実際はそうでなく、V6の余裕をお望みのお客様がまだ まだいらっしゃることが数字にも現われています。これなら刷新する意味も十分にあります(吉岡主査)」

アルファード/ヴェルファイアがもはや実質的にライバル不在の孤高の存在でもあり、実際に乗っても、操安や乗り心地、静粛性について市場から明確な改善要望が上がってくるとは考えにくい。

それなのに、マイナーチェンジでここまで手を入れてくるとはちょっと意外だった。

「確かに走りや快適性について、お客様や販売現場から直接的な要望があったわけではありません。

ですが、レクサスLSやメルセデスSクラスなどから乗り替えるお客様もさらに増えており、それを前提にすると、背の高さやボディ開口の大きさに起因する挙動や静粛性の課題が皆無というわけではなく“もっとなんとかならないか”との思いが消えることはありません(吉岡主査)」

LSやSクラス、さらにはBMW 7シリーズやアウディA8といったそうそうたる顔ぶれは、3年前のフルモデルチェンジ時にも“参考にした競合車”として吉岡主査が口にした車名である。

繰り返しになるが、吉岡主査以下の開発陣にとってのアルファード/ヴェルファイアとは、もはやミニバンではなく、高級サルーンの最新進化形態なのである。

……といった彼らの心意気は分かっていたつもりだが、辛島の口から 「マイバッハ」の名が出てきたときには、さすがに驚かされた。

“エグゼクティブラウンジ”のシートは、プレミアムナッパ本革にグレードアップ。同グレードのエアロタイプではホワイト/ブラック内装も選べるようになった。ゴージャス感きわまるインテリアである。

3列目への手動アクセス機能追加で200の部品を変更

「今回の吉岡は“高級車にしたい”という強い意志をさらに明確に表明していましたから、これまで以上の高級とはなにか……を勉強するために、国内外で“本物の最高級車”として評価されているマイバッハに乗ってみることにしました。

私を含めて、設計者と実験担当の総勢80名くらいでマイバッハに試乗して“高級車の走りとはどうすべきか?”の参考にさせていただきました(辛島)」

「これまでもS600やA8などと乗り比べたり、開発の参考にしてきましたが、さすがにマイバッハはべらぼうに高額(笑)ですから、当時は試すことができませんでした。ですが、今回はどうしても参考にしたいと手配しました(吉岡主査)」

「マイバッハの具体的な何かをそのまま開発目標にしたわけではないですが、ブランド、質感、走行性能など、おおいに参考になりました。

例えば走行性能でも“すべてに余裕がある”ことが高級なのだと、あらためて気付かされました。

そうした“余裕”をいかに表現するかも苦労したところで、新しいV6にも新たに参考にした考えが少し入っています」と辛島は明かした。

これ以外にも、最上級のエグゼクティブラウンジシートに3列目への“マニュアルアクセス機能”を追加するためだけに、なんと約200という膨大な部品を変更したり、高価なレザーシート(≒空調シート)を備えるグレードを大幅に拡大したり、あるいはミニバンにあるまじき(?)ホワイトレザーシートを新設定したり……と、アルファード/ヴェルファイアはなんの躊躇もなく、日本屈指の高級車への道を突き進んでいるように見える。

なにかといえば“仕様数削減”や“選択と集中”といった言葉が出てくる昨今にあって、少なくともアルファード/ヴェルファイアの態度はそれとは正反対だ。

「アルファード/ヴェルファイアは本当にわがままなクルマなんです。バリエーションや仕様数が増えるばかりですが、それをきっちりとカタチにできたのはトヨタ車体、土屋さんのおかげです」と吉岡主査が語ると、土屋も静かに微笑んだ。

「高級サルーンの新しいカタチとして、アルファード/ヴェルファイアのようなパッケージが今後はさらに受け入れられると思います。

私はこのパッケージを、さらにグローバル化したいんです。世界には高級サルーンがたくさんありますから、新たなアイデアや目標には事欠きませんし、Sクラスやマイバッハに乗ってみると、アルファード/ヴェルファイアでやるべきことは、まだまだ山積みですよ(吉岡主査)」

新型アルファード/ヴェルファイアの開発に携わった主要メンバーの皆さん。

ニューモデル速報 Vol.566 新型アルファード/ヴェルファイアのすべて
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