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マツダRX-8 マツダの3世代分の進化を感じつつもロータリー・スポーツの楽しさを満喫 ロータリーエンジンの可能性⑧

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マツダRX-8 スピリットR(2011年式) 車両価格○325万円(当時)

RX-8の生産が中止されたのが2012年だからもう8年が経ったことになる。ロータリーエンジン待望論やレンジエクステンダーの発電用ユニットとしての採用など、ロータリー不在の間も話題には事欠かない。2020年の今、ロータリーエンジン搭載のRX-8に乗ったらどんなインプレッションを受けるのか? 技術に詳しいモータータリングライター、世良耕太氏がいまあらためてRX-8に乗った。

TEXT & PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)

3世代前のマツダ車、RX-8に8年2カ月ぶりの再会

 マツダRX-8に乗った。最後の特別仕様車として2011年11月に発売された「SPIRIT R」だ。この特別仕様車は1000台の販売が予定されたが、予定以上の受注を受けたため、さらに1000台が追加生産され、12年6月に生産は中止された。SPIRIT Rはレカロ社製バケットシートやビルシュタイン製ダンパー、19インチ鍛造アルミ&タイヤや大径ブレーキ、本革巻きシフトノブ(赤ステッチ入り)などを装備している。

 エンジンは言わずもがなで、ロータリーエンジンを搭載(直列2ローター縦置き)している。RX-8はマツダ最後のロータリーエンジン搭載車で、03年4月に発売されたこのクルマには新世代のRENESIS(レネシス)エンジンが投入された(型式名は13B-MSP)。それ以前の世代との代表的な違いをひとつだけ紹介しておくと、従来はローターハウジングにあった排気ポートをサイドハウジングに移し、サイド排気/サイド吸気のレイアウトにしたことだ。これにより、(従来エンジン比での)高出力化と低燃費化を実現している。

アルミ製の軽いフードを開けると、エンジンにはカバーがかかっている
エンジン形式:水冷式直列2ローターロータリー エンジン型式:13B-MSP型 排気量:1308cc ボア×ストローク: 圧縮比:10.0 最高出力:235ps(173kW)/8200rpm 最大トルク:216Nm/5500rpm
エンジンは、フロントアクスルより後方、つまりフロントミッドに積まれている

 SPIRIT Rが搭載するエンジンのスペックは、最高出力235ps(173kW)/8200rpm、最大トルク216Nm/5500rpmだ。RX-7のようにターボ過給は行なわず、自然吸気だ。使用ガソリンは無鉛プレミアム。10・15モード燃費は9.4km/ℓ、燃料タンク容量は65ℓである。試乗車は6速MTの組み合わせだ(6速ATの設定もあった)。

「ずいぶん久しぶりに乗るなぁ」と記録(がわりの自身のブログ)を振り返ってみたら、最後にRX-8に乗ったのは12年2月だった。しかも、メモ代わりに撮ったスナップ写真を確認したところ、今回試乗したクルマとまったく同じ個体であることがわかった。8年2ヵ月ぶりの再会である。当時の走行距離は控えていないが、今回の試乗中に29000kmをカウントした。

全長×全幅×全高:4470mm×1770mm×1340mm ホイールベース:2700mm
トレッド:F1505/R1510
最小回転半径:5.3m

 RX-8は00年11月に当時のマツダが掲げた成長戦略「ミレニアムプラン」に沿って開発されたモデルで、初代アテンザ(02年)や2代目デミオ(02)と同世代に位置づけられる。フォードの傘下にあった頃の製品だ。アテンザはひと世代挟んで12年からSKYACTIVテクノロジーを投入した第6世代商品群になっている(19年8月からマツダ6に車名が変わっている)。デミオもひと世代挟んで14年から第6世代商品群になり、現在はマツダ2を名乗る。CX-5やアクセラはひと足先に第7世代商品群に切り替わっている(アクセラの後継はマツダ3)。

