連載
自衛隊新戦力図鑑AI(人工知能)を搭載したドローンとは
今回、楽天グループはドイツの大手ドローン企業、ヘルシング社と提携し、同社の攻撃型ドローン「HX-2」の陸上自衛隊への導入を支援するという。楽天の役割は、ヘルシングと陸上自衛隊を仲介する商社としての役回りであり、製造・開発には関与しない。

HX-2は全長1.1mの自爆攻撃型ドローンだ。主な目標は、戦闘車両、火砲、陣地などの軍事施設であり、遠隔操作で飛行し、目標を捜索・捕捉したのち、体当たり攻撃を実行する。ヘルシング社はHX-2を「AIストライク・ドローン(AI攻撃ドローン)」と呼んでいるが、これを「AIが勝手に人を襲う」イメージで捉えている人もいるようだ。
ヘルシング社の説明によれば、HX-2のAIには以下のような機能がある。ひとつが測位・航法であり、下向きカメラの映像と記憶したデジタルマップを継続的に照合することで、衛星測位システム(GPSなど)に頼らず自己位置を把握しながら飛行を継続することができる。また、自動目標認識(ATR)と呼ばれる機能により、(具体的な原理は不明だが)AIが自律的に攻撃目標を捜索・識別することが可能であるという。

攻撃の判断は人間が行なう
こうしたドローンの自律機能の一方で、ヘルシング社は攻撃の最終判断を人間が行なうことを明言している。HX-2の機首にはカメラが搭載されており、人間の手で操縦や目標選定を行なう。AIは電子攻撃による通信切断などに備えた“人間を補助する”機能と考えるべきだろう。
また、ヘルシング社のAIは単に機体に搭載されているだけでなく、操縦者やそのほかの部隊(偵察ドローン、味方砲兵、指揮統制部隊)を繋げる共通基盤ともなっている。これにより、目標発見から攻撃・破壊までの流れ(専門用語で「キルチェーン」)を迅速化し、機会を逃さない攻撃を可能としている。

以上のように、HX-2が備えるAI機能は、人間を助け、運用全体の効率化を図るものであり、「勝手に人を襲う」ようなものではない。また、陸上自衛隊が攻撃型ドローンを導入する目的も、隊員の生命を危険にさらすことなく効率的に日本や同盟・友好国への侵略を阻止することで、無差別な攻撃などではないことは言うまでもない。
HX-2と楽天を巡る議論を見たとき、装備品の用途や能力、陸上自衛隊での運用目的などを考慮することなく、イメージ先行の批判が目立つ。実態を正しく理解したうえでの、冷静な議論が求められる。

