
先生:損 保太郎
某損保サービスセンター勤務。似ているようで大きく違う「人身傷害保険」と「搭乗者傷害保険」について解説する。
生徒:モン太
よく分からないまま、保険料の安さもあって搭乗者傷害保険に加入。「どっちもケガの保険なら同じじゃないの?」と思っている。
同じ「ケガの保険」でも、支払われ方がまるで違う!
モン太 どっちも事故でケガした時に使う保険っていうのは知っていたけど、何がどう違うのか分からなくて、ボクは安い方の「搭乗者傷害」保険に入ったモン。
損 保太郎(以下、保太郎) バイクやクルマに乗っている人、自分自身や同乗者のケガに対する補償という点では似ているね。でも、大きく違うのが保険金の計算方法なんだ。
人身傷害保険は、約款に定められた基準・計算方法に基づいて、保険金額を上限に実際に生じた損害を補償する、いわゆる「実損払い」。いっぽう搭乗者傷害保険は、ケガの程度や入通院などに応じて契約であらかじめ決められた金額を受け取る「定額払い」なんだ。日本損害保険協会でも、この支払方法の違いが両者の大きな違いとして説明されている。
モン太 「定額払い」って、具体的にはどんな感じモン?
保太郎 一例として、ケガをして4日以内の通院なら1万円、5日以上の入通院ならケガの内容に応じて10万円、30万円、50万円、100万円といった形で、あらかじめ決められた金額を支払うタイプがあるんだ。
【図1】搭乗者傷害保険の補償例

モン太 なるほど~。結構もらえるモンな。なんか十分な気もするモン。
保太郎 「搭乗者傷害」保険のメリットは、あらかじめ決められた金額を支払う仕組みだから、実際の損害額をひとつひとつ積み上げて算定する「人身傷害」保険に比べ、比較的シンプルに保険金を請求できるところにある。
だからイメージとしては、事故直後の突発的な出費をカバーする一時金として考えると分かりやすいね。
大きなケガでは差が出る! 人身傷害は休業損害や逸失利益までカバー
モン太 じゃあ、「人身傷害」保険だったらどうモンか?
保太郎 「人身傷害」保険は実際に生じた損害額を補償するのが大きな特徴だね。
治療費だけでなく、通院交通費、休業損害、精神的損害、さらに後遺障害が残った場合などには逸失利益なども、契約内容や約款に定められた基準に基づいて補償の対象になる。過失割合にかかわらず、自分の過失分を含めた損害額について保険金額の範囲内で補償を受けられるのも特徴だよ。
モン太 仕事ができなくなった分まで関係するモンか。
保太郎 そう。例えば一家の大黒柱が大きなケガをして長期間働けなくなれば、治療費だけじゃなく、その間に得られなかった収入も大きな問題になるよね。
さらに重い後遺障害が残った場合には、将来得られたはずの収入である逸失利益や介護費用などを含め、損害額が非常に大きくなることもある。
そうなると、定額で支払われる「搭乗者傷害」保険だけでは、実際の損害を十分にカバーできない可能性が出てくるんだ。
モン太 ん~、考えさせられるモン……。
保太郎 「人身傷害」保険の場合、治療費については保険会社から医療機関へ直接支払ってもらえる場合もある。休業損害や精神的損害、後遺障害などについては必要な資料や治療経過を確認して損害額を算定するから、定額の一時金に比べると手続きに時間を要する場合もあるね。
【図2】人身傷害保険と搭乗者傷害保険の違い
| 人身傷害保険 | 搭乗者傷害保険 | |
|---|---|---|
| 支払い方 | 実損払い | 定額払い |
| 主な補償 | 治療費、休業損害、精神的損害、逸失利益、通院交通費など | 入通院日数やケガの程度などに応じ、あらかじめ決めた金額 |
| 保険料 | 比較的高くなる傾向 | 比較的抑えやすい傾向 |
| 支払い | 損害額の確認・算定が必要 | 比較的シンプル |
※商品・契約内容によって補償範囲や保険料、支払条件は異なります。
モン太 なるほど~。手厚い補償が受けられるのが人身傷害ってことだモンな。保険料はどれくらい違うモン?
保太郎 年齢や等級、車種、補償内容などによって大きく変わるから一概には言えないけど、契約条件によっては年間で数万円の差になることもあるね。
モン太 ひえ~、そりゃ悩むモン。
どっちを選ぶ? 保太郎のおすすめは「人身傷害をまず検討」
モン太 でも「搭乗者傷害」保険だけじゃ不安になってきたモン。
保太郎 ここからは統計的な話ではなくて、僕がこれまで業務で事故対応や契約内容を見てきた中での個人的な感覚として聞いてね。
原付などの保険では、「搭乗者傷害」保険だけを付けているケースも僕はこれまで何度も見てきた。でも、大きなケガになった時に補償が足りず、「人身傷害も付けておけば……」というケースを目にした経験もあるんだ。
だから僕自身としては、とくに一家の大黒柱だったり、バイク事故で仕事ができなくなった時に家族の生活への影響が大きい人なら、まず人身傷害保険を優先して検討してほしいと思っている。
モン太 「人身損害が絶対!」じゃなくて、生活への影響まで考えて選ぶってことモンね。
保太郎 そう。必要な補償は人によって違うからね。
そして予算が許すのであれば、「人身傷害」保険と「搭乗者傷害」保険を両方付けるという考え方もある。実際に発生した損害は「人身傷害」保険でカバーしつつ、「搭乗者傷害」保険の定額保険金を事故直後の突発的な出費に使う。そんな組み合わせだね。
モン太 なるほど~。「人身傷害」で生活を守って、「搭乗者傷害」をプラスの一時金として使うイメージだモンな。
保太郎 そういう考え方だね。ただ、保険料とのバランスも大事。すでに加入している生命保険や医療保険、家族構成、収入なども含めて「自分の場合はどこまで必要か」を考えるのが一番だよ。迷った際は一度保険会社に相談してみることをすすめるよ。
モン太 ちょっと今から自分の契約を確認して、見積もり取ってくるモン!
※ここでは一般的な自動車保険について解説しています。人身傷害保険・搭乗者傷害保険の名称、補償範囲、保険金額、支払条件などは保険会社や契約内容によって異なります。詳しくは加入している保険会社または代理店へご確認ください。
※この記事は月刊モトチャンプ2026年1月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】
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