クルマの燃料残量警告灯、いわゆる“給油ランプ”が点灯すると、気になるのが「あと何km走れるのか」という問題だ。

昔から「給油ランプが点いても50km程度は走れる」といわれてきた。しかし、ハイブリッド車の普及によって燃費性能が大きく向上した現在でも、この常識は通用するのだろうか。

今回はトヨタのヤリス、プリウス、シエンタ、ホンダのフリード、日産のノートの人気5車種を比較。各メーカーが公表する燃料残量警告灯の点灯基準とWLTCモード燃費を掛け合わせ、計算上の距離を検証してみた。その結果、最も長いモデルでは約194kmという途方もない(?)数字が浮かび上がってきた。
■給油ランプ点灯時、燃料はどのくらい残っている?
そもそも燃料残量警告灯は、燃料タンクが空になった瞬間に点灯するものではない。メーカーが車種ごとに設定した燃料残量を下回ると点灯し、ドライバーに早めの給油を促す仕組みだ。
例えば、現行プリウスの取扱説明書では、燃料残量が約6.4L以下になると警告灯が点灯すると説明されている。ヤリスでは約5.4L以下、シエンタでは約5.2L以下が点灯の目安となる。一方、ホンダのフリードはFF車で約6.3L以下、日産ノートは約5.5L以下に設定されている。
つまり、今回比較する5車種では、警告灯が点灯する基準となる燃料残量が約5〜6Lに設定されていることになる。ただし、これらは警告灯が点灯する基準値であり、点灯した瞬間に必ずその量の燃料が残っていることを保証するものではない。
■最長はヤリスの約194km! プリウスも約182kmに
今回の比較で最も長い計算結果となったのは、トヨタのヤリスだ。ハイブリッド“X・2WD”のWLTCモード燃費は36.0km/L。燃料残量警告灯の点灯基準である約5.4Lを掛け合わせると194.4kmとなり、計算上は約194kmという結果になる。
続くプリウスの2.0Lハイブリッド“Z・2WD”は、WLTCモード燃費28.4km/L。警告灯の点灯基準である約6.4Lを掛け合わせると181.76kmとなり、約182kmという結果だ。
ミニバンでは、ホンダのフリード“e:HEV AIR・FF(6人乗り)”が約161kmとなった。同モデルのWLTCモード燃費は25.6km/Lで、警告灯の点灯基準は約6.3L以下。両者を掛け合わせると161.28kmとなる。
日産ノートの“e-POWER X・2WD”は、WLTCモード燃費28.4km/L。警告灯の点灯基準である約5.5Lから、計算結果は約156kmとなった。
そして、トヨタのシエンタ“ハイブリッド X・2WD”は、WLTCモード燃費28.0km/L、警告灯の点灯基準が約5.2L以下で、計算結果は約146kmだ。
今回の5車種では、いずれも計算上の距離が100kmを超え、昔からいわれてきた“50km”を大幅に上回る結果となった。
■なぜ50kmを大幅に超える? 低燃費化が変えた常識
今回の比較で注目したいのは、5車種すべてが「50km説」を大きく上回ったことだ。
その理由のひとつが、ハイブリッド車の燃費性能の向上である。例えば、燃費が10km/Lのクルマで燃料が5L残っていれば、計算上の距離は50kmとなる。しかし、燃費が30km/Lなら、同じ5Lでも計算上は150kmに達する。
つまり、燃料残量が同じでも、クルマの燃費性能によって計算結果は大きく変わるというわけだ。特に今回比較したヤリスやプリウスなどは、低燃費性能に優れたハイブリッド車であり、その特徴が数字にも表れている。
もっとも、計算上の距離が長いからといって、警告灯点灯後に安心して走り続けられるというわけではない。
■計算上は194kmでも、実際に走れるとは限らない
今回の比較で最も注意したいのは、計算結果と実際の航続可能距離は異なるという点だ。
WLTCモード燃費は、決められた試験条件に基づいて測定された数値である。他方、実際の燃費は、道路状況や走行速度、外気温、エアコンの使用状況、乗車人数などによって変化する。
例えば、高速道路での高速走行や渋滞、寒冷時の暖房使用などによって、カタログ燃費を下回る場合がある。また、燃料タンク内のガソリンは、常に一定の状態に保たれているわけではない。坂道やカーブ、急加減速などで燃料が偏ると、警告灯が点灯するタイミングが変わることもある。
さらに、タンク内に燃料が残っていても、そのすべてを走行に使用できるとは限らない。
日産もノートの取扱説明書で、実際に走行に使用できる燃料容量は警告灯点灯時の残量目安より若干少なくなると説明している。つまり、今回の約194kmという数字は、メーカー公表値を使った理論上の参考値であり、実際にその距離を走れることを示すものでも保証するものではない。
■航続可能距離“0km”でも走れる? 混同したくない2つの数字
もうひとつ注意したいのが、メーターに表示される“航続可能距離”との違いだ。
多くのクルマには、燃料残量や走行状況などをもとに、あと何km走れるかを推定して表示する機能が備わっている。この数値は車両側が算出するものであり、今回のように警告灯点灯基準とWLTCモード燃費を掛け合わせた数字とは異なる。そのため、「航続可能距離が0kmになっても、さらに何km走れる」と一律に判断することはできない。
特に高速道路では、次のサービスエリアまで数十km離れていることもある。渋滞や悪天候などによって予想以上に燃料を消費する可能性もあるため、警告灯が点灯してから給油場所を探し始めるのは避けたい。
今回の比較では、5車種すべてが計算上100kmを超え、最も長いヤリスでは約194kmという結果になった。「給油ランプが点いても50km走れる」という昔ながらの常識は、現在の低燃費車では単純に当てはめられないことがわかった。しかし、これは給油を先延ばしにしてよいという意味ではない。
燃料残量警告灯の役割は、あくまで早めの給油を促すことにある。だが、点灯したら残りの距離を試すのではなく、できるだけ早く給油することが重要なのは間違いのない事実だ。














