遠ざかる救急車の音が変化する「ドップラー効果」のしくみとは?

街中で救急車が走り去る際、おなじみの「ピーポー」というサイレンの音が、走行中に突然「ウー」という重低音や異なる響きへと変化する瞬間を耳にしたことのある人は多いだろう。
そもそもなぜ、救急車のサイレンの音が変わって聞こえるのだろうか。

この変化は、音を出しながら移動する物体とそれを聞く人の位置関係によって生じる、ドップラー効果と呼ばれる現象によるものだ。
救急車が自分に向かって近づいてくるときは、サイレンから発せられる音の波が圧縮されるため、私たちの耳には通常よりも高い音として聞こえるようになる。
しかし、救急車が自分の前を通り過ぎて遠ざかっていくと、今度は音の波が後ろへと引き延ばされるため、今度は通常よりも低い音へと変化して聞こえるのである。
これにより、救急車が目の前を通過した瞬間にサイレンの音程が急激に下がったように感じられ、まるで別の音が鳴っているかのような印象を受けるというわけだ。

また、最近では夜間の住宅街や病院の周辺を走行する際に、近隣住民の睡眠や療養を妨げないよう、高音が周囲に響きにくい「住宅モード」のサイレンに切り替えることもあるという。
住宅モード、あるいは弱音モードと呼ばれるサイレンは、法的に定められた緊急車両としての最低限の音量を維持しつつも、建物の壁や窓を透過して室内に響き渡りやすい特定の周波数を抑える工夫がほどこされている。

なお、どれだけ周囲に配慮した静かな音に変わっているからといって、救急車が運んでいる患者の緊急度が下がっているわけではないことを忘れてはならない。
もしもサイレンの警告を無視して救急車の通行を妨害したり、交差点での進路を譲らなかったりした場合は、道路交通法第40条が定める緊急車両の優先義務に違反することになる。
警察官に取り締まりを受けて緊急車妨害等違反に該当すると判断されると、違反点数1点にくわえて、普通車の場合は6000円の反則金が科せられる。

このように、救急車はサイレンの音を状況に応じて使い分けることで、搬送の緊急性と周囲への安全・環境配慮を両立させている。
無用な搬送の遅れや二次災害を防ぐためにも、サイレンがどのような音であっても常に最優先で道をゆずるという判断が必須といえるだろう。
