高速道路でACCをセットし、速度調整をクルマに任せる。いまでは珍しくない運転方法だ。

ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)は、前方車両をレーダーやカメラなどで検知し、設定速度を上限に車間距離を維持しながらアクセルやブレーキを自動制御する運転支援機能である。メーカーによって名称は異なるが、現在では軽自動車やコンパクトカーにも広く採用されている。

長距離ドライブでドライバーの負担を軽減してくれるACCだが、気になるのが燃費への影響だ。「余計なアクセル操作が減るのだから、ACCを使ったほうが燃費も良くなる」と考えがちだが、実際はどうなのだろうか。
JAFは2025年1月、新東名高速道路の御殿場IC〜新城IC間で、トヨタ『ノア』のハイブリッド車などを使用した燃費テストを実施した。注目したいのは、同じハイブリッド車で100km/hに設定し、ACCを使用した場合と使用しなかった場合の比較である。
結果はACCありが20.7km/L、ACCなしが19.1km/L。ACCを使ったほうが1.6km/L、約8%高い燃費値を記録した。平均速度もACCありが84.5km/h、なしが86.8km/hで、極端な差はなかった。この結果だけを見ると、高速道路ではACCを使ったほうが燃費に有利だと考えたくなる。
実はJAFは2014年にも同様のテストを実施している。高速道路を往復約400km走行したところ、ACCを使用することで燃費が最大12%向上したという。
さらに興味深いのが、ドライバーの操作量だ。ACC使用時にドライバー自身がアクセルを踏んだ時間は、総走行時間4時間31分のうち、わずか1分6秒。ブレーキ操作も4回だった。他方、ACCを使用しなかった場合は、総走行時間4時間56分のうち4時間31分57秒にわたってアクセルを操作し、ブレーキ操作も82回に達した。
なぜ、これほどの差が生まれるのだろうか。ポイントとなるのが、ドライバーが無意識に繰り返している細かな加減速である。前走車との距離が縮まればアクセルを戻し、離れれば踏み足す。速度計を見て少し遅いと感じれば再び加速する。高速道路では一定速度で走っているつもりでも、実際にはこうした操作を繰り返している。ACCは速度や車間距離を監視しながらアクセルとブレーキを制御するため、こうした細かな加減速を抑えられる場合がある。JAFも、速度変動を抑える制御が燃費向上につながるとしている。
ところが、「ACCを使えば必ず燃費が良くなる」とは言い切れない。2024年に学術誌『Nature Communications』に掲載された研究では、95人のドライバーと157台の車両による4万356回の走行、総走行距離約109万kmという大規模な実走行データを分析している。その結果は意外なものだった。さまざまな走行条件を補正した車両群全体では、ACC使用時の燃料消費量が100kmあたり0.26L増加。平均すると約2%、燃費が悪化する結果となったのだ。
先述の通り、JAFの実走テストではACC使用時に約8%燃費が改善しているが、この大規模実走行データでは約2%悪化という結果になっている。なぜ、このような正反対ともいえる結果になったのだろうか。
理由のひとつが、ACCによる設定速度の維持制御である。例えば緩やかな上り坂では、燃費を意識するドライバーならアクセルを深く踏み込まず、多少の速度低下を許容することがある。他方、ACCは設定速度を維持しようとして加速する場合がある。研究でも、一定速度で巡航する場面ではACC使用時の燃料消費量が100kmあたり0.14L増加していた。しかしながら、加速する場面ではACCによって燃料消費量が100kmあたり0.71L減少するなど、逆に有利となるケースも確認されている。前走車の有無によっても結果は変化した。つまり、ACCが燃費に与える影響は一律ではなく、どのような状況で使用するかによって異なるということだ。
さらに、燃費を考えるうえでは設定速度も無視できない。2025年のJAFテストでは、ACCを使用したハイブリッド車の燃費は80km/h設定で24.4km/L、100km/h設定で20.7km/Lだった。120km/h設定を含むテストでは17.1km/Lを記録している。なお、120km/hに設定したのは御殿場IC〜浜松いなさJCT間で、それ以外の区間は100km/h設定で走行している。そのため、17.1km/Lは全区間を120km/h設定で走行した結果ではない。このように、ACCを使用していても、設定速度や走行条件によって燃費には大きな差が生じる。
では結局、ACCは燃費に有利なのだろうか。JAFの実走テストを見る限り、高速道路でACCを適切に使用し、細かな加減速を抑えることができれば、燃費向上は十分に期待できる。一方、約109万kmの走行データを分析した大規模研究では、ACCによって燃料消費が増える状況も確認されている。
両者はテスト方法や走行条件が異なるため、単純にどちらが正しいと結論づけることはできない。ACCの本来の役割は、ドライバーの運転負担を軽減しながら、速度や車間距離の維持を支援することにある。燃費については、ACCをオンにするだけで改善すると考えるのではなく、交通状況に合わせて適切に使用し、設定速度を必要以上に高くしないことが重要だ。




