LCから始まった新しいレクサス像が追求された新世代FFセダン レクサスESをメルセデス・ベンツEクラス、BMW5シリーズ、ジャガーXFと徹底比較!【ライバル比較インプレッション】
- 2019/06/10
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MotorFan編集部

LSに見紛えそうになるほどのエレガンスに、少しだけアクの強さが加えられたアピアランスは、今までESに足りないと指摘されていたエモーショナルな印象を増した。そして、その走りについては、レクサスが目指す“すっきりと奥深い”が具現化されている。日本のブランドである、レクサスらしい味わいが深化したESは、長く付き合えるパートナーとなるだろう。
REPORT●石井昌道(ISHII Masamichi)
PHOTO●平野 陽(HIRANO Akio)
内外装と走りに世界と戦う実力を身につけた新型ES
七代目にして初めて日本と欧州に導入されることになったレクサスES。確かに先代までは、アメリカで見掛けてもあまりスタイリングに魅力がなく、FFプラットフォームによる走りも平凡だろうと想像できたので、日欧では他のプレミアムブランドに対していい戦いができないように見えていた。
だが、新型ESはパッと見にはLSと見間違えるほどにスタイリッシュで存在感がある。新たに採用したGA-Kプラットフォームは低重心化を図るために各ユニットが低く搭載され、それによってボンネット高も抑えられている。FRに比べるとフロントアクスルがやや後方になるFFは、フロントオーバーハングが長くなりがちで、スタイリングの伸びやかさで不利になるが、新型ESはAピラーを後方に引いて、低くて長いボンネットを実現。さらにはリヤフェンダー周辺をボリューミーにしてリヤタイヤの踏ん張り感を強調するなどして、FRと見紛うようなスタイリッシュさを手に入れたのだ。GA-Kプラットフォームによって走りの性能もグンとアップし、開発陣が期待した以上に仕上がった。そこで日欧への導入に踏み切ることになったのだという。
そういうことならば、実力派の欧州プレミアムたちとじっくり比較させてもらおう。今回揃えたのはいずれもFRプラットフォームのミドルクラス・セダン。BMW5シリーズとジャガーXFはスポーティでハンドリング自慢、メルセデス・ベンツEクラスも以前に比べるとスポーティではあるものの、この中では快適志向な方と見ていいだろう。

メルセデスのイメージ通り安心感の高い走りと快適性
Eクラスの試乗車はE200 4MATIC アバンギャルド。エンジンはガソリンの2.0ℓターボでEクラスの中では最もベーシックとなる。最近のガソリン・ターボは低回転から大きなトルクを発生するのが強みではあるが、少し前までメルセデスのそれはスペックの割には何やら線が細いように感じられていた。だが、今では走り出しからモリモリと力が漲ってきて実に頼もしい。
しかも、アクセルを深く踏みこんでいけば軽快に吹き上がりスポーティにさえ感じられる。E200という車名からはベーシックで、速さにはあまり期待が持てなそうなイメージがあるが、そのイメージを大きく超える。軽量に仕上がったボディや多段な9速ATの恩恵もあるのだろう。静粛性の高さにも目を見張る。街中でも高速道路でも、大人しく走っている限りはエンジンの存在を感じさせないぐらい。メルセデス・ベンツのイメージに相応しい、黒子に徹した性格だ。積極的に回した時も、ほど良くスポーティなサウンドは聞こえてくるが透過音は抑えられていて室内を快適に保ってくれる。
現行モデルが日本に導入された直後に試乗した時は、案外と硬い乗り心地に驚いたものだが、今回はまったく違った。導入当初のベーシックグレードはE200アバンギャルドスポーツで19インチのランフラットタイヤを履いていたが、今回のモデルは1インチのスタンダードタイヤ。路面の凹凸を綺麗に吸収して見事な乗り心地を見せる。
高速域でも快適。大きな段差などがあってもストンと何食わぬ顔でいなしてみせつつ、その後のダンピングも適切で上下動を後に残さない。横風など外乱にも強く、ステアリングに手を添えていれさえすれば、ビシッと矢のように直進していく乗用車のお手本のような走りをみせる。初期に乗ったモデルは、ややスポーティに振り過ぎではないかと思えたが、今回のモデルは多くの人がメルセデスに期待するであろう、快適にして頼もしい特性となっていた。これをベーシックグレードで実現しているところも素晴らしい。

エンジンと走りがともにちょうどいいスポーティさ
5シリーズの試乗車は523d Mスポーツ。19インチのランフラットタイヤとMスポーツ・サスペンションを装着していた。
そのため乗り心地ははっきりと硬めだった。街中を低速で走っていると、路面の細かな凹凸を正直に拾いゴツゴツとした感触を伝えてくる。ただし、速度が上がってくるとだんだんと気にならなくなっていく。一般道でも60㎞/h程度になれば、大きな凹凸など極端な場面以外では不快感はなく、サスペンションは引き締まっていながらも動きの質が高くてスムーズに感じられる。高速域になれば、ダンピングの効いた良い乗り味になる。目地段差などでも突き上げ感はそれほどなく、その後の収束が素早いのでボディがフラットに保たれて却って快適なぐらいだ。
ハイライトとなるのはハンドリングだ。ステアリングの切り始めから極めて正確な反応をみせ、切り込んでいけば切り込んだだけ素直にノーズがインを向いていく。スポーティを演出し過ぎて過敏になることもなく、ひたすらに一体感のある走りが堪能できる。それでいて高速道路を突っ走っていく時は落ち着いている。ステアリングの中立がわかりやすく、適度な遊びと微舵の反応の良さなど理想的なフィーリングで、どこまで走っていっても疲れなさそうな特性なのだ。
エンジンはディーゼルとしてはかなり静かなものの、ガソリンに比べればそれなりに音・振動はある。特に、低回転域である程度の負荷を与えた時に出やすくなるが、古いディーゼルのようにカラカラと安っぽいフィーリングはなく、その太いトルクなりの力強さが音・振動となって伝わってくる感覚だ。また、さすがBMWと思わせるのが、レスポンスの良さとトルク&パワーのバランスだ。低回転域から力強いが、中・高回転域も決して不得意ではなく、ガソリンに近い感覚で勢いよく回っていく。常用域の魅力が大きいディーゼルでも、BMWの場合、それなりにスポーティなのだ。
ちなみに、別の機会に試乗した540i Luxuryはスタンダードサスペンションに19インチのランフラットタイヤの組み合わせだったが、乗り心地はかなり良かった。BMWはランフラットタイヤの履きこなしに関しては定評があるので、乗り心地の違いはおもにサスペンションなのだろう。
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