US流の “引き算カスタム” で、クリーンを徹底追求!

ズーマーって、不思議なバイクだ。普通のスクーターのように便利さ全振りじゃないし、スポーツスクーターのように速さだけを求めたモデルでもない。むしろ、あのスカスカなフレームこそが最大の個性で、その“余白”に国内外のカスタムビルダーたちが夢を詰め込んできた。特に北米——つまり“HONDA RUCKUS”として親しまれてきたUSシーンでは、その傾向が強い。

ロー&ロング、極太タイヤ、剥き出しのフレーム、そしてワイヤータックされた配線。そしてこだわったというカラーは、シナジーグリーンと言う、2010年代のシボレー・カマロの限定色。単純にパーツを盛るのではなく、不要なものを削り、どれだけ“クリーン”に見せられるか。実はそれこそが、US流“引き算カスタム”の真骨頂だったりする。そんなRUCKUSカルチャーど真ん中な一台だ。

オーナーが会社で偶然ズーマーを譲り受けたところからカスタムはスタート。しかもSCR WORKSは近所。そこから自然とこの世界へ引き込まれていったという流れも、なんだかUSカルチャーっぽくておもしろい。

搭載されるエンジンは、ヤマハ・シグナスXユニットをベースにした220cc仕様。TTMRC製RRヘッドに67mmシリンダー、ヨシムラ製TMR-MJNキャブレターを組み合わせ、マフラーはワンオフのエキパイ+TWO BROTHERS RACING製“Black Series”カーボンサイレンサーでフィニッシュ。見た目のインパクトだけじゃなく、中身まで完全に戦闘態勢だ。

しかも、このマシンの見どころは“ショーバイクで終わっていない”こと。フロントにはBAJA DESIGNS製「OnX6」10インチLEDライトバーを装着。とんでもない光量を誇る本格オフロードレーサー向けユニットで、夜間の幹線道路や湾岸エリアでは完全に主役級の存在感を放っている。ハイパワー化に対して当然のように足周りも抜かりなし。FLP製3ピースビレットホイールに、MAXXIS製MA-XR1タイヤ(F:120/70-12・R:140/70-12)を組み合わせ、RRGS製ブレーキキャリパー&スウェッジラインホースで制動力も強化。さらにリヤにはRACINGBROS製“Bazooka”エアサスを投入し、ただ低いだけじゃない、“走れる低さ”を実現している。

完成して終わりじゃない。“走ってナンボ”なのがUSDMスクーターの世界。シグナスXスワップのズーマーが東京のトンネルを駆け抜ける姿は、まるでLAナイトランの空気感そのものだった。

イベント仲間と集まって、走って、トラブって、路肩で笑いながら直す。完成して終わりじゃなく、“走って遊ぶ”ところまで含めてUSDM文化なんだと思う。実際、この日も走行中にシート裏がキャブレターを押してしまい、キャブレターが外れてエンジンストップするアクシデントが発生。普通なら絶望的な場面なのに、なぜか周囲も楽しそう。誰かが工具を出し、誰かが覗き込み、ああでもないこうでもないと、自然と仲間が集まってくる。好きなモノを全力で作って、全力で走る。たぶん、それだけで十分。そんな世界観をSCRWORKSが提供しているのである。

極太なリヤタイヤとFLP製深リムホイールが生む、この後ろ姿こそUSDMスクーターの醍醐味。太いエキパイなど、マフラーの存在感も強烈。 ■MACHINE:ホンダ・ズーマー ■OWNER:BLACK COCK

ワイヤータックされたフレーム周辺や、剥き出しのエンジンレイアウトも北米スタイルらしいポイント。チンボーン(センターフレーム)はRUCKSTERS製。

低く構えた車体に、220ccシグナススワップを違和感なく融合。USカルチャーらしい“クリーンさ”と、実走仕様ならではの迫力を両立したズーマーだ。

ハンドル周り

ハンドル周りは、MINTHBX製ステムとパスワード製トップブリッジを採用。極限までシンプルにまとめつつ、配線を目立たせない“ワイヤータック”加工でショーバイクレベルのクリーンさを実現している。

ヘッドライト周り

特徴的なBAJA DESIGNS製「OnX6」10インチLEDライトバーは、オフロードレース界でも使用されるプロスペックユニット。約1万2460ルーメンという圧倒的光量を誇り、ズーマーサイズの車体では異様な存在感を放つ。

追加メーター

メーターはACTIVE製デジタルモニターを装着。REV/TEMP表示に対応し、高回転化された220ccエンジンのコンディション管理をサポートする。

フロント足周り

フロント周りにはRRGS製フロントフォーク&ブレーキキャリパーを投入。ブレーキホースはスウェッジライン製を組み合わせ、220ccに見合う制動力を確保している。ホイールはFLP製12インチ4J幅。

冷却系

ラジエーターを追加して熱対策も抜かりなし。シグナスXベースの220ccエンジンは発熱量も大きく、こうした実走前提の冷却チューンが“ちゃんと走るUSDM”には欠かせない。

エンジン系

シグナスXエンジンをベースに、TTMRC-RRヘッド+67mmシリンダーで220cc化。駆動系は、SCRK製パーツを中心にGストーン製ギアなど、抜かりなくセットアップ。“低く見せるだけ”では終わらない、本気の走り仕様だ。

マフラー

TWO BROTHERS RACING製“Black Series”カーボンサイレンサーを装着。ワンオフエキマニとの組み合わせにより、低く構えた車体ラインを崩さない美しいレイアウトを実現している。

吸気系

吸気はヨシムラTMR-MJNキャブ+デュアルスタックファンネル仕様。シート下へギリギリで収まるレイアウトは迫力満点だが、実はこの日、走行中にシート裏でキャブを押してしまいエンジンストップする場面も。

エンジンハンガー

エンジンハンガーにはCHIMERA ENGINEERING製パーツを投入。US RUCKUSシーンでは定番ブランドとして知られ、ロング化された車体の剛性感と存在感を一気に高めている。

シート

シート表皮は四輪シーンでも人気のBRIDE生地へ張り替え。施工はSEATWORKS。レーシーさとUSストリート感を同時に演出する、細部まで抜かりない仕上がりだ。

リヤショック

リヤショックにはRACINGBROS製“Bazooka”エアサスを採用。スプリングのないスッキリとしたシルエットが特徴で、エア圧で固さを調整できるスグレモノ。ただ低いだけではなく、走行時のストローク確保や乗り味にも配慮されている。

リヤ周り

FLP製3ピースビレットホイールは12インチ6J幅。MAXXIS MA-XR1タイヤ(140/70-12)を組み合わせ迫力あるリヤビューを実現。

ベースマシンはこちら

2001年に登場したホンダ・ズーマー。

外装を極力排したフレーム構造と極太タイヤで人気を博し、カスタムベースとして独自のカルチャーを築いたモデル。2007年にFI化され最終モデルは2012年式。

取材協力

【SCR WORKS(東京)】

ズーマーをベースとしたUSDMスタイルを得意とするカスタムショップ。ショークオリティとストリートユースを両立した完成度の高いビルドで知られる。

メーカー公式サイトはこちら