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DOHCとSOHCとOHVってどんなエンジン? 現代自動車用語の基礎知識 DOHCとSOHC/OHC、そしてOHV……エンジンの基礎をあらためておさらい

  • 2020/04/16
  • Motor Fan illustrated編集部
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V12のバルブトレイン。DOHCとなると48本のバルブを駆動させることに。(FIGURE:AUDI)

バルブをいかに効率よく動かすか。有史以来、先人たちはこのテーマについてさまざまな知恵を絞り続けてきた。エンジンの高回転化と高出力化は絶え間なく、動弁機構もその都度進化を遂げている。本項では、現在も自動車のエンジンに搭載されるシステムを紹介しよう。

SVからOHVへ

 大量に生産され一般的に流通した、という観点からもっとも初期の動弁機構として挙げられるのがサイドバルブ(SV)だ。その名称どおり、吸排気バルブは燃焼室と並んで設置され、バルブの向きも今とは逆に、傘部が上にあるレイアウトだった。シリンダーヘッドが単なる「ふた」にとどまるシンプルさのいっぽうで、燃焼室は横に長く熱損失が大きいこと、燃焼室が扁平になるので圧縮比が高めにくいこと、混合気はコの字を描いて行き来し効率に乏しいこと──などの欠点から、バルブをシリンダーの上部に持っていくオーバー・ヘッド・バルブ(OHV)が考案される。

サイドバルブ式エンジンの構造。吸排気バルブは傘部を上にして長いステムを直接駆動する。(FIGURE:Wikipedia)
OHV式エンジンの構造。バルブの傘部は下になり、ステムを押すのはロッカーアームが担う。ロッカーアームを動かすのはプッシュロッド。(FIGURE:BMW)

 SVは、クランク脇に備わるカムシャフトが上向きのポペットバルブを直接押す機構を採っていた。対するOHVは図に見られるように、ロッカーアームとバルブ周りをシリンダーヘッド内に備え、カムシャフトの作動はシリンダーブロック内を通るプッシュロッドの上下運動で伝える構造だ。カムシャフトは従来どおりクランク近傍にセットされた。これにより、燃焼室形状をボア径のサークル内で収められるようになり、コンパクトな燃焼室による高圧縮比、スムーズなガス流などを実現している。さらには吸排気ポートの設計、バルブのレイアウトなど、OHVの発明はシリンダーヘッドの複雑高度化を押し進めることになった。

シボレー・コルベットのV8は現在もOHVを頑なに守り続ける。高回転を追求するのではなく大排気量大トルクで走るのならば、OHCに比べて簡素なヘッドのOHVの重心の低さと整備性の高さはむしろメリットとなるわけだ。(FIGURE:GM)

OHC

 時代は下りさらなる高回転化が進むと、重いプッシュロッドの追従性が問題として浮上する。そこで、カムシャフトをシリンダーヘッドに備え、クランクシャフトの回転をチェーンなどの伝達機構によってカムシャフトに伝える仕組みが考案された。オーバー・ヘッド・カムシャフト(OHC)である。

 OHVのプッシュロッドは機械的に接続されず、いわばロッカーアームとカムに挟まれているだけの状態ゆえ、高回転となるとプッシュロッドがカムに追従せず、きちんと作動させられないという症状が現れる。そこで、プッシュロッドを廃してカムシャフトをシリンダーヘッドに収め、直接ロッカーアームを作動させればいいとするOHCが現れた。カムシャフトは、OHVではギヤで駆動されていたが、軸間が離れることから(クランクケースとシリンダーヘッド)、一般的にはチェーンによる駆動が選択されている。これらにより、全域において非常に正確なバルブタイミングが得られるようになり、高回転化に大きく寄与することとなった。
 ロッカーアームを介してバルブを駆動する構造のいっぽうで、タペットを用いて直接カムシャフトがバルブを押す直打式が現れたのも、OHCからである。

旧式のOHCの例、VWのシリンダーヘッド。吸排気バルブが一列に並ぶ。バルブ駆動はステムをカムロブが直接押下する直打式。(PHOTO:VOLKSWAGEN)
吸排気ポートもシリンダーヘッドの片側に集合する。つまり、ガスは燃焼室内でUターンすることとなる構造だ(ターンフロー)。(PHOTO:VOLKSWAGEN)
OHCの最新事例・VWの1.2TSI(4気筒)。フォルクスワーゲンは、「過給ありき」のこのエンジンについて、2バルブOHCをあえて選択した。ねらいのひとつは軽量化で、前軸重量を大きく低減することに成功している。

DOHC

 OHCのバリエーションであるDOHCは、吸気と排気それぞれにカムシャフトを備える機構。それにともない、OHCはレトロニムとして「SOHC(シングルOHC)」と称することも多くなった。

 高回転域における吸排気効率を高めたいニーズからマルチバルブ化が図られると、バルブ挟み角の設定や燃焼室形状に自由度の高いDOHCにスポットが当たることとなる。その性格上、剛性が高く構造をシンプルにできる直打式が多く採用されたが、近年は機械効率の向上のためローラーを備えたロッカーアームを介してバルブを駆動するユニットが増えている。また、吸排気それぞれにVVTやVVLなどの高度なコントロールが可能なのも、DOHCのメリットである。

近年の一般的なDOHCの例。ダイムラーの4気筒。カムシャフトとの当たり面にローラーを備えたロッカーアームを備え、バルブを駆動させるアプローチだ。ロッカーアームの支点側には、油圧式のラッシュアジャスターを装備する。(FIGURE:DAIMLER)

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