弁護士・公認会計士・不動産鑑定士の3士業は「日本三大国家資格」と称され、国内では法律・監査や税務・不動産の各専門分野で強固な影響力を保持。各資格試験は超難関の狭き門で、資格取得者の多くは重責のある社会的業務を担う。
これ以外にも国内には様々な国家資格が存在する。たとえば、

バイクに関わる国家資格「二輪自動車整備士資格(取得年齢に制限なし)」。二輪自動車整備士はバイクや原付(原動機付き自転車)の整備業務全般を担う技術者。「国が認めた二輪車整備のプロ」として、バイクの整備・修理・カスタムなど、“営利を目的とした業務”に携わることができる。
二輪自動車整備士資格には1級、2級、3級があるが、近年は2級・3級の整備士の整備技術向上を重要視していたことなどから、1級の試験は行われていない。
バイクショップ等の場合、基本的に四輪の自動車整備士ではなく、二輪自動車整備士を優遇。バイク業界では二輪自動車整備士こそ「オートバイ整備のエキスパート」であり、四輪の自動車整備士と二輪自動車整備士は“似て非なる資格”として認識される。
ここで疑問。国内におけるバイクの整備・修理・カスタムは、二輪自動車整備士のみに許されるのか? 二輪自動車整備士資格を持たない一般ユーザーが、整備・修理・カスタムを実施しても大丈夫なのか? この点をリサーチ&考察してみた。
法律の観点から「無資格者がバイクを整備・修理・カスタムすること」が違法になる例

「二輪自動車整備士以外が、バイクの整備・修理・カスタムを行うことは違法である」と考える人もいるだろう。しかし現況の日本では法律上、100%正しいとはいえない。資格がなくても違法にはならない場合があるからだ。
まずは法律上、どんな場合に違法となるかを挙げてみよう。
◎道路運送車両法第78条
「 自動車特定整備事業を経営しようとする者は、自動車特定整備事業の種類及び特定整備を行う事業場ごとに、地方運輸局長の認証を受けなければならない」
上記、道路運送車両法第78条でもっとも重要なキーワードは「特定整備」。
バイクでの「特定整備」とは?
バイクにおける「特定整備(※注1)」とは、
1:エンジンの脱着
2:トランスミッションの脱着
3:フロントフォークの脱着
4:ブレーキキャリパー、ディスクブレーキ、配管類の脱着
5:クルーズコントロールシステム部品の脱着(一部の最新モデルのみ)
※注1:2020年4月の法改正まで「分解整備」と呼称。近年は四輪の自動ブレーキ等、カメラやレーダーを採用した電子制御システムが加わってブレーキが進化した結果、名称と一部内容を加筆修正。管轄は国土交通省。
もしも営利を目的としたバイクショップ等の場合、
①二輪自動車整備士資格を持っていない者、または
②整備主任者(一般的に2級二輪自動車整備士が担当)の管理下にない者
が、バイクユーザーから「特定整備」を請け負い、作業を行ってお金を貰うと違法になる。ただし“無償”だと違法にはならない。
| 事例 | 結果 |
| Aさんが所有するバイクの「特定整備」を、①や②が10万円(有料)で作業した | × 違法 |
| Aさんが所有するバイクの「特定整備」を、①や②が無料で作業した | 〇 合法 |
国が定めた「営利目的で“特定整備”を行う」ための2つの条件
またバイクショップ等が「特定整備」を営利目的で行う場合、
その1:地方運輸局長の正式な認証を受けた「認証工場」であること
その2:整備主任者(一般的に2級二輪自動車整備士が担当)の管理下にあること
以上の2点をクリアしなければ、国内では正規の事業者として認められない。
国から正規の事業者ではない=違法営業(法律違反)と見なされた場合。検察や警察による検挙や処罰の対象となり、経営者に対して50万円以下の罰金などが科される。
なおエンジンオイルやフィルター交換、タイヤ交換(ホイールをフロントフォークから外す等の分解作業を除く)、タイヤの空気圧調整、ドライブチェーン調整、バッテリー・マフラー・ETCなど用品の取り付けや交換などは、たとえ事業者であっても「特定整備」に当たらず、その1・その2をクリアしなくでも違法営業にならない。

