巨大なボックスのようにも見える独特の車体デザイン。内部へ折りたたんで収納できる構造を持つ。

モトコンポより20年早かった!? 折りたたみ機構が凄い

「VALMOBILE(バルモビル)」はフランス生まれの折りたたみ式49ccモビリティで、日本では平野製作所がライセンス生産・販売していたという超レア車。見た目は小さなスクーターのようだが、その構造は驚くほど独創的。会場でも「何これ!?」と足を止める来場者が続出していた。

最大の特徴は、やはり折りたたみ機構だ。フロントセクションやハンドルまわりを分解・収納し、本体内部へ収めることで、まるでトランクのような四角い形状になるという。

オーナーのタカオカさんによると、「前を抜いて、ここも抜いて、ハンドルも畳んで、この中へ全部収まるんです」とのこと。完成すると巨大なスーツケースのような姿になり、車載や持ち運びもしやすい設計となっている。

特に印象的なのが、ハンドル収納の考え方だ。モトコンポのように“走る時は普通のバイク、収納時は箱になる”という思想が、この時代ですでに形になっていたのである。

WEBで見つけた海外チラシにも、「Ready to go in 60 seconds.」「Parks anywhere.」「Folds in 60 seconds, stores in your trunk.」といったコピーが並び、“すぐ乗れる”“どこでも置ける”“トランクへ収納できる”という携帯性を大きくアピールしていたことがわかる。

しかも1961年当時、こうした折りたたみバイクはほとんど存在しなかったというから驚きだ。モビリティを“収納する”という発想自体が、かなり先進的だったことが伝わってくる。

フロントセクションの接続部分。ここが外れる。

49cc&5インチタイヤの超コンパクト設計

搭載されるエンジンは49ccの空冷2ストローク。添付チラシのスペックには最高速度35mph(約56km/h)、最高出力2.8HPと記載されており、当時としては十分な実用性能を持っていたようだ。

足周りは前後5インチという超小径ホイールを採用。タカオカさんいわく、「昔のモンキー系やポケバイ系のタイヤが流用できる」とのことで、維持面でも工夫しながら乗っているという。

今回撮影した個体は、シートや外装を含めてほぼ純正状態をキープ。赤いダイヤ柄シートやサイドボックス風ボディなど、いかにも1960年代欧州デザインらしい独特の雰囲気もたまらない。小さいのに存在感が強く、まさに“走るビンテージ雑貨”のような魅力を放っていた。

「次はない」と思って購入した希少車

この車両を所有するアガチ・ベースのタカオカさんは、旧車のレストアやカスタムを多数手掛ける人物。本来はオレンジ色の個体を探していたそうだが、「もう次は出てこないかもしれない」と判断し、この白い車両を購入したという。

平野製作所は販売不振によって短期間で姿を消したとされ、現存車両は極めて少ない。しかも実動状態となればさらに希少だ。

「やれた感じも気に入ってるんですけど、もっと傷んできたら、自分の好きなオレンジに塗るかもしれません」と話すタカオカさん。オリジナルを尊重しながら、未来へ残していこうとする姿勢も印象的だった。

奈良カブミーティングには、カブだけでなく、こうした“歴史の片隅にいた小さな名車”が自然に並んでいる。そんな自由さも、このイベントの面白さだ。

ディテールチェック

ハンドル位置や極小ホイールのバランスも独特。まるで未来を想像して作られた1960年代モビリティだ。
エンジンまわりの造形も非常にユニーク。フランス生まれらしい機械デザインが光る。
サイドには「Valmobile」のロゴが残る。経年変化も含めて味わい深い。
燃料タンクはボディ内側にレイアウト。
キャブレターまわりも非常にコンパクトにまとめられている。
車体内部には当時のプレートも残されていた。
古い車両だけにハンドル周りもシンプル。ウインカーなどなく、もちろん手信号だ。
丸型ヘッドライトも当時らしいデザイン。全体の愛嬌ある雰囲気を作っている。

撮影したのはこのEVENT!

「奈良カブミーティングVol.20」
■日時:2026年5月10日(日)
■開催地:唐子・鑓遺跡史跡公園(奈良県)

こちらの車両は日本一参加者が集うカブイベント「奈良カブミーティング」で撮影されたもの。詳細はこちらのSNS(奈良カブ)をチェック!


【モトチャンプ】