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全長6m、全幅2m、排気量6.75L! 威風堂々の世界最高峰サルーンに都内で試乗する! 日本で一番乗り! 新型ロールスロイス・ファントムEWB試乗記(ただしチョイ乗り)

  • 2018/02/19
  • MotorFan編集部 小泉 建治
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誰もが認める世界の最高級サルーン、ロールスロイス・ファントムの新型モデルが
日本上陸を果たした。先日のJAIA試乗会ではリヤシートへの同乗走行が行われていたが、
今回はなんと自らステアリングを握るという幸運に恵まれた。

TEXT&PHOTO:小泉建治(KOIZUMI Kenji)

圧倒的な存在感

 クルマにしてクルマに非ず───ロールスロイス・ファントムと相対したときの第一印象である。仕事がら様々なクルマを運転する機会があるし、個人的にはかつてキャデラックを所有していたこともあって、大きなクルマには慣れている……はずだが、目の前にあるこれは、もはや「大きなクルマ」とかそういう類ではなくて、まるで別の乗り物だ。

 とにかくデカイのは言うまでもないが、絞り込みという概念を一切感じさせない「長方体」そのもののフロントセクションと、その先端にそびえ立つパルテノングリル、そして広大なキャビンスペースなどが、その巨大さをさらに強調させている。全長、全幅、全高といったモノサシ的な大きさではなく、なんというか、自分のいる空間一帯の中に占めるファントムの体積の比率が高い。圧迫感とでも言おうか?

 本来であればリヤシートにドカッと腰を据えるのがこのクルマの正しい使い方なのだろうけれど、残念ながら私ひとりしかいないので、ドライバーシートに乗り込む。

 今回の私の立場を白状すると、日本初の国内試乗を許された気鋭のジャーナリストでもなんでもなくて、GENROQ誌にレポートを書いていただく清水和夫さんにファントムを届ける運び屋に過ぎないのだった。だから本気の試乗記は2月26日発売のGENROQ4月号を乞うご期待であります。
 

走り出せば意外と取り回し良好……というわけにはいかない!

 そんなわけでドライバーズシートに座ってみると、意外や大きさを感じない……なんてことはなくて、ノーズ先端に鎮座するスピリット・オブ・エクスタシーの遠いこと遠いこと!

 走り出してステアリングを切ると、そのすごく遠いところにあるエクスタシーさんがぐぉぉぉ〜と大回りして、まるで巨大客船の先端にある棒みたいなやつ(バウスプリットと呼ぶらしいです)を見ているかのよう。

 言い換えれば、運転席からノーズの先端までしっかり見えるということだし、絞り込みが少ないぶん、ノーズの左右末端の位置も把握しやすい。だが把握できたところで、この絶対的なデカさの前には焼け石に水という気がしないでもない。

 おまけに今回お借りしたのはEWD、つまりロングホイールベース仕様だから、リヤホイールもすごく後ろのほうにある。だから右左折時や車庫入れ時には、内輪差にもかなり気を遣う必要がある。

横綱に相応しい立ち振る舞い

(PHOTO:Rolls-Royce)
 好ましいのは、アクセルを踏み込んだときのスロットル制御のマナーだ。近年はヘビー級ハイエンドサルーンといえどもアジリティ(俊敏性)が重要ワードのひとつらしく、アクセルを開けたその刹那、まるでハイパースペースに突入する宇宙船の如き怒濤の加速を見せるモデルが多いが、ファントムはあくまで穏やかに、900Nmもの大トルクの存在をひたすら隠すようにスルスルと発進してくれる。まぁ、3t近いボディがスルスルとストレスなく加速することじたいフツーじゃないのだが。

 ハンドリングも同様で、ステアリングそのものは極めて軽いし、ロール量もほどほどで実際には軽快に走るのだが、ステアリングレシオが比較的スローなこともあって、速く走るにはそれなりにドライバーが意志を持つ必要がある。「気がついたらビックリするようなペースで走っていた」というようなことがないのだ。

 その結果、最高出力571ps、最大トルク900Nmという超絶パフォーマンスを持つにもかかわらずオラオラ運転にならない。撮影のために夕方の都内を徘徊したが、ちょっとでも道を渡りそうな仕草を見せた歩行者に対してはしっかり停止し、交差点や合流でも他車に先を譲ることが苦にならない。むしろ、それが快感ですらある。

 本当はどんなクルマを運転していてもそうあるべきなのだが、こうした超高級車に乗っていて、そういった模範的なドライビングが出来るというのは意義深い。社会的地位の高い人間には、それに相応しい振る舞いが求められる。

 大きさを感じさせない俊敏性の価値は、もちろんわかっている。そのためには高い技術力が求められることも然りだ。だが、速いものは速い、重いものは重いと、乗り手にしっかり感じさせることもまた、重要なことなのかもしれない。

ショーファードリブンとしての本分を全うしている

 清水さんとの待ち合わせに少し時間があったので、首都高速にも乗ってみた。ETCゲートをくぐってアクセルを踏みつけても、相変わらずススーッと音もなく穏やかに加速するのみ。リヤホイールがダダダダダッと暴れたり、大げさなピッチングなどは一切見せない。

 だが誤解なきようにつけ加えておくと、試しに一度だけアクセルを床まで踏んづけてみたときには、それこそあっという間に無法者に……なりかけたのですぐにアクセルを戻した。なにしろオプション込みで7000万円オーバーである。慎重に慎重に……。

 それはともかく、高速巡航で最も光るのは尋常ならざる静かさである。V12ユニットの静粛性に疑問の余地はない。しかしエンジンが静かになると今度はロードノイズや風切り音が逆に際立ってしまったりするものだが、まずロードノイズに関しては、フロアとバルクヘッドに二層式の合金製スキンを採用することで大幅に抑制させている。
 
 さらに驚くべきはタイヤである。内部に特殊な発泡体の層を形成させ、空洞部で発生する騒音をシャットアウトすることで、タイヤ全体から発生される騒音を9dbも減少させているというのだ。

 一方の風切り音については、そびえ立つグリルや絞り込みの少ないボディ形状を持つにも関わらず、こちらも不思議とそれほど耳に届いてこない。といっても今回はせいぜい70km/hほどしか出せていないわけだから、結論をここで出すのは控えておこう。

 いずれにせよ、新型ファントムには130kgもの遮音材が使われているそうで、とにかく余計な音が一切しないのである。

「ショーファードリブンとしての役目を持ちながら、その気になればスポーツカーの如く運転も楽しめる」のが当たり前になりつつある昨今のハイエンドサルーンのなかにあって、新型ファントムは依然としてその本分を全うし続けている。
 
 常に大きさや重さをドライバーに意識させるパッケージングやセッティングの妙は、実際のところリヤシートのパッセンジャーを不快な気分にさせないためのものではあるが、それが結果的に横綱らしい立ち振る舞いを生み出している。そして、そんな立ち振る舞いを演じ、横綱らしさを味わうのもまた、ひとつのファン・トゥ・ドライブだったりするのだ。

(PHOTO:Rolls-Royce)

●ロールスロイス・ファントム EWB(エクステンデッド・ホイールベース)
全長×全幅×全高:5990×2020×1645mm ホイールベース:3770mm 車両重量:2750kg エンジン:V型12気筒DOHC 排気量:6.75L 最高出力:571ps/5000rpm 最大トルク:900Nm/1700rpm トランスミッション:8速AT 駆動方式FR フロントサスペンション:ダブルウィッシュボーン リヤサスペンション:5リンク 0-100km/h加速:5.4秒 最高速度:250km/h(リミッター介入) 価格:6540万円

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