
ひと言で「クルマ好き」と括ることがあるけれど、その対象となるクルマは人により千差万別。新車、中古車、セダン、スポーツカー、オープンカー、軽自動車とジャンルは様々。その中で旧車が好きという人は、やはり変わった趣味と言えそうだ。ところが旧車の中にもあらゆるジャンルがあり、傾向が違えば交流する人の輪も噛み合わない。面白いもので今回取材した「富士山オールドカーフェスタ」の会場でも、交流する人の輪は展示車の周囲でまったく傾向が異なるものだった。

当然といえば当然なのだが、明らかに異彩を放っていたのが日産ホーマーの周囲にいた人たち。旧車乗りというと60代以上で70代がそろそろ中心層になっているが、ホーマーの周囲には40代50代くらいの人たちが集まっていた。NOx法により絶滅的に数を減らした古い商用車だが、静岡県は対象地区ではないため今でも登録、継続検査を受けることができる。とは言え会場に展示された商用車はミゼットなどの軽自動車を除けば、このホーマーくらいなものだった。

仲間内で盛り上がっていたところ恐縮ながら、ホーマーのオーナーは誰ですかと割り込んでしまった。旧車イベントでもこの手の商用車を見かけることはまずないため、ぜひお話を聞かせてもらおうと思ったのだ。すると名乗り出てくれたのは57歳の菅原和仁さん。事前に主催者へ連絡して当日クルマで向かうことを伝えると、駐車場をひと枠確保してくれた。当日朝に案内係へ声をかけてほしいと伝えられたものの、その人物が見当たらない。用意されたスペースへ駐車したのだが、その案内係が菅原さんだった。

イベントなのだから仲間が集まるし話が盛り上がれば案内を忘れてしまうもの。そんな話を皮切りに菅原さんがホーマーを入手するエピソードが聞けた。昔から古いトラックが好きで探してきたが、納得できる個体に巡り合えない日々が続いた。ところが2019年の展示即売イベントで、このホーマーを見つけることができた。販売するのは日産やプリンス自動車系の商用車を多く扱う「バラクーダ」というショップ。店主の飯田さんに話を聞くも、すでに売れてしまったとか。

ところが縁があったのだろう。その6年後に同じホーマーが再び菅原さんの前へ現れる。なんとネットオークションに出品されていたのだ。その情報を飯田さんから知らされると「これは買うしかない!」と即決。そのまま「バラクーダ」へホーマーを輸送してもらい、メンテナンスを施されてから納車とあいなった。

菅原さんがお住まいなのは地元の静岡県。NOx法で規制されていない地域だったことも幸運だったといえる。都市部では古いトラックなどは中古新規で登録できないからだ。中古新規登録のため希望ナンバーを選び、クルマの年式と同じ数字にすることもできた。納車後、菅原さんは荷台のホロを新たに作り直して装着している。そして荷台には畳を敷き詰めた。トラックながらキャンパーのように使いたいからだ。

遠出した時などに車中泊を楽しんでいるということで、荷台の内部を拝見させていただくと畳の上にマットが敷かれ、寝袋に包まれれば快適に寝ることができそう。さらにテーブルや椅子、コンロなども積んで煮炊きもできるからキャンピングカーさながらの装備を揃えている。暑さ寒さ対策を講じれば季節を問わず楽しめることだろう。

走行距離が驚異的に伸びていないことも幸運だった。なんと今でも2万6000km台なので内外装とも程度がすこぶる良い。エンジンなどの機関部も調子が良いそうだが、一度だけトラブルに見舞われた。ブレーキのマスターバックが壊れてしまったのだ。だが「バラクーダ」という心強い味方がいるので、オーバーホールしてもらうのは訳もないこと。

商用旧車を楽しまれている菅原さんだが他に所有しているクルマを聞くと、やはり少々変わった趣味の持ち主だった。原付ミニカーであるアビーやT-10Gという2台のタケオカ自動車工芸製ミニカーを所有されているそうだ。原付ミニカーを趣味にする層は一定数いる。そして彼らに共通しているのは複数台所有してしまうこと。手軽さと趣味性の高さからなのだろうが、あまり一般的な理解を得られないものでもある。そんな趣味を持つ菅原さんだからこそ、古いトラックが好みに合うのだろう。