法律の観点から「無資格者がバイクを“特定整備”しても違法にならない」という例

国内では二輪自動車整備士資格がなく、バイクの「特定整備」を行っても違法にならないことがある。それは具体的にどんな場合なのか?
写真上はエンジン(ノーマルの排気量49ccから、社外パーツで110ccにボア&ストロークアップ)、フロントブレーキ(ドラム式からNSR50用ディスクに変更)、フロントフォーク(社外ステム+NSR50用正立フォークに変更)、リアの足周り(ロングスイングアーム+クアンタム製リアショックに変更)、前後ホイール径の変更(8インチから社外10インチアルミに変更)にフルカスタム&フルチューンした筆者のゴリラ。
純正パーツはメインフレーム、エンジンのクランクケース、ガソリンタンク、シート、ヘッドライト、前後フェンダー(リアはチョップ加工)、リアキャリアくらい。他は社外&他車用パーツで徹底的にカスタム&チューニングした作業内容は、完全に「特定整備」の領域にある。

作業を担当したのは筆者のみ。筆者は二輪自動車整備士の資格なし。ゴリラは軽量コンパクトで基本構造も簡単。市販の工具や機器を一通り揃え、すべて屋外で作業した。
これはプラモデル感覚でカスタムやチューニングが楽しめる。加えて車検のないミニバイクならではの大きなメリットであり醍醐味といえよう(JMCA認定や政府認証以外のレース用マフラー装着などは違法改造に該当するので絶対にNG)。ただし…….

例えば中型車以上を「特定整備」する場合。多くは車体が大柄でヘビー。1つひとつのパーツも大きく、おまけに負荷のかかる各パーツは、素手では取り外せないほどの高トルクで締め付けられている。現実的な問題として…….
コンプレッサーを使うエアツール、また車体やエンジンを持ち上げる油圧機器、切削機器、ガスバーナー等々のない作業環境において、上記ゴリラのレベルまでがせいぜい。中型車以上をカスタムするのは、筆者的には99%不可能だと推測する。
「持ち上げ作業」のみを考えても、たとえベンチプレスの持ち上げ800kg、背筋力400kg、握力500kgを誇る人間離れしたボスゴリラ級のマッチョな漢でも、一人作業は結構手こずるのではないかと思う。
筆者のゴリラは管轄の市役所で、原付一種(排気量50cc以下)から原付二種(排気量90cc超・125cc以下)への登録変更手続きを行い、正規にナンバープレート(ピンク色)を取得。つまり法律上、国から「この車両で公道を走ってもよし」と認められている。
これまで警察官から検問等で「問題ありません。お気を付けて」「おお! 気合いの入ったゴリラですね!!(バイクに詳しい警察官だった)」と言われたことはあるが、「違法改造だ」「特定整備してるな」と尋問を受けたり検挙されたことは一度もない。
趣味で実施。営利目的でなければ「特定整備」しても違法ではない
すべて二輪自動車整備士資格のない、一般ユーザーの筆者が「特定整備」したわけだが、結論からいえば筆者が違法に問われることはない。
なぜなら筆者は二輪自動車整備士資格を持っていないが、自分のお金で購入したバイクを用い、趣味の一環として特定整備の領域である主要&重要部品のエンジン、ブレーキ、フロントフォーク等々の取り外し・組み付けを行ったから。
仮に筆者が知人に頼まれ、無償で知人のバイクの主要&重要部品のエンジン、ブレーキ、フロントフォーク等々の取り外し・組み付けなどの「特定整備」を行っても違法ではない(※注2)。
その理由は、そこに金銭の受け渡しがないから。ただし筆者が友人から工賃を受け取った時点で、事態は180度一転して違法となる。
※注2:もしも不具合が起こった時、責任問題に発展する可能性があるから、仮に頼まれても筆者は即断る。
これは調理師免許(食品衛生責任者資格)のない料理愛好家が、自宅に大勢の知人を招いて料理をふるまい、各人から「お食事代」を徴収した瞬間に違法となるパターンに似ている。
| ケース例 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 自分のバイクを自分で整備・修理・カスタム | 無資格でもOK |
| 他人のバイク整備やカスタムを無償で手伝う | 無資格でもOK |
| 他人のバイクのオイル交換、タイヤの空気圧調整、ドライブチェーン調整、バッテリー・マフラー・ETCなどの取り付けや交換などを有償で実施 | 無資格でもOK |
| 他人のバイクのブレーキやエンジン等の主要部分を大幅にカスタマイズ(特定整備) | 金銭を受け取るならば資格が必要。有資格ならば合法、無資格ならば違法 ※一般公道仕様車で保安基準・構造変更等に触れる場合、車検が通るように仕上げる必要あり |
| 自分のバイクのブレーキやエンジン等の主要部分を自分で大幅にカスタマイズ(特定整備) | 無資格でもOK ※一般公道仕様車で保安基準・構造変更等に触れる場合、車検が通るように仕上げる必要あり |
| 違法改造になるカスタム | 有資格・無資格を問わずに違法 |
【ココが大事!】中型車や大型車の高度な整備やカスタムは、一般ユーザーには不向きかも

