1964年式トヨペット・コロナ・デラックス。

2026年6月7日に埼玉県秩父市で開催された「花見の里で感謝の集いやります!」という商業施設のイベントで、地元の有志が掛け合って行われるようになった旧車の展示。イベント自体は土曜と日曜日の2日間開催されるのだが、旧車の展示は日曜のみ。しかも天気予報が午後から雨と伝えられ開催を心配したが、会場には朝早くから旧車たちが並んでいた。

控えめなサイズのテールフィンが特徴的なスタイル。

このイベント自体は施設内にある蕎麦の花が咲く時期を選んで開催されたもの。旧車の展示はあくまでサブ的なもので、同時に消防車やパトカーも展示して家族連れなどに喜んでもらおうとの意図だ。展示は日本旧軽車会のメンバーが中心となって行われ、展示台数は30〜40台と小規模なもの。だが、続けてお伝えしているように展示された旧車たちは日本旧軽車会が開催する他のイベントで見かけることの少ない車種が多く、見応えがあった。

1963年のマイナーチェンジでグリルとウインカーのデザインが変更された。

今回は展示車両の中でひときわ珍しく感じられたトヨペット・コロナを紹介したい。何しろ内外装の状態がよく珍しさよりキレイさからオーナーへ声をかけさせていただいた。コロナのオーナーは60歳になる近藤豊さん。以前から古い国産車が好きで、中でも「ベンコラが欲しかった」から選んだそうだ。「ベンコラ」とはベンチシートとコラムシフトを装備する車種のことを指し、この条件で選ぶと国産車では数が限られてしまう。

当初は1リッターエンジンだったが61年に1.5リッターへ排気量を拡大した。

今ではコロナの売り物自体を見つけるのが困難で、2代目のRT20となると絶望的なほど数が少ない。だが近藤さんが手に入れたのは24年も前の2002年のこと。古い国産車を専門に扱う中古車店から購入したそうで、外装は前オーナーによりレストアされていたから非常にキレイな外観を保っていた。

デラックスらしく豪華な雰囲気のインテリア。

24年前に購入したとはいえ、その当時すでに38年落ちと大いに古いクルマ。当然トラブルや故障を予見していたものの、これが意外と壊れない。「頑丈なところ、走りも良く乗り心地も良い。それに燃費もまぁ良い」ということで想像以上に丈夫なクルマなのだ。もちろん丈夫だからといって何事もなかったわけではない。エンジンのタイミングギアが年月とともに摩耗してしまった。バルブタイミングに直結する部分だけに修理しないと乗れなくなってしまう。そこでエンジンをオーバーホールすることにされた。

メーター周囲にメモを貼り付けて維持管理に配慮している。

外装は前オーナーが全塗装を含むレストアを施されていたので良かったが、それに対して内装が少々見劣りする。そこでシートやドアライナーといった部分を張り直すことにされた。やはりそれなりに手がかかるのが旧車というもの。だが、手入れの甲斐あってこのコロナはどこから見ても抜群のコンディションにある。

当然だがエアコンは装備していないので扇風機で暑さを凌ぐ。

もちろん定期的なメンテナンスは欠かせない。専門の工場へお願いしているそうだが、最近になってブレーキとクラッチのマスターシリンダーが抜けてきた。60年代の車種なら当然新品パーツなど望みようもないため、通常ならオーバーホールキットでゴム部品を中心に修理するもの。ところがこの時代のトヨタ車用の部品を熱心に生産している業者がある。なんとマスターシリンダーごと新品部品に交換して対処されたのだ。

フロントはベンチシートだが乗車定員は5名。

こうした部品は海外で生産することで価格を抑えることができる。品質には気を遣うことだろうが、それでも新品が手に入る安心感は何者にも代え難い。そのため安心して都内から秩父まで自走して参加されているのだ。一見近そうな秩父だが、都内からだと高速道路を使ったとしても2時間以上の道のり。どこかに不安のある旧車だと自走することを躊躇うところだが、「頑丈なところ」という言葉通り不安なく参加できるそうだ。

クラウン譲りのR型4気筒エンジンは62psを発生した。

62年も前のクルマを24年も維持し続けられたのは、元々の状態が良かったことも大きいだろう。いくらレストアをしても元の状態がよくないクルマだと、このコロナのように長年乗り続けることは難しいかもしれない。どんな中古車でもそうだが、やはり買うときは多少価格が高くても程度の良いものを選ぶのが得策なのだろう。

熱心な業者により今でもマスターシリンダーは新品が手に入る!