QJモーター・SRK 400 RS……1,048,000円

フロントカウルにウィングレットを備えた印象的なスタイリングは、サンマリノ共和国にあるデザインスタジオのC-Creativeと、MVアグスタでF4やF3などを手掛けた著名なモーターサイクルデザイナー、エイドリアン・モートン氏とのコラボレーションによって誕生したという。中国メーカーでありながら、どこか欧州の雰囲気を感じさせるのは、これが大きな理由だろう。
タイヤサイズは前後ともニンジャZX-4Rと共通(120/70ZR17、160/60ZR17)で、標準装着タイヤはCST製のMIGRA S3Nだ。指定空気圧はフロント220±10kPa、リヤ250±10kPaとなっている。
日本で展開される車体色はレッド、ホワイト、ブラックの3種類だ。
イギリスではエンジンのストローク量を2.1mm伸長して排気量を421ccとした「SRK 421 RR」が販売されている。画像のレッドとシルバーのツートーンはSRK 400 RSにはない専用カラーだ。

官能的な直4サウンドと伸び上がり、でもうるさくない!?

QJモーターから送り込まれた新型スーパースポーツ、SRK 400 RS。その存在を知ったとき、多くの日本人ライダーはこう思ったのではないだろうか。

「中国製の400cc直4? 本当に大丈夫なのか」と。

だが、その先入観はセルボタンを押した瞬間に崩れ始める。

カワサキのニンジャZX-4Rが登場してからおよそ3年。ついに“対抗馬”と呼べる存在が現れた。しかも、その舞台は日本でも欧州でもなく、中国だ。

SRK 400 RSは、ZX-4Rと同じ57kW(77.6PS、カワサキは78PSと表記)を発揮する独自設計の水冷並列4気筒エンジンを搭載。ラムエアシステムに加え、ライディングモード切り替え(ノーマル、スポーツ)、トラクションコントロール、ローンチコントロールなども装備する。一方でZX-4Rは電子制御スロットルやクイックシフターを採用しており、電子デバイスの作り込みでは依然としてカワサキが一歩先を行く印象だ。

搭載される水冷並列4気筒エンジンのボア×ストロークはZX-4Rと同じ(57.0×39.1mm)で、排気量は399ccだ。動弁系は直打式のDOHC 4バルブで、鍛造合金鋼のカムシャフトを採用する。QJモーターUKのサイトでは、FCC製のクラッチプレートやNTN製のベアリング、リケンNPR製のピストンリング、大同特殊鋼製のクランクシャフトベアリングなど、日本メーカーのハイエンドパーツを使用していることを強くアピールしている。最高出力は77.6PS(57.0kW)/14000rpm、最大トルクは39.0Nm/13200rpmを公称する。

だが、SRK 400 RSにはスペック表だけでは伝わらない“熱”がある。エンジンを始動すると、腹の底をくすぐるような直4サウンドが響き渡る。音そのものはワイルドだが、ただ騒々しいだけではない。荒々しさの中に不思議な整い方があり、「これは本当に400ccなのか?」と思わされる密度感がある。

操作力の軽いクラッチレバーを握り、ローにシフトしてスタートする。まず驚くのは、低回転域での扱いやすさだ。発進はデリケートではなく、むしろスッと自然に前へ出る。ZX-4R SEより14kg(7.4%)も軽い車重も効いているのだろう。市街地でもバイクがやけに軽快に感じられる。

そこからスロットルを開けていくと、ややザラついていた排気音が6000rpm付近でスッと収れんし、同時に加速が一段階鋭くなる。かつてのホンダ・CB400SFのVTECのように劇的な変貌ではない。だが、「ここから先が本番だ」と語りかけてくるような表情の変化があり、それが実に気持ちいい。

トップ6速、60km/hでの回転数はおよそ約3500rpm。100km/hでは約5500rpmとなる。試乗車はまだ積算距離30km未満の慣らし状態だったため高回転域の多用は控えたものの、それでも何度か試した10000rpmオーバーでの伸び上がりは鮮烈だった。あの甲高いサウンド。回転上昇とともに高まっていく昂揚感。そして、「もっと回したい」と思わせる中毒性。レーサーレプリカ全盛期を知る世代(筆者もそうだ)なら、当時の熱狂が脳裏に蘇るはずだ。

興味深いのは、このエンジンが単に刺激的なだけではないことだ。ノーマルとスポーツモードの違いは極端ではないが、それは扱いやすさを優先した結果だという。実際、Uターンで使うようなスロットル微開度域でも唐突さはなく、中~高回転域でもレスポンスは自然。不快な微振動やメカノイズもほとんど感じない。加えて、クラッチやシフトの操作感にも粗さはなく、全体としての完成度はかなり高い。

