20kg積める! 広くてフラットな大型リヤデッキ

YAMAHA GEAR(BA50)|1994年発売

ギアを象徴する装備が、車体後部にドンと構えた大型リヤデッキだ。前後390mm、幅340mmの広くフラットなスペースを確保し、最大積載量は20kg。荷物を固定するためのフックも備え、重量物の配達にも対応できる構成としていた。

一般的な50ccスクーターならシート下収納や普段の使いやすさが大きなポイントになるが、ギアは最初から“荷物を運ぶ仕事”を強く意識している。銀行業務、サービス業、新聞配達、各種デリバリーなど、さまざまな現場で使われることを想定したビジネススクーターだった。

しかも、ただ大きなキャリアを付けただけではない。荷物を積んだ状態でもしっかり走れるよう、専用設計の高剛性パイプフレームを採用。フットボード周辺も3本のフレームで支えるなど、積載時の走行安定性や耐久性まで考えられている。

5.0psでも中低速重視! 仕事で扱いやすい2ストエンジン

搭載するエンジンは、49cc空冷2ストローク単気筒。最高出力は5.0ps/6500rpm、最大トルクは0.57kgm/6000rpmとなっている。最高出力だけを見れば、同時代のスポーツスクーターより低い数値。狙ったのは、中低速域で扱いやすく、荷物を積んだ状態でも粘り強く走れる特性だ。Vベルト式無段変速を組み合わせ、クラッチ操作やギヤチェンジも不要。スクーターの手軽さをそのまま仕事へ持ち込めるのがギアの強みだった。

フロントには12インチ、リヤには幅広い110/90-10タイヤを採用。燃料タンクも9Lと大きく、頻繁に走り回る業務用途を考えた構成となっている。シート高は720mmで、乗り降りのしやすも優れていた。

“仕事のバイク”なのに、この姿が妙にカッコ良かった

機能を優先したギアだけれど、その個性的なフォルムも見逃せない。

低く構えたフロアに、大きなリヤデッキ、前後で異なるサイズのタイヤ。一般的なスクーターとは明らかに違うプロポーションは、仕事のために必要な機能を突き詰めた結果でもあった。

その独特な姿は、のちにストリートカスタムの世界でも注目されるようになる。2003年にはブラックボディの「ブラックエディション」、2004年にはパイプハンドルや小型フロントフェンダーなどを採用した「ギアBA50C」まで登場。実用車として生まれたスタイルが、そのままカスタムの素材としても受け入れられていった。

ギアが登場したのは1994年。都市部で増えていた小口デリバリーに応えるため、積載性、耐久性、扱いやすさをスクータースタイルに詰め込んだ。その結果生まれたのが、この独特な形だった。

20kg積める大型リヤデッキも、中低速重視のエンジンも、丈夫な車体も、すべては“働くため”。ギアはスクーターを仕事の道具として徹底的に作り込んだ1台だった。

【SPECIFICATIONS】

総排気量:49cc
エンジン:空冷2ストローク単気筒
最高出力:5.0ps/6500rpm
最大トルク:0.57kgm/6000rpm
全長×全幅×全高:1850×650×1035mm
重量:78kg
タイヤ:90/90-12・110/90-10
燃料タンク容量:9L
シート高:720mm
発売当時価格:21万5270円(税込)

※この記事は月刊モトチャンプ2025年12月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】