上記は基本的に法律をベースにしたお話。資格はもちろん、知識・技量・専用機器・各種工具を持たない一般ユーザーが、果たしてバイクの整備・修理・カスタムがきちんとできるのか?
答えはNoだろう。
知識や技量のないビギナーが、とりあえずホームセンターで一般工具を揃え、ネット動画等のみを頼りにバイクを分解するのは、極めて危険な行為といえる。走行における安全性の確保に疑問符が残り、「分解したけれど元に戻せない」という事態を招く可能性も大きい。
もしもバイク構造の勉強をして知識・技量・経験を蓄え、工具もある程度揃えた一般ユーザーが、プライベートガレージや屋外で作業する場合(現況の筆者を想定)。
筆者の経験からいえば、軽量コンパクトで構造も簡単なミニバイクならば、個人レベルでも作業OK。しかしヘビーでビッグサイズの中型車や大型車の、しかも高度な整備・修理・カスタムとなると、話は大きく違ってくる。
前述の通り現実的な問題として、車体やエンジンを持ち上げる油圧機器のない作業環境において、中型車以上をフルカスタムするのは、筆者的には99%不可能だと推測。力自慢の幕内力士やヘビー級プロレスラーでも、たった一人での作業は困難だと思う。
車検ありの車両は「保安基準に適合するか」「構造変更・記載変更が必要か」も重要
バイクのカスタム箇所によっては、車検の通過に必要な「保安基準に適合するか」「構造変更・記載変更が必要か」が変わってくる。また車検を通すための構造変更や記載変更は、慣れない人には時間と手間を要する作業となるのがネック。
ライダーの命に関わる主要&重要部品のエンジン、ブレーキ、フロントフォーク等々の取り外し・組み付けなど、高度な技量や知識を要する整備やカスタムは、特にハイパワーでスピードが出るバイクほど、不具合のリスクが増す。これらの作業は、正規の認証工場(下記の看板が目印)を備えた信頼できるプロショップに依頼するのが安全・安心で、ベストな選択だろう。
ヘビーでビッグサイズ、しかも構造の複雑な多気筒の中型車や大型車の場合、高額で大型の電動油圧ジャッキなどの専用機器、コンプレッサーで動作する高価な特殊ツール、各種専用工具が必須。
趣味ながら高額なツールや工具を自腹で揃え、プロ級の知識や経験を得ようとする(本業がある場合。その本気度と資金があれば二輪自動車整備士資格を取得し、副業でバイクショップを起業したほうがベター)よりも、プロショップに依頼するほうが、遥かに経済的でコスト安。しかも安全と安心を担保できることをお忘れなく。

【参考サイト】
京都府自動車整備振興会
自動車の特定整備 – 京都府自動車整備振興会
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