率直に言えば、この直4ユニットは「中国製だから」という色眼鏡を外して評価すべきレベルに達している。少なくともフィーリング面では、ZX-4Rと真正面から比較できるところまで来ているのは間違いない。

さらに驚かされたのが“音量”だ。ライダー視点ではかなり官能的に聞こえるため、「傍から聞いたら相当うるさいのでは」と思い、同行のライダーに乗ってもらって並走確認してみた。ところが、外から聞くSRK 400 RSは拍子抜けするほど静かだったのである。乗り手だけを高揚させ、周囲には不快感を与えにくい。もしこれを意図的なサウンドチューニングで実現しているのだとしたら、QJモーターの技術力は我々が思っている以上に高い。

2022年モデル以前のニンジャZX-25Rを彷彿させるコンパクトなマフラーは、マスの集中化と低重心化に貢献。ライダーには咆吼と言えるほどの官能的な直4サウンドを聴かせるが、周囲で聞いていると意外にも静かに感じられるのが不思議だ。

ブレーキもハンドリングも本気、走らせて分かる完成度

シャシーで最初に衝撃を受けたのは、ブレーキの質感だった。初期入力の柔らかなタッチ。そこから握り込んだ際の自然な制動力の立ち上がり。さらに、リリース時の絶妙なコントロール性。どの場面でもフィーリングが極めて上質なのだ。

単によく止まるだけではない。ライダーの指先のニュアンスをきちんと汲み取ってくれる。特にフロントブレーキは、コーナー進入時に強烈な安心感を生み出しており、さらに二次旋回ではリヤが自然にいい仕事をしてくれる。ブレンボ製キャリパーをはじめ、パッドやディスク、マスターシリンダー、そしてホース類まで、総合的なマッチングがかなり煮詰められている印象だ。

フロントキャリパーは、QJモーターの緊密型パートナーであるブレンボ製のラジアルマウント対向式4ピストンで、これにφ300mmフローティングディスクを組み合わせる。ABSはボッシュ製のデュアルチャンネル式だ。ホイールはアルミキャストで、塗装後に切削加工が施される。
セミラジアルポンプ式のマスターシリンダーを採用。優れたブレーキコントロール性の源になっているのは間違いない。

そして、ハンドリングがまた素晴らしい。基本的には一般道での扱いやすさを重視した性格だが、ほんの少しブレーキを残した状態でコーナーへ進入すると、急にスーパースポーツらしい鋭い旋回力が顔を出す。スロットルのオンオフだけでも自然に車体がピッチングし、コーナリング中のライン変更も自由自在。まるで軽量な2気筒モデルのように向きを変えていく。

スチールとアルミを組み合わせたハイブリッドフレームは、ヘッド周辺にはしっかりした剛性感を持たせながら、アルミツインスパーのような過剰な硬さはない。全体としてはしなやかで、タイヤを通して路面をていねいにつかみ続ける感触がある。このフィーリングはどこかで……。そう、これはイタリアのMVアグスタに通じるものだ

フレームはスチール製トレリスタイプのフロントセクションと、アルミ製のピボットプレート、そしてアルミパイプによるシートレールで構成されている。発想としてはMVアグスタに限りなく近い。また、サイドスタンドもアルミ製であり、車両重量がZX-4R SEの190kg、ZX-25R SE(250cc)の184kgに対して176kgと軽量なのもSRK 400 RSの大きなアドバンテージだ。ちなみに前後輪分布荷重は52.8:47.2となっている。

つまりSRK 400 RSは、単に「速い中国製バイク」ではなく、ハンドリングを楽しめるスポーツバイクとして成立しているのだ。その完成度を支えているのが、マルゾッキ製サスペンションとCST製ラジアルタイヤだろう。まだ慣らし段階にもかかわらず、前後のサスペンションは動き出しから非常にスムーズで、乗り心地もいい。ストローク感も潤沢に伝わり、路面からの入力をうまく丸め込みながら接地感を失わない。加えて、標準装着タイヤもグリップ感は十分であり、路面の細かな荒れの吸収性も高かった。つまり足周りの総合力についても、率直に言ってZX-4Rと十分比較できるレベルにある。

