難波教授のデザインウォッチング:2019 ジュネーブショーまとめ 自動車デザインは今「西高東低」か。スバルの前デザイン部長・難波治教授が語る
- 2019/05/15
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MotorFan編集部

スバルの前デザイン部長で現在は、首都大学東京で教鞭をとる難波治教授が、ジュネーブ・モーターショーで世界のカーデザインのトレンドを取材した。その総括が今回のテーマ。教授は、現在の自動車デザインは「西高東低」だという。ここでいう西は、ヨーロッパメーカー、東は日本メーカーだ。今回、特に注目した新型プジョー208、ルノー・クリオ、そしてマツダCX-30をテキストに難波教授が語る。
TEXT & PHOTO◎難波 治(NAMBA Osamu/首都大学東京教授)

ジュネーブショーはそんなヨーロッパのオートショーのなかでもメーカー出身国の偏りがない、ほぼ同条件でクルマを比較できる見やすいオートショーで、ここだけはどのメーカーも出展を取りやめたりしないと思っていたのですが、今年のショーはボルボやヒュンダイ、英国系のブランドなどが出展をしていませんでした。
その真の理由はわかりませんが、巨額の費用がかかるモーターショーでのブランド訴求の費用対効果や、自らのブランドにとってモーターショー開催国が主要なマーケットであるかなど、経営的な判断の結果なのだと思います。インターネット時代にモーターショーがどうあるべきかを真剣に考える時期にきているのは間違いありません。
とはいえ、やはりクルマは写真だけでは本当のことはわかりません。とくにデザインは実物を見て、目の前に置いてあるそのクルマを見てみないとわからないことが非常に多い商品です。自動車はカタログ通販で買える商品ではありません(と僕は信じているのです)。また、現物のクルマでさえディーラーの狭い展示スペースではわからない「サイズ感」や「存在感」なども、ショーでは多くのクルマが同じ会場に一堂に会しているからこそ比較も可能で、良くわかります。
新興メーカーの製品や次世代燃料への対応技術の進化などもモーターショーでないとなかなか触れることができません。ですから僕は毎年わざわざお金をかけてこのジュネーブ・ショーに行くことで、デザインの潮流を感じたり、出展している各社の造形の比較をしてみたり、また「商品」としての各社のクルマ作りを見る良い機会にしています。
しかしこういう見方はプロデザイナーの専門性の高い評価や観察の仕方です。ですから職業柄それはそれでやってますが、じつのところ僕は、出展し、クルマを並べて披露している自動車メーカーが、顧客にわかりやすい、シンプルだけどしっかりとしたメッセージを出しているかを自然体で見に行っているのです。
そして場合によっては、こちらの感じ方のほうが僕にとっての重要度は上位にあったりします。いずれにせよ僕は自動車メーカーのインハウスデザイナーが(もしくはデザインを司る部門が)どのようにどんな手法でブランドのメッセージを可視化しようとしているかを感じにいっているのです。
さて、自動車は商品ですから、そのメーカーが、もっとも得意とし、生き延びていくために主要なマーケットで求められているクルマの立ち位置や、そのマーケットのお客様の嗜好の違いがあるので、同じ土俵で単純に比較することは大変難しいのですが、僕はデザインのテーマ性(前述のメッセージ性)とそれらを確実に表現するためにどれだけ造形に力を注いでいるかという「作りこみ」の度合いとその達成度を見るようにしています。
また一方で、クルマは走る道具なので外観を構成する造形の構成が、きちんと走るクルマに見えるかどうかも見ています(これ、とっても大事なんですね)。さらには先ほども書きましたが実際にクルマを使用するのはディーラーのショールームではないので、クルマを外光のもとに置いたときにどう見えるか、少し離れた距離で見たときに造形やブランドの発信力があるかどうかも見るようにしています。
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