
先生(右):損 保太郎
某損保サービスセンターに勤務。今回は、知っているようで知らない自動車保険の「免責事由」について教えるよ。
生徒(左):モン太
保険って事故が起きたら無条件で支払われると思っていたモン。保険金が出ない場合があるって、どういうこと?
ケース1 飲酒運転・薬物使用・無免許運転では自分の補償が出ない!?
飲酒運転や無免許運転で事故を起こせば、保険金はすべて支払われないと思われがちだ。しかし、補償されないのはおもに運転者自身のケガや契約車両の損害。被害者への対人・対物賠償は、別の考え方で扱われる。
損 保太郎(以下、保太郎) これは常識として知っていると思うけど、飲酒運転や麻薬・覚醒剤などの影響を受けた状態で事故を起こした場合、運転者自身のケガや契約車両の損害に対する保険金は、原則として支払われないんだ。
モン太 そりゃ自業自得だモン。でも、事故に巻き込まれた被害者はかわいそうだなあ。
保太郎 もう少し詳しく説明すると、支払われないのは、おもに飲酒運転をした本人側の損害を補償する車両保険や人身傷害保険など。被害者救済の観点から、相手への対人賠償責任保険や対物賠償責任保険は、飲酒運転による事故でも支払いの対象になるんだ。無免許運転の場合も、基本的な考え方は同様だよ。
モン太 飲酒運転でも、被害者への補償まで出なくなるわけではないんだモンね。
保太郎 そういうこと。ただし、だからといって運転者の責任が軽くなるわけではない。刑事上や行政上の処分を受けることはもちろん、事故の内容や契約状況によっては、次回の保険更新を断られたり、契約条件が厳しくなったりする可能性もあるんだ。
モン太 お酒って数時間では抜けないこともあるから、絶対に運転しないように気を付けたいモン!
ケース2 父母・配偶者・子への損害は対人・対物賠償の対象外になることも
自宅や駐車場で家族のクルマにぶつけてしまった場合も、対物賠償で直せるとは限らない。一般的な自動車保険では、運転者や被保険者と近い関係にある家族への損害が、対人・対物賠償の対象外になることがある。
保太郎 例えば、モン太君が自宅でバイクを停めようとしてバランスを崩し、隣に停まっていたお母さんのクルマにぶつけてしまったとする。この場合、お母さんのクルマの修理費用は、一般的な対物賠償責任保険では補償されないことが多いんだ。
モン太 家族のクルマでも、ぶつけたことには変わりないのにダメだモンか?
保太郎 一般的な自動車保険では、運転者や被保険者、その父母・配偶者・子に対する対人賠償や、それらの人が所有・使用・管理するクルマや財物に対する対物賠償は、補償の対象外になることが多いんだ。乗っていたお母さんをケガさせてしまった場合も、対人賠償責任保険の対象にならないケースがある。
モン太 そうだったモンか! パパとママにはとくに注意ってことだモンな!
保太郎 ただし、家族のケガやクルマの損害が、人身傷害保険や車両保険など、別の補償で対象になる可能性はあるよ。誰が運転したのか、誰がクルマを所有しているのか、どの補償に入っているのかで扱いが変わるから、保険会社や代理店へ確認することが大切だね。
ケース3 地震・噴火・津波や戦争などによる損害は原則対象外
自然災害による損害なら、車両保険ですべて補償されるわけではない。台風や洪水、高潮が補償される契約でも、地震・噴火や、それらによる津波は一般的な車両保険の対象外となっている。
モン太 地震もダメだモンか? 地震大国なのに不安だモン。
保太郎 そうなんだ。おもに車両保険で問題になるんだけど、一般的な自動車保険では、地震・噴火や、それらによる津波でクルマやバイクに生じた損害は補償の対象外となっている。また、戦争や内乱、暴動などの異常な事態によって生じた損害も、免責とされるのが一般的だよ。
モン太 どうして地震による損害は対象外なんだモン?
保太郎 一度に広い地域で甚大な損害が発生する可能性があるため、通常の車両保険では免責とされているんだ。ただし、保険会社によっては、地震・噴火・津波で車両が全損になった場合などに定額を支払う特約が用意されていることもあるよ。
モン太 特約で備えられる場合もあるんだモンね。
保太郎 いっぽう、一般的な車両保険では、台風や洪水、高潮による損害が補償されることも多い。ただし、契約している車両保険のタイプや補償範囲によっては対象外になる場合もあるから、「自然災害なら全部同じ」と考えず、約款を確認しておこう。
ケース4 故意の事故や偽装請求は保険金詐欺になることも
自動車保険が補償するのは、基本的に偶然起きた事故だ。保険金を受け取る目的で故意に事故を起こしたり、事故の日時や原因を偽ったりすれば、保険金が支払われないだけでなく、刑事責任を問われる可能性もある。
モン太 これって、わざと事故を起こした場合のことでしょ。それはダメに決まってるモン!
保太郎 保険金を受け取る目的でわざと事故を起こしたり、自作自演で事故が起きたようにクルマやバイクへ傷を付けたりした場合、保険金は支払われない。保険金が出ないだけではなく、保険金詐欺として刑事責任を問われる可能性もあるから、絶対にやってはいけないよ。
モン太 当たり前だモン。そんなことしないモン!
保太郎 あおり運転によって故意に衝突させたなどと判断された場合も、事故状況や補償の種類によっては保険金が支払われない可能性がある。もちろん、道路交通法違反や刑事責任を問われることもあるから、絶対にやってはいけない。
余談だけど、事故が起きたあとに保険へ加入し、事故が保険期間中に起きたように装って請求する不正行為もある。保険業界では「アフターロス」などと呼ばれるもので、これも保険金詐欺に問われる可能性があるんだ。
モン太 スマートフォンで簡単に申し込める保険でも、事故が起きたあとから補償してもらうことはできないモンね。
保太郎 その通り。保険は契約で定められた補償開始日時以降に起きた、偶然の事故へ備えるもの。いつ事故が起きたのかを偽って請求するのは、れっきとした不正行為だよ。
ケース5 レースやサーキット走行は一般的な自動車保険の対象外
公道走行を前提とした一般的な自動車保険は、レースや競技、曲技、試験走行などによる高いリスクまで補償するものではない。サーキット走行会やスポーツ走行も対象外となることが多いため、参加前の確認が必要だ。
保太郎 一般的な自動車保険では、レースやスタントライディングなどの競技・曲技・試験にクルマやバイクを使用している場合や、それらを行うことを目的とする場所で使用している場合、事故による損害は補償されないことが多いんだ。
モン太 たしかに~。公道を普通に走るのとは、リスクがだいぶ違うモンね~。
保太郎 近年人気のサーキットで行われる走行会やスポーツ走行なども、通常の自動車保険では対象外となる可能性が高い。ただし、保険商品や走行イベントの条件によって扱いは異なるから、参加する前に契約先の保険会社や主催者へ確認しよう。走行会やモータースポーツ向けの専用保険が用意されている場合もあるよ。
モン太 公道用の任意保険に入っているから、そのままサーキットでも安心というわけではないんだモンね。
保太郎 今回は代表的な免責事由について解説したけど、保険金が支払われないケースはほかにもあるんだ。さらに、同じ事故でも補償の種類や契約内容、特約の有無によって結論が変わることもある。いざという時に困らないように、一度、自分が加入している保険の約款や重要事項説明書をチェックしてみてね!
※ここでは一般的な自動車保険について解説しています。保険金の支払可否や補償範囲は、保険会社、商品、契約内容、特約、運転者や事故の状況などによって異なります。詳しくは、ご加入の保険会社または保険代理店へお問い合わせください。
※この記事は月刊モトチャンプ2024年10月号を基に加筆修正を行っています
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