倒立式フロントフォークは、QJモーターと合弁会社を設立しているマルゾッキの製品で、フルアジャスタブル仕様となっている。すべてトップキャップ側で調整できるので作業性は良い。プリロードの標準セッティングは、右側が最弱から3回転締め、左側が1.5回転締めと、左右で異なっている。
リヤサスペンションは、ZX-4RやZX-25Rのホリゾンタルバックリンクによく似たリンク機構を採用。ショックユニットはフロントと同様にマルゾッキ製で、プリロードと減衰力の調整が可能だ。

QJモーターはすでに250cc、400cc、421cc、600cc、680cc、800cc、921ccの直4モデルを量産化しており、さらに1051ccも控えているという。もはや「中国メーカーだから」という時代ではない。少なくともSRK 400 RSに関して言えば、日本人ライダーが想像している以上に本気で作り込まれた1台だった。

そして何より重要なのは、このバイクが単なるスペック競争の産物ではなく、“直4スーパースポーツに憧れた世代の感情”をちゃんと理解して作られていることだ。令和8年の日本で、再びこんな400cc直4に出会えた。それだけでも、レーサーレプリカブームを肌で知るバイク乗りとして素直にうれしい。

筆者が2023年に試乗したニンジャZX-4R SE。最新モデルの価格は117万7000円で、上位モデルのZX-4RRは121万円となっている。400ccの直4スーパースポーツが欲しい人にとって、SRK 400 RSの104万8000円は非常に魅力的に映るだろう。

ライディングポジション&足着き性(175cm/67kg)

シート高は795mmで、足着き性はご覧のとおり優秀だ。幅の広い直4エンジンを搭載しながら、足元はスリムに絞られており、下半身の収まり具合は良好。スーパースポーツらしいライポジを形成しながらもハンドルは極端に低すぎず、片側1車線の道路でもUターンはそれほど難しくはない。

ディテール解説

リヤブレーキはブレンボ製対向式2ピストンキャリパーとφ240mmソリッドディスクの組み合わせだ。
スイングアームはアルミキャスト製(ZX-4Rはスチール製)で、切削加工が施される。ドライブチェーンは520サイズだ。
肉抜きデザインのトップブリッジの下部にセパレートハンドルをマウント。燃料タンク容量は16.5Lで、レギュラーガソリンが指定となっている。
多機能メーターを操作するためのボタンは左側に集約されている。スロットルは電子制御式ではなく、ワイヤーはスロットルボディにまでつながっている。
7インチのカラーTFTディスプレイを採用。ライディングモードの切り替えをはじめ、トラクションコントロールやIMUと連携したローンチコントロール、ABSなどもメニューを呼び出して設定の変更操作を行う。なお、QJモーターUKのサイトではスマホとの接続機構やTPMS(タイヤ空気圧監視システム)についても言及されているが、これは仕向地によって異なるのかもしれない。
シフトペダルの踏部は偏心式で、高さや距離を細かくアジャストできるのがうれしい。
シートは前後別体式。ライダー側の表皮は2色を組み合わせたもので、タンデム側は左右が分離しているという、非常に凝ったデザインとなっている。
ライダーシートはキーロックを解除することで取り外し可能。バッテリーへのアクセスがしやすい。
ライダーシートのベースにはトルクスレンチが2本備えられている。
日本語表記の取扱説明書が用意されている。
灯火類はオールLEDで、ウインカーはシーケンシャルタイプだ。ラムエアダクトはフロントカウルの左側を通ってエアクリーナーボックスへと導かれる。
中央がテールランプ、左右がストップランプだ。前後にドラレコが装着できそうな造型が確認できるが、これについては「ドライブレコーダー等の装備は、将来的なアップデートの検討項目の一つです」というのがQJモーターからの正式な回答だ。
フロントカウル内にはUSB-AとUSB-C(急速充電対応)の電源ソケットあり。

QJモーター・SRK 400 RS 主要諸元

エンジン
Type 4-Cylinder, 16V DOHC, Liquid-Cooled
ボアストローク 57.0×39.1mm
排気量 399cc
最高出力 57.0kW/14000rpm(77.6PS)
最大トルク 39.0N·m/13200rpm
燃料システム EFI
燃料供給装置形式 Electric
クラッチ Wet multi-plate
トランスミッション 6 Gears, Chain
使用燃料 Regular gasoline

シャシー
フロントサスペンション Upside down telescopic forks
リアサスペンション Telescopic coil spring oil damped
フロントタイヤ 120/70 ZR17
リアタイヤ 160/60 ZR17
フロントブレーキ Disc ø300mm(ABS)
リアブレーキ Disc ø240mm(ABS)

ディメンション
全体L×W×H 2020×755×1170mm
ホイールベース 1385mm
座席高 795mm
地上高 140mm
車両重量 176kg
燃料容量 16.5L