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  • 2019/05/16
  • 遠藤正賢

〈試乗記:ホンダS660モデューロX〉盤石の接地性とリニアなハンドリング、ブレーキのタッチ。内外装の質感も軽自動車の次元を超越している!

限られた購入層を想定すれば文字通りの“コンプリート”カーへの進化を望みたくなる

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S660モデューロXのS07A型エンジン

ベンチマークはS2000

 このほか、ノーマルと共通の部分にも言及しておきたい。ターボチャージャーをハイレスポンスタイプとした専用セッティングのS07A型ターボエンジンは相応にターボラグが大きく、3000rpm以下では反応が鈍いものの、それ以上ではアクセル操作に対するツキが良くなり、6速MT車ではCVT車より700rpm高められたレブリミット7700rpmまで一気に吹け上がる。

S660モデューロXのメーターパネル

 ただしそのサウンドは意外なほど大人しく、クローズ時はロードノイズ、オープン時は風切り音にかき消されるため、シフトチェンジの際に回転を合わせるにもタコメーターの動きを注視しなければならない。マフラー交換は必須のチューニングメニューと言えそうだ。

S660モデューロXの6速MT。チタン製シフトノブを標準装備
S660とその他ホンダ製スポーツカーのMTシフトストローク比較グラフ

 また、6速MTの「S2000に匹敵するシフトストロークの短さ」というホンダの主張に嘘偽りはなく、短くソリッドで、それでいながら軽くスムーズな、ホンダ車らしいシフトワークを楽しめる。

6速MT各ギヤのエンジン回転数と速度の相関グラフ

 ただしギヤ比も、2.0L自然吸気で9000rpmを許容するS2000と、レブリミット7700rpmの660ccターボながら実質的にほぼ変わらず、軽自動車のスポーツカーとしては全体的にハイギヤード。特に6速は高速巡航時の静粛性確保のため100km/h走行時に3200rpmとなるよう設定されている。せめて最終減速比をもっとローギヤード化し、加速重視に振った方が、スポーツカーらしくキビキビと走れるだろう。

【S660 6速MTのギヤ比】
1速 3.571
2速 2.227
3速 1.529
4速 1.150
5速 0.869
6速 0.686
後退 3.615
最終減速比 4.875

S660のボディ骨格

 S660ではほかにも、S2000と同等レベルを達成したとホンダが主張する項目がある。それはボディ剛性と、オープン走行時の爽快感だ。結論から言えば、前者は達成しており、後者は遠く及ばない。

S660とその他ホンダ製スポーツカーの静ねじり剛性比較グラフ

 センタートンネルとサイドシルが高く太く直線的なことは、車内に乗り込んだ瞬間に気付くだろうが、これは前後のサイドメンバーも同様。さらにサスペンション取付部など局部剛性が必要な箇所には補強バーを入れることで、S2000をしのぐ静ねじり剛性を確保したというが、実際に走行してもボディに頼りなさを覚える局面は皆無と言っていい。

S660とその他ホンダ製スポーツカーの重心高比較グラフ

 その一方、S660は横転対策のためBピラーとクロスメンバーを設け、Aピラーとの間に巻き取り式のソフトトップを装着するタルガトップ構造を採用。また重心高を下げるため、全高をS2000より105mm低い1180mmとしているが、正直なところ「やり過ぎ」の感は否めない。

 身長176cm、座高90cmの筆者では、適切なドライビングポジションと取ると、後頭部がクロスメンバーに当たってしまうのだ。これでは筆者と同等以上の座高を持つ人がヘルメットを被りサーキットを走行するのは不可能だと断言できる。

S660モデューロXのサイドビュー
S2000のサイドビュー

S660とその他ホンダ製オープンカーのアイポイント・ルーフレール間距離比較グラフ

 なお、アイポイントとルーフレール間の距離をS2000と同等レベルに設定しているというが、Aピラーの傾斜が極めて少なくBピラーもないため開放感に優れるS2000と同じであるはずはなく、全高が105mm低いことも相まってむしろ閉塞感が強い。

ボルドーレッドの巻き取り式ソフトトップを装着したS660モデューロX
ソフトトップを専用ボックスに収納した状態のフロントまわり

 そして、巻き取り式ソフトトップを採用したためその収納スペースが必要となり、結果としてラゲッジスペースはゼロ。良くも悪くも“タイヤが4つ付いたバイク”であり、日常の買い物程度はこなせるS2000よりもむしろ購入のハードルが高くなっている。だから私はS660デビュー当時、購入を断念した。

 S660モデューロXの285万120円という車両本体価格は、その内外装と走りの質感からすれば大いに納得できるものだが、S660自体の構造上の問題から複数台所有が大前提となるため、実際に購入できるのは相応の収入と駐車スペースを持つ富裕層に限られる。

 ならばもう少し高価にしてでも、フルバケットシートやスポーツマフラー、ローレシオファイナルギヤやトルセンLSDなども入れて、走りに関しては隙のない、文字通りの“コンプリート”カーに仕上げてほしい……というのは、贅沢に過ぎるだろうか?

【Specifications】
<ホンダS660モデューロX(MR・6速MT)>
全長×全幅×全高:3395×1475×1180mm ホイールベース:2285mm 車両重量:830kg エンジン形式:直列3気筒DOHCターボ 排気量:658cc ボア×ストローク:64.0×68.2mm 圧縮比:9.2 最高出力:47kW(64ps)/6000rpm 最大トルク:104Nm(10.6kgm)/2600rpm JC08モード燃費:21.2km/L 車両価格:285万120円

ホンダS660モデューロX

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