 つまり、RX-8は3世代前のクルマということだ。8年2ヵ月ぶりに乗り込んだ瞬間に、3世代分の変化や進化を感じた。そして5日間をともに過ごすうちに、変わっていないスピリットがあることもわかった。マツダが提供する製品の「変わった部分」と「変わっていない部分」を確認できた意味で、とても有意義な5日間だった。

室内長×幅×高:1755mm×1455mm×1120mm

 本革シートが新車時のツヤを失っていたり、シフトノブが傷だらけになっていたりといった経年劣化を差し引いても、現在の視点で見るとRX-8のインテリアは安っぽいし、野暮ったい。12年のCX-5から始まった第6世代商品群から、マツダのクルマは一気にクオリティが上がったし、最新の第7世代商品群は上質さに磨きが掛かっている。その変容ぶりを知ったうえで3世代前のRX-8を目の前にすると、隔世の感がある。

トランクはスポーツカーとしては充分以上の容量がある

 見た目のクオリティだけでなく、スイッチ類の触感や、ワイパーやウインカーのレバーを倒したときの感触と、それにともなって発する音がいかにも無粋だ。当時はなんとも思わなかったが、最新のマツダを知ってしまうと、落差の大きさが際立つ。と同時に、一気にプレミアムになったマツダの変容ぶりを改めて認識した。現在のマツダのクオリティでこのクラスのスポーツカーを作ったらどうなるだろう、きっと素晴らしいクルマができるに違いないという期待がムクムクと湧き上がってくる。

 8年2ヵ月前の記録を振り返ってみたら、「もう少し低い位置に座りたい」と書いてあった。今回もまた、座った瞬間に同じ思いをした(シートリフターが備わっているかどうか、思わずまさぐってしまった)。屋上の柵から身を乗り出したような心許なさを覚える。しかし、後席の居住性を確保するための犠牲だと考えて諦めるしかない。観音開きのリヤドアを開けて後席に腰を下ろしてみれば、前席の高い着座位置に納得がいく。

ロータリーのおむすび型のローターを形どったシフトノブ。6速MTのギヤ比は第1速:3.815 第2速:2.260 第3速:1.536 第4速:1.177 第5速:1.000 第6速:0.787 後退:3.603 最終減速比:4.777

 RX-8は「New 4door Sports for 4Adults」を基本コンセプトに掲げた。このコンセプトを成立させるには、前席の高い着座位置は外せなかったのだ。後席乗員の足を前席下に収めることを前提に、パッケージングが成り立っている。「ま、仕方ないか」と思いながら、決して広くはないのにまったく不快ではない後席空間に収まりながら納得した。

 ロードノイズの大きさには閉口するが、予想に反して悪くない後席の乗り心地は発見だった(いや、再発見か)。前席に座っているときも同様で、硬いか柔らかいかでいえば、RX-8の乗り味は間違いなく硬い。だが、その硬さは路面と喧嘩をしている硬さではなく、ばねレートや減衰力の高さゆえの硬さに感じる。サスペンションのアーム/リンク類は路面からの入力や車体の動きに即応。ばねやダンパーも即座に反応して無駄なく仕事を始める(と感じさせる)から、胃に響くような、頭部が震えて視界が歪むような、強い衝撃は受けない。つまり、硬いが、不快ではない。

 今回の試乗ではそういうシーンに持ち込むことはできなかったが、強い旋回Gが発生して外輪に大きな荷重が掛かったときに、頼もしさを感じさせるセッティングになっているのだろう。そう予感させる片鱗は、強いGが掛かり始める手前の段階で感じとることができた。前後左右に大きな荷重移動が発生するステージにRX-8のストライクゾーンはあるのだろう。市街地や高速道路を淡々と走るなど、RX-8の本領を引き出すにはほど遠い行為になる。じゃあそれが退屈かというとそんなことはなく、ものすごく楽しい。

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