憧れを現実にした1000馬力
大阪湾岸育ちの最速ストリート仕様!
大ぶりなリップスポイラーやカナードが目を引くものの、ぱっと見はストリート仕様のチューンドカーにも見えるBCNR33。しかし、このマシンはチューンドGT-Rが数多く集うオートセレクトの中でも、ユーザーたちから一目置かれる存在だ。そのボンネット内には、1050ps・90kgmを誇る3.0L仕様のRB26DETTにGT3037Sツインターボを組み合わせたモンスターユニットが収められている。
もちろん、このBCNR33が周囲から高く評価されている理由は、単純にパワーがあるからではない。1000psオーバーのポテンシャルを持つマシンを躊躇なく乗りこなし、その性能を余すことなく引き出しているオーナーの踏みっぷりこそ、多くのユーザーから一目置かれる所以なのである。

長年オーナーと付き合いのあるオートセレクトの澤誠二郎さんは、当時をこう振り返る。
「ストリート全盛期の頃は、『○○から△△まで何分やった』なんて話を聞くと、その日のうちにチャレンジしに行くような気合いの入りようでした。最近は少し落ち着いた印象ですけど、根っからのスピードジャンキーですね(笑)」。

さて、ここで気になるのが、この1000psオーバー仕様へ至るまでのチューニングの過程だろう。一般的にはブーストアップからタービン交換、そして排気量アップ……といったステップを踏みながら徐々にレベルアップしていくものだ。
しかし、このBCNR33のオーナーが初めて手にしたGT-Rは、いきなり3.0L+GT3037Sツイン仕様のモンスターチューンドだった。ノーマルRB26はもちろん、多くのGT-Rオーナーが経験する500psクラスの仕様すら乗ったことがなかったという。

「子供の頃から最高速チャレンジのビデオを見て育ち、とにかくスピードに魅せられていました。免許取得後はチューニングされたJZA70などを乗り継いでいましたが、転機になったのはオートセレクトとの出会いですね。調子が今ひとつだったJZX100を英一郎さんに900ps仕様へ仕上げてもらったんですが、残念ながらクラッシュで廃車になってしまったんです。その頃からオートセレクトにはGT-Rがたくさん集まっていて、一度はGT-Rに乗ってみようと思い、このBCNR33へ乗り換えました」。
900ps級のマシンを乗りこなしていただけに、ハイチューンドGT-Rへのハードルは決して高くなかった。しかし、チューニング理論を学ぶことよりも走り込みを最優先するスタンスだったオーナーが手に入れた車両は、もともとゼロヨン仕様。スピードこそ圧倒的だったものの、コーナーでは思うようにアクセルを踏めない“直線番長”状態を約2年間味わった後、オートセレクトで全面的なアップデートを行うことになる。

「素人の中途半端な知識で方向性を決めるよりも、GT-Rを知り尽くしたチューナーのノウハウを注ぎ込んでもらうのがベストだと思ったんです。だから、エンジンの組み直しからセッティング、足回りまで、すべてお任せでお願いしました。それまでのゼロヨン仕様でもGT-Rならではの高いトラクション性能に助けられていましたが、アップデート後は1000psあっても安心してアクセルを踏んでいけるクルマになりました。それに、クルマ作りだけではなく、英一郎さんと一緒に走る中で『GT-Rはこう走らせるんだよ』と実際に見せてもらえたことも大きかったですね」。

OS技研のRB30キットを組み込んだエンジンにGT3037Sツインを組み合わせた1000ps仕様は、2004年から基本コンセプトを変えていない。その一方で、Vカム化やLINK制御の導入など、戦闘力を高めるアップデートを重ねてきた。デモカーから譲り受けたヘッドカバーは、オーナーお気に入りのアイテムだ。


メインパイプ90φのワンオフチタンマフラーは、思わぬ段差に遭遇することも多いストリートユースを考慮し、最低地上高と静粛性を確保したレイアウトを採用。リヤディフューザーにはBNR34 Vスペック純正品を加工装着している。

トランク内にはコレクタータンクなどを整然とレイアウト。こうした装備はサーキット仕様のイメージが強いが、本気で踏み続けるハイチューンドGT-Rでは、全開時間の長さや大きな横Gを考えれば、ストリート仕様でも欠かせない装備となる。
ゼロヨン仕様からパッケージングを見直した際には、湾岸サスキットやブレーキシステムを投入。高速域でも地を這うような安定したハンドリングと、高速域からでも不安のない制動力を手に入れ、1000psを安心して使い切れる足回りへと進化させた。

ホイールはボルクレーシングTE37初期モデルに、ヴェンタスTD(295/30R18)を組み合わせる。2024年のエンジンオーバーホールとLINKによるリセッティング時には最新ホイールへの変更も検討したが、ブレンボ製8ポットキャリパーと390mmローターを収められるインナーリム形状のモデルが見当たらず、断念したという。


快適装備も残されており、1000psオーバーのハイチューンドとは思えないインテリアも魅力のひとつ。他のBCNR33を試乗した際、ロールケージ追加によるボディ剛性向上は体感できたものの、敬愛するオートセレクト代表・英一郎さんのスタイルにならい、あえてロールケージレスを貫いている。

高速域での旋回性能を高めるフロントリップとカナードは20年以上愛用しているアイテム。一度ダウンフォースに負けて脱落した経験があるため、見た目が過激になりすぎないよう配慮しながら取り付け強度を高めている。

純正ステーを利用したWウイングは、オートセレクトのデモカーから譲り受けた当時もの。さらに、ECR33用クリアセンターガーニッシュを流用してテールランプを一直線につなぐ手法も、澤英一郎さんのカスタムを参考にしたものだ。

チューンドR35 GT-Rのほか、フェラーリやBMW M5など数々のハイパフォーマンスカーを所有・体験してきたオーナー。しかし、「走る楽しさ」という点では、このBCNR33を超える存在はいまだにないという。

時代は変わった。それでも、いつか成長した子供たちへ、自身が魅了されたチューンドGT-Rの世界を伝えたい―。そんな思いを胸に、この1000psストリート仕様は今日も最高のコンディションを維持し続けている。
●取材協力:オートセレクト 大阪府堺市美原区丹上221-5 TEL:072-363